カレーに使われる香辛料としてよく知られるターメリック(ウコン)。単なるスパイスの一種として認識している人も少なくないだろうが、実はこのターメリックはとんでもない可能性を秘めているかもしれない。
海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど掲載されたコラムによると、ターメリックは優れたパワーを持つ「スーパーフード」であることが最近の研究で明らかになってきたという。インドのようにターメリックを多く消費する国では、腸ガンの罹患(りかん)率が低いため、その関係性が注目されているようだ。
遺伝子が疾病リスクに影響を与える事実はよく知られているが、遺伝子作用は喫煙や飲酒の状況によって変わるので、この研究では遺伝子がどの程度作用しているのかを分析。ターメリックの消費が遺伝子に測定可能な影響を与えたか否かを突き止めようとした。
「この研究では遺伝子の周りの『パッケージ』に注目している」とマーティン・ウィドシュエンター教授は語る。「パッケージ」は化学物質の複雑な集合体で、遺伝子に「何をすべきか」を指令する遺伝子ソフトウェアプログラムのように振る舞う。
「パッケージ」は遺伝子の働きに影響を与えることで疾病リスクを左右するが、ターメリックがこの「パッケージ」に影響を与えるかどうかが焦点となっていた。
従来の研究はほとんどマウスで行われたが、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの科学者グループは、ヒトを対象に新たなターメリックの有効性を分析する研究を行った。
研究は、おおよそ40歳~50歳のカレーを食べる習慣があまりない約100人を対象に、6週間にわたって行われた。この約100人を「3.2mg(およそティースプーン1杯)のターメリックを含むカプセルを飲む群」「偽薬を飲む群」「ティースプーン1杯のターメリックを毎日料理に用いる群」の3グループに分類。研究の前と後に全員の血液検査を実施したほか、遺伝子のメチル化(化合物にメチル基が結合すること)を調べるとともに、血球が炎症を抑える度合いを測定する検査も行った。
6週間後の結果をみると、3つのグループ全員の免疫細胞が若干減少した。対照的に、遺伝子への影響に関しては3つのグループで大きな相違があった。
ターメリックカプセルを摂取するグループと偽薬を摂取するグループは、遺伝子に変化はなかった。しかし、ターメリックを毎日料理に使うグループに関しては「がんやうつ病、ぜんそくのようなアレルギーに関連する遺伝子に変化が見られた」と、ウィドシュエンター教授は語る。
大きな変化は血液内だけで、組織内での変化は異なる可能性もあるが、ウィドシュエンター教授は「すばらしい結果を得た。ターメリックによって、遺伝子のソフトウェアの重要な構成物をリセットすることができるとわかった」と続ける。料理としてターメリックを摂取することで消化が促され、その効果が得られやすくなったと考えられている。
そのほかでは、クルクミン(ターメリックの有効成分)が乳がんの進行を遅らせたり、ターメリックはアルツハイマーに関連する脳内に形成されるプラークを壊す可能性があることも報告されたりしている。おそるべし、ターメリック。手軽に使える「健康スパイス」として、調理時に活用してみてはいかがだろうか。
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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。