歯列矯正は硬い骨の中で歯を移動させることなので、治療には年単位の期間が必要になる。個人差はあるが、矯正装置をつけてから外すまでの期間は2、3年~くらいになるケースが多いという。

矯正装置を外した後は、歯列が戻らないようにさらに1年~3年程度、リテーナー(保定装置)を装着する。若年齢層ほど歯の動きが早く、治療期間も短くなる傾向にある。動的治療を開始すると、症状にもよるが約1カ月ごとに通院し、装置の状態確認や交換、調整などを施す。

歯列矯正は遺伝子疾患や顎変形症、口唇口蓋裂を伴うケースなどの一部を除いて健康保険が適用されない自費診療となる。そのため、医院の治療方針や処置内容によって金額も異なってくる。

■治療前および治療中の費用

症状や状態によって費用は変わるのであくまで目安ではあるが、治療前には初診料や頭部X線写真、歯形の採取や撮影、診断料などがかかり、2、3万円ほどが必要となる。治療中は、選択した矯正装置により約50万~150万円程度を想定しておくとよい。また、経過観察などの診察で1,000~1万円の診察料が定期的にかかる場合がある。

■治療後の費用

治療後は、装置を外した後の保定装置(リテーナー)代が1万~6万円前後、定期健診にかかる費用が1回2,000~8,000円前後かかる。ただし、経過観察や保定装置代、定期健診費用などは、装置の基本料金に含まれている場合もある。

治療費の支払い方法は主に2種類

治療費の支払いについては、大きく「総額制」と「処置料別払い制」の2タイプに分けられる。

総額制は、治療開始前に治療完了までの費用が提示され、原則として増減しない。装置の基本料金のほか、通院ごとの処置料や調整料、治療後にかかる費用も含まれる。総額が決まっているので支払いの契約が立てやすいが、治療期間が予定より短くなっても減額などはされない。

処置料別払い制は項目ごとに料金が設定されており、装置の基本料金のほか、装置の調整や経過観察の診察ごとに費用が発生するもの。治療期間が短くすむ場合は費用を抑えられる場合もあるが、長期にわたる場合はトータルの治療費が高くなる場合もある。

健康保険の適用にはならなくても、治療の内容によっては医療費控除の対象になる場合もある。医療費控除は1年間に10万円以上の医療費を支払った場合に、納めた税金の一部が確定申告で戻ってくる制度で、矯正治療の内容が対象になるものかどうかは、医院に確認や相談をするとよい。

歯列矯正は長期間にわたる治療になるため、信頼できる医院を見つけることも大切。自分にあった治療を実施できるかどうか、費用の面も含めてしっかり医療機関と相談して治療方針を決めていきたい。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 今村美穂(いまむら みほ)

M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長、MIHO歯科予防研究所 代表。表参道デンタルオフィス 矯正歯科。日本歯科大学卒業、日本大学矯正科研修、DMACC大学(米アイオワ州)にて予防歯科プログラム作成のため渡米、研究を行う。1996年にDMACC大学卒業。日本矯正歯科学会認定医、日本成人矯正歯科学会認定医・専門医。研究内容は歯科予防・口腔機能と形態及び顎関節を含む口腔顔面の機能障害。MOSセミナー(歯科矯正セミナー、MFT口腔筋機能療法セミナー)主宰。