東京ハイヤー・タクシー協会および東京都個人タクシー協同組合は1月27日、「初乗り410円タクシー」の記者発表会を実施した。短縮運賃は1月30日より東京23区・武蔵野市・三鷹市で開始予定で、初乗り料金が現行の730円から410円と320円分の引き下げとなる。
1月30日以降は初乗りが1.052kmで410円に
初乗り運賃の改定は国土交通省が2016年末に引き下げを発表していたもの。同年4月に東京の事業者が運賃改定を関東運輸局に申請しており、夏に国土交通省が実証実験を新橋・浅草・新宿などのエリアで実施し審議を進めた結果、引き下げが承認された。
今回の改定により、1月30日以降は該当区域の初乗り運賃(上限運賃)が1.052kmで410円、以後237mごとに80円となる。1月27日現在は現行2.0kmで730円、加算距離は280mで90円が上限となっているため、初乗り区間は短縮される代わりに運賃は320円安くなる。
また、運賃への移行により、約2kmまでの短距離運賃は値下げ、約2kmから約6.5kmまでは値下げないしは値上げが混在、約6.5km以上の長距離運賃は値上げになる。
東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長によると、実証実験で行われたアンケートでは日本人乗客の約6割が「この運賃(410円)ならタクシーに乗る回数が増えると思う」と回答し、外国人乗客の8割が「この運賃は安い、もしくは妥当」と回答したという。
川鍋会長は「短距離では値下げ、6.5km以上は値上げとなるが、全体としてみると金額は変わらない。運賃引き下げというよりは『運賃組み換え』といえる」と説明。また、初乗り運賃改定の目的は大きく2つあるとして、次のように語った。
川鍋会長「改定理由の1つは人口構成の変化、少子高齢化がある。高齢者が増えて、移動に対する苦労が増えている。初乗り値下げは『ちょい乗り』需要を喚起できるのではないか。病院から駅、買い物など気軽に頻繁に乗っていただきたい。また、昨今は若い方があまりタクシーに乗らないが、いち公共交通機関として、お子様のいらっしゃる家庭の足としても使っていただければと思う」
川鍋会長「2つ目は訪日外国人の増加だ。初乗りが2km(730円)というのは世界有数の長さで、結果として高額な印象を与えている。これを世界標準に近い価格までに引き下げる。410円は、ロンドン・ニューヨークに比べても十分リーズナブルに感じていただける運賃ではないか。1月30日の午前0時以降に出庫するタクシー車両から、初乗り料金が変わるが、新しいステッカーには初乗りが410円だと訪日外国人にもアピールできるように『First』の文字を追記した。730円から410円になっただけでも、だいぶ印象が違うのではないだろうか」
苦境のタクシー業界を変えられるか
東京都個人タクシー協同組合の秋田隆会長が発表会で「タクシー業界は年々輸送回数が減っている」と危惧するように、タクシー業界は今、苦境に立たされている。
長引く不況によるタクシーの乗り控えとライドシェアなどの新業態の企業の参入により、タクシーの輸送者数(乗客数)は1970年をピークにじりじりと減少。「特にこの10年で需要は3割も減少した」(川鍋会長)という。今回の改定は、そのような危機感が根底にある。
川鍋会長「2007年に初乗り運賃が660円から710円に変わり、その後、消費増税で730円まで値上がりした影響もあり、乗客数が大幅に減っている。また、初乗り運賃がどんどん上がっていて『このままでは1,000円になるのでは?』という心配もあった。タクシー業界が長年にわたってやってきた運賃変更の方向性は『コストが上がったら運賃を上げる』という方針だったが、今回の改定は需要減に対する強い危機感によるもので、タクシーの運賃を戦略的に変えるだろう。一人でも多くの人に乗っていただきたいという期待感が業界にはある」
東京オリンピックを見据えた「タクシー大改革」の一環となる初乗り運賃改定。ちょい乗りユーザーが増え、「2017年はタクシーが大きく変わった年と実感してもらえるようにしていきたい」(川鍋会長)という業界の思いは実現するのか、今後の動向を見守りたい。