プリウスPHVは大衆のクルマになれるか

プリウスPHVについて、実は自動車ジャーナリストにはすでに事前の試乗会が催され、私も施設内のコースながら運転をしている。EV走行を約60キロメートルできるということで、競合PHVの中ではEV走行可能距離で最長水準に達する性能を備えたクルマだ。その一方で、気掛かりな点もあった。

それは、4人乗りとするなど、FCVの「MIRAI」同様に、高級車扱いをしようとしている気配を感じさせたことだ。実際、米国で発表された際の車名は「プリウス・プライム」とされている。プライムには“最上の”という意味がある。

ドイツ勢が次々に市場投入するPHVを見ると、上級車種もありながら、できるだけ購入しやすい価格でのPHV像を定着させようとしている姿勢が感じ取れる。なかでもBMWは、その傾向が強い。たとえば、エンジン車で同等車格のメルセデス・ベンツ「Cクラス」とBMW「3シリーズ」を比較した場合、CクラスのPHVは721万円であるのに対し、BMW3シリーズは554万円からの価格設定だ。

なおかつ、EVモードの走行距離はCクラスが28.6キロメートルであるのに比べ、3シリーズは36.8キロメートルと長い。さらに、BMW「2シリーズ」のSUVでは506万円からPHVを購入できる。

価格設定が焦点に

2016年12月の時点で、まだプリウスPHVの価格は発表されていないが、HVのプリウスが後席3人掛けであるのに対し、PHVは2人掛けとして上級車感を演出しており、HVからPHVへ乗り換えようと考えていた人はそこに躊躇するのではないだろうか。しかも、HVより大きいリチウムイオンバッテリーを搭載するため、荷室の床が高くなって、荷室の使い勝手はプリウスより劣る。

次のプリウスが“大衆のクルマ”として日本のPHV市場を創出できるかは1つの焦点となる

実用性を犠牲にしてまでPHVを上級車種に見せることが、顧客にとって、また環境意識が高くCO2排出量をより減らしたいと考える人にとって、本当に必要なことなのだろうか。PHVが、HVに次いで標準となる時代が目の前に迫っているのである。

とはいえ、年明けにプリウスPHVが発売されたときの価格がいくらであるのか、そこは新年の注目ポイントの1つにはなる。