――笑顔を練習して、すぐにモデルの現場で出せるものなんですか。

出さないと起用されなくなると思って頑張りました。モデルの良さは、挑戦してダメだったらその写真は選ばれないし、良かったら選んでもらえる。ダメな部分を除いてくださるので、もうそこは恥ずかしがらずに、自分の練習してきた成果を精いっぱい出すことに集中します。すると、自然とできるようになりました。

――それに比べて、女優の準備できることは限られている。

そうですね。女優のお仕事が面白いと思うのは、現場に行ってみると自分の役が思っていた印象と違ったりするところです。自分が経験してきたことを生かしつつ、周りの方からもらったいろんな影響も受けつつその役として演じることができているので、現場の数だけ役柄があるんだと思います。

――今回は等身大の役でしたね。

逆にすごく難しくて、「普通ってどういうことだろう?」と思いながらの撮影でした。さきほどの話にもつながりますが、今回は『non-no』のみんながいて現場の雰囲気がすごく和やかで。スタッフ、キャストの方々がつくってくださったムードのおかげで、とても自然体で演技をすることができました。

――演技の世界は、「インターン」よりも「オーディション」ですよね。

オーディションは、意外と手応えがない時の方が受かることが多いんです(笑)。一発勝負で、自分の中の何か1つがマッチすると呼んでいただける。二次三次と数回にわたってオーディションがある時はいいのですが、1回で終わってしまった時は落ち込んでしまいます。その上、うまくいってもモヤモヤすることのほうが多い(笑)。素直に自分らしさを出すことが大事なんだと思います。

――今回の作品では、風間トオルさん演じるCEOが晴香の身代わりになります。新木さんにとって、風間さんのような恩人は?

高校時代の担任の先生です。先生の言葉に救われました。公立の高校に通っていたのですが、仕事が増えたら転校しなければならなくなる可能性がありました。月日を重ねるごとに友だちができて学校生活が楽しくなってきた時に、ふと、この学校にいられなくなったら……とすごく怖くなってしまって。

その当時、携帯電話のCMに出させていただいて、私のことを知ってくださる方も増えていったころ。そんな時に、先生が「あなたが悩んでいるのは、『マイケル・ジャクソンと付き合えたらどうしよう……』レベルの悩みなんだよ」と。起こってもいないことに不安になってもしょうがないでしょうと言われたんですよね。確かにその通りで、私は何に悩んでいたんだろうと。何か起こった時が焦る瞬間。その時に考えればいいと言われてすごく気持ちが楽になりました。

今思えばそんなに悩むことでもなかったのかなと思うんですけど、その後も「失敗したらどうしよう」とか不安な気持ちになることが何度もありました。それでも、いろいろなことに挑戦させていただくことが増えて、「まだ何も起きてないんだから」と言い聞かせています。もともとポジティブなんですが、さらにポジティブなお言葉をいただけて、いろいろな壁にぶち当たったときにそっと背中を押してもらってます。

――その先生は、今のご活躍をどう思われているのでしょうか。

作品の感想などご連絡いただいて、連絡は取り合っています。卒業した後の方がフランクに接することができるので、当時は「先生」だったのが今は「恩師」に。まだ20代の方なので、近い目線でアドバイスをいただいています。

――小学生の時に原宿でスカウトされたことがきっかけで芸能界入り。それまで憧れは?

まさか芸能人になれるとは思っていなかったので、そこまで興味も湧かず(笑)。だから、今の自分にビックリです。スカウトしていただいてから、意識しはじめました。自分も「テレビの中の人」になれるのかな?……本当にそんな感じでした。映像のお仕事から入って、モデルへ。そしてそのモデルのお仕事で経験したことが映像のお仕事にもつながっています。

――その芸能生活で最大の壁は?

中学・高校の学生時代は勝負の時期だと思っていました。そこで一歩抜け出せるか抜け出せないいかで勝負が決まると。「売れなきゃ」という焦りが先行していた時期だったと思います。同世代の方がすごく活躍している時期だったので、どうやったら自分もそういう存在になれるんだろうと苦しんでいました。あの頃は周りを意識しすぎて、自分で自分の首を絞めてしまっていました。その頃と比べると、リラックスして仕事に向き合えていると思います。

――だからこの作品でも笑顔が印象的だったんですかね。

ありがとうございます。そう言ってもらえるとうれしいです。

■プロフィール
新木優子(あらき・ゆうこ)
1993年12月15日生まれ。東京都出身。身長165センチ。A型。2007年、小学生の時に原宿でスカウトされ、芸能界入り。映画やCMに出演し、2014年からは『non-no』専属モデルを務めている。近年では『いつかティファニーで朝食を』(15~16年・日本テレビ系)、『監獄学園-プリズンスクール-』(15年・MBS系)、『家売るオンナ』(16年・日本テレビ系)、『ラブラブエイリアン』(16年・フジテレビ系)などのドラマ、『風のたより』(15年・主演)、『泣き虫ピエロの結婚式』『聖の青春』(16年)などの映画に出演。2017年1月7日公開の『僕らのごはんは明日で待ってる』ではヒロインを演じる。

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