黒川温泉(熊本県)は露天風呂めぐりが大人気で、一年中観光客が絶えない温泉地。観光シーズンや週末には予約困難な宿も多いが、冬は憧れの宿に泊まるチャンスだ。そこで今回、温泉と共に味わいつくしたい黒川温泉の魅力を紹介しよう。

黒川温泉「湯あかり」は、雪を背景にイルミネーションが映える

黒川温泉「湯あかり」は冬がよし

冬の黒川温泉と言えば、冬期限定イベント「湯あかり」をぜひ見てほしい。特産の竹細工を駆使したイルミネーションが絶景で、観客も思わず歓声を上げる美しさだ。「湯あかり」の会場は、旅館「ふじ屋」裏手の河原で、丸鈴橋の上から絶景を一望できる。

2016年~2017年度の開催日程は2016年12月24日から2017年3月28日。点灯時間は日没から22時までだが、日没直後の空が青白く光る時間帯が特に美しいので、温泉街の街歩きを兼ねて日没前から訪れたい。

黒川温泉は標高700mの高原にあり、冬は雪が降ることも珍しくない。寒い夜に見物するのは面倒だと思うかもしれないが、冒頭の写真のように、積雪があった方がイルミネーションが映えて絶景なので、雪の日こそ見たいイベントだ。

「入湯手形」(税込1,300円)を使えば、日帰り入浴がもっとお得に楽しめる(写真は「和風旅館 美里」の露天風呂)

イルミネーション鑑賞で冷えた身体は、温泉入浴で温めよう。黒川温泉の日帰り入浴は夜21時までなので、日没前から夜景を見れば鑑賞後でも十分間に合う。現金でも入浴できるが、名物の「入湯手形」(税込1,300円)を購入すると3回入浴できてお得だ。年末年始や正月といった繁忙期でも日帰り入浴できる、全国的にも希少な温泉地。さすがに繁忙期は満室の宿が多いが、日帰りでも断られる心配をせずに訪れることができる。

●information
黒川温泉「湯あかり」
住所: 熊本県阿蘇郡南小国町黒川
アクセス: 熊本空港から九州横断バスで約2時間。バス停から観光案内所まで徒歩約6分。JR熊本駅、湯布院、別府からも乗車可能

「黒川かっぽ」で酒めぐりを

黒川温泉は露天風呂めぐりが有名だが、飲み歩きイベント「黒川かっぽ」で酒めぐりも可能だ。「かっぽ手形」(税込1,500円)を購入すると、対象となる黒川温泉内の旅館や飲食店でお酒とおつまみをいただける。「入湯手形」同様、3回利用できるのでかなりお得だ。

「黒川かっぽ」ででも利用できる旅館「夢龍胆」のメニューは、地元産「あきげしき米」を湧水で醸造した地酒。柚子風味香る赤みそ仕立ての「ふろふき大根」が絶品で断然オススメ

お酒とおつまみのメニューは宿や店ごとに決まっており、自分の好きなものを選んで訪問したい。焼酎や日本酒を出す店が多いが、どぶろく特区なので珍しい古代米を使った「どぶろく」を出す宿もある。

おしゃれカフェにてランチ&ケーキの素敵な時間

黒川温泉の昼食は「Cafe Ciel」(カフェ シエル)が一押し。某大手口コミサイトでも、熊本県のカフェで第3位にランクイン。人気と実力を兼ね備えている。

あまりの急坂に心細くなるロケーションだが、店内はおしゃれな雰囲気で安心できる

国道沿いの猛烈な急坂を登った丘の上にあり、本当に店があるのか心配になる程だが、女性中心で運営されているだけあり、小奇麗で都会的な内装が魅力のカフェだ。シエルとはフランス語で「空」の意味。丘の上にあるので、山間部とは思えない広大な空を眺めながら、食事やスイーツを堪能できる。

昼限定のランチプレートは4種類あるが、赤ビーツを使った「ボルシチ・プレート」が店の自慢。評判のケーキも味わえるデザート付き(税込350円加算)で注文すると、ショーケースの中から好きなケーキを選択できる。写真では女子向けランチの分量に見えるが、スープ皿が意外と深く量もある。パンもお代わり自由で、デザートを付ければ男性でも満腹になるはずだ。

赤ビーツを使った「ボルシチ・プレート」が絶品。サラダ、パン、ドリンク付きで税込1,450円

ボルシチが本当に絶品なので、自宅でもまねしてみたくなるが、赤ビーツはめったに販売されておらず、売っていても非常に高価な食材。普段なかなか口にできない、赤ビーツのおいしさを存分に満喫しよう。

●information
「Cafe Ciel」(カフェ シエル)
住所: 熊本県阿蘇郡南小国町満願寺7008
営業時間: 平日10:30~17:00、土日祝10:00~17:30
定休日: 木曜日
アクセス: 熊本空港から九州横断バスで約2時間。バス停から徒歩約5分

「旅館 山河」は黒川温泉らしさ満点の宿

黒川温泉には良質な旅館がたくさんあり、どの宿の温泉も素晴らしく甲乙付けがたい。しかし、強いて一軒挙げるとすれば「旅館 山河」をオススメしたい。

正月の飾り付けが施された「旅館 山河」の玄関

本館に相当する「母屋タイプ」の客室なら、比較的手頃な価格で利用できる。敷地内のいたるところに秘湯の風情が感じられ、「民芸調が特徴的な黒川温泉に来たぞ! 」と実感できるだろう。さらに、温泉街中心部から距離があり、喧騒とは無縁の自然環境も魅力的だ。そして、2つの源泉を利用した温泉は、ほんのり硫黄の香りもする良質な湯ときている。「値段」「風情」「自然」「温泉」と4つの条件を完璧に満たす宿だからこそ、自信を持ってオススメできるのだ。

秘湯風情が素晴らしい「旅館 山河」の露天風呂。冬は湯気が立ち込めており、温泉気分が一層盛り上がる

なお、黒川温泉では温泉街共通の予約システムがあり、スマホや携帯で24時間予約可能。夜中に突然空室が出ていることもあるので、諦めずに随時チェックしたい。どんなに人気がある宿でも数カ月先は空いているので、早めの予約が一番大切。直前の場合は複数の宿を候補にして、どこかが空き次第予約するようにしよう。

●information
「旅館 山河」
住所: 熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6961-1
アクセス: 熊本空港から九州横断バスで約2時間。宿泊客はバス停から送迎あり

冬の黒川温泉を日帰りや宿泊で満喫するコース、いかがだっただろうか。年末年始や正月など、日帰り入浴を断られやすい繁忙期でも快く受け入れてもらえるのが、黒川温泉最大の魅力だ。繁忙期の九州旅行で行き先に困ったら、「そうだ黒川温泉がある! 」と思い出して、ぜひ出掛けてみてほしい。

筆者プロフィール: 藤田聡

温泉研究家、オールアバウト「温泉」「紅葉スポット」ガイド。温泉旅行検定試験で2年連続日本一になり、検定協会から「温泉旅行博士」の称号を授与される。温泉地を中心に周辺観光地の取材・撮影を行い、海外旅行にも決して負けない、国内旅行の奥深い魅力をメディアで発信中。紅葉や一本桜、夜景や四季の花などの絶景スポットにも精通している。