「野菜や果物を食べると体に良い」ということは広く知られている。 厚生労働省が推進する健康作り運動「健康日本21」では成人の一日あたりの野菜の平均摂取量の目標値を350gに定めており、野菜を食べることを国民に促している。ただ、果物と野菜から得られる恩恵を最大限に生かすためには、もっと摂取量を増やす必要があるのかもしれない。
海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「果物と野菜の摂取量と健康の関係性」にまつわる記事が掲載された。最新の調査から明らかになった事実を紹介しよう。
英国の研究者は、果物や野菜を週に5日以上と摂取すると心臓発作や脳卒中、がんなどによる早期死亡のリスクを低減できるとしている。そして、英国のガイドラインでは一日あたり400g以上の摂取を推奨している。
インペリアル・カレッジ・ロンドンの科学者グループがこのほど、果物と野菜の摂取に関する95編の研究を分析したところ、一日400gの摂取でもよい成果をあげているが、この摂取量を増やすとさらなる効果が得られることが判明した。
今回のメタ分析では最大で200万人が対象となり、心臓病(4万3,000件)、脳卒中(4万7,000件)、循環器疾患(8万1,000件)、がん(11万2,000件)、死亡(9万4,000件)を評価。その結果、果物と野菜を一日10食分(人前)、もしくは800gを摂取すれば、世界で最高780万人の命を救える可能性があるとした。
また研究チームは、特定の疾病リスクを低減させる可能性を秘めた野菜や果物も突き止めた。以下は心臓病や脳卒中、心臓血管疾患の予防に役立つという。
りんご、梨、かんきつ類、ホウレンソウ、レタス、チコリ、ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー
以下はがんリスクを低減できる可能性があるとのこと。
ホウレンソウ、緑豆、ピーマン、ニンジン
さらに果物と野菜の摂取の有無と各種疾患リスクの関係性も明らかにされた。一日に800gを摂取すれば、全く摂取しない人と比較して心臓病で24%、脳卒中で33%、循環器疾患で28%、がんで13%、早期死亡で31%のリスク低減につなげられるという。
仮に一日の摂取量が200gだったとしても、心臓病で16%、脳卒中で18%、循環器疾患で13%ものリスクが減らせることから、やはり野菜・果物をしっかりと食べた方がよいことがわかる。
「果物と野菜を摂取すればコレステロールや血圧が下がり、血管と免疫システムがよくなることがわかっている。果物と野菜に含まれている栄養素の複雑なネットワークが原因だろうと考えられる」と、研究リーダーのダグフィン・アウン博士は語る。なお、このような効用を得るためには、サプリメントではなく自然の果物や野菜を食べることが重要になるという。
普段からあまり野菜・果物を食べない人からすれば、800gという量は天文学的な数字かもしれない。ただ、朝食にりんごやみかんをプラスするだけでも摂取量は違ってくる。まずは無理のない範囲から始め、徐々に摂取量を800gに近づけていくのが賢い方法と言えよう。
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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。