洛西ナンバーワンの紅葉の名所、常寂光寺へ

トロッコ嵐山駅の目の前の池のほとりには、日本で唯一「髪」をお護りするという「御髪神社(みかみじんじゃ)」がまつられている。この池の先に、小倉山の山懐に抱かれるようにたたずむのが、藤原定家が『小倉百人一首』を編さんした「時雨亭」の旧跡とされる「常寂光寺(じょうじゃっこうじ)」という寺院だ。

トロッコ列車の嵐山駅も紅葉に染まる

仏の世界である「常寂光土」に由来するという寺の名前さながらに、秋の深まりとともに、赤、黄、橙(だいだい)とさまざまな色合いに染まる境内の木々の美しさは、"この世"のものとは思えないほど。嵐山・嵯峨野で、どこか1カ所紅葉の名所を教えてほしいと言われたなら、間違いなく常寂光寺を選ぶと思う。その代わり、紅葉シーズンは混雑も相当なものなので覚悟が必要だ。

常寂光寺拝観入口は大混雑

●information
常寂光寺
京都市右京区嵯峨小倉山小倉町3
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩約20分

北嵯峨の静かな風情を楽しみながら

さて、ここから先は芭蕉の弟子の向井去来(むかいきょらい)の草庵跡「落柿舎(らくししゃ)」や、参道が「紅葉の馬場」の別名で呼ばれる紅葉の名所になっている「二尊院」などを巡りながら、しっとりとした嵯峨野の情緒がより一層深まる、奥嵯峨の地を歩くのもいい。

向井去来の草庵跡「落柿舎」を訪れるなら、柿がたわわに成る秋だろう

奥嵯峨には、祇王(ぎおう)という白拍子が平清盛の寵愛(ちょうあい)を受けたものの、別の女性に気持ちが移ったことから世をはかなみ、若くして隠棲した場所とされる祇王寺や、隠れた紅葉の名所、化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)などがある。さらに、やや場所は離れているものの北嵯峨の直指庵(じきしあん)まで足をのばすのもオススメだ。嵯峨で最も北に位置するという竹林に囲まれた静かな境内を彩る紅葉に、心が洗われる思いがする。

北嵯峨の竹林に囲まれた直指庵のしっとりとした紅葉

●information
直指庵
京都市右京区北嵯峨北ノ段町3
アクセス: 「大覚寺」バス停から、徒歩約15分

東山「永観堂禅林寺」にも負けない輝き

秋の行楽シーズンの京都ではあちこちで夜間ライトアップが行われるが、中でも天龍寺の塔頭(たっちゅう)のひとつである「宝厳院」のライトアップは見応えがある。「獅子吼(ししく)の庭」と名付けられた回遊式庭園はかなり広く、紅葉の本数も多い。同庭園のライトアップの鑑賞満足度は、「モミジの永観堂」として広く知られる京都を代表する紅葉の名所、東山の「永観堂禅林寺」のライトアップにも匹敵すると思う。

「獅子吼の庭」の紅葉ライトアップはとても見応えがあり、満足度は京都でも1、2位を争う

●information
宝厳院
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町36(天龍寺境内)
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩約3分

さて、嵐山・嵯峨野の紅葉散歩、いかがだっただろうか。人気観光地だけに秋の京都は人も多く、なかなか昔の風流人のように優雅に紅葉狩りというのは難しいかもしれない。しかし、京都ではさまざまな紅葉の楽しみ方ができるので、ぜひ記事を参考に秋の京都でお気に入り紅葉スポットを見つけてほしい。

※記事中の価格・情報は2016年10月取材時のもの。価格は税込
※記事中の写真は2015年11月25日に撮影したもの

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。