東京メトロ日比谷線の新型車両13000系の報道公開が8月31日に実施された。相互直通運転を行う東武スカイツリーラインの新型車両70000系とともに近畿車輛が製造し、車両機器や車内の主要設備などの仕様共通化を図った。13000系は今年度から営業運転を開始し、2020年度までに全44編成(計308両)を導入していく。

東京メトロ日比谷線の車両基地、千住検車区で新型車両13000系が公開された

報道公開では13000系の主要諸元表も配布された。片側3ドア(一部編成は前2両・後2両が5ドア)の18m車8両編成だった既存車両03系とは異なり、新型車両13000系は片側4ドアの20m車7両編成(実力3.5M+3.5T)となる。

車体寸法は長さ20,000mm(先頭車20,470mm)、幅2,780mm(車側灯間2,829mm)、屋根高さ3,585mm(クーラ高さ3,972mm、パンタ折畳み高さ3,995mm)、床面高さ1,140mm。1両あたりの予定車両重量は先頭車が34.9~35.0トン、中間車の4号車が35.4トン、その他の中間車が33.3~33.6トン。定員は03系の124~135人に対し、13000系は先頭車140人(座席定員45人)・中間車151人(座席定員51人)、7両合計の定員は1,035人とされた。

13000系はダブルスキン構造により車体強度が向上。アルミ材料を統一することでリサイクル性も高めた

主電動機にはPMSMを採用。モーター効率が向上した

全アルミ合金製2軸ボギー車で、最高運転速度・設計最高速度110km/h、加速度3.3km/h/s、減速度3.7km/h/s(常用)・4.5km/h/s(非常)。パンタグラフはシングルアーム式で、2号車に1基、4号車に2基、6号車に1基の計4基。台車はボルスタ付片軸操舵台車(モノリンク式)で、狭軌(軌間1,067mm)の路線で片軸操舵方式を採用するのは初だという。これにより、カーブ通過時の振動・騒音が低減され、乗り心地の向上が図られる。

主電動機は永久磁石同期電動機(PMSM)で、1時間定格出力は205kW。03系VVVFインバータ制御車両との比較で約25%の駆動系消費電力量削減を見込んでいる。13000系の制御装置はIGBT素子のVVVFインバータ制御(2・6号車は1個モータ制御×4群、4号車は1個モータ制御×6群)。ブレーキ方式はATC連動電気指令式電空併用ブレーキ(回生付)とされている。

制御装置はIGBT素子を使用したVVVFインバータ方式を採用

省エネルギー性を考慮し、補助電源装置は並列同期/休止運転方式に

メンテナンス性向上のため、オイルフリーコンプレッサを採用した

ATC(自動列車制御装置)は「高周波連動誘導車内信号式3重系、緩和ブレーキ、前方予告、過走防護、臨時速度制御機能、後退検知機能付き」とのこと。東武型ATS(自動列車停止装置)も搭載される。ATO(自動列車運転装置。ATCよりさらに運転を自動化したシステム)は13000系の第3編成から搭載される予定(定位置停止検知、誤開扉防止機能、臨時速度制御機能、車両特性学習付き)だが、第1・2編成も機器設置スペースが確保されているという。他にCCTVの機器設置スペースも確保している。

シックで都会的なデザインの車内 - 近畿車輛ならではの特徴も

日比谷線は1961(昭和36)年に南千住~仲御徒町間が開業し、初代車両3000形がデビュー。翌1962年、北千住~南千住間・仲御徒町~人形町間開業と同時に東武伊勢崎線との相互直通運転が開始された。その後も徐々に延伸され、東京オリンピック開幕直前の1964年8月に北千住~中目黒間(20.3km)全線開業を迎えた。

日比谷線の初代車両3000形。曲面を用いた先頭形状が特徴だった

13000系の行先表示器はフルカラーLED。駅ナンバリングも表示される

前照灯・尾灯はLED化され、視認性・省エネルギー性を高めた

東京メトロは新型車両13000系について、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに向けて車両更新が進められることもあり、「1964年の東京オリンピックに向けて近代的かつサービス向上を図った車両として好評を得た3000形車両の設計コンセプトを踏襲し、さらなる近代化と海外からのお客様や多様な世代のお客様へのサービス向上を目指した車両」と説明している。車両デザインは日比谷線の歴代車両(3000形・03系)の系譜を踏襲しつつ、路線カラーのシルバーを強調し、近未来的な形状アレンジを加え、都会的で洗練されたイメージを持たせた。

ロングシートの車内は、オフィスをイメージしたシックで都会的なデザインに。座席幅は460mmで、03系の座席より30mm拡大した。間接型LED照明の採用により、適切な照度は確保しつつ、まぶしさを軽減させている。連結部分の大型貫通扉や座席横仕切り、荷棚に透明な強化ガラスを用い、荷棚のガラスには伝統の江戸切子模様を取り入れ、"東京色"を演出した。貫通扉は従来より開けやすいようにアシストレバー付きとなり、これは近畿車輛が製造したJR西日本の新型車両323系や225系2次車にも共通する特徴となっている。

優先席とフリースペースは各車両の車端部に設置された。フリースペースには腰当が備え付けられ、立席の利用者に配慮している。一部の吊り手の高さが下げられ、車端部の吊り手は1,580mm(03系は1,660mm)に。車内表示器は各ドア上部に17インチワイド液晶を3画面配置し、乗換案内や駅設備案内は日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語に対応。他にもニュースや天気予報など、3画面ディスプレイを活用して多彩な情報を見やすく、きめ細やかに提供する。訪日旅行者向けに車両内無料Wi-Fiも導入される予定だ。

強化ガラスを使用した車両連結部の貫通扉

車内ディスプレイは3画面配置され、多様な情報を提供

03系(03101編成)と13000系(13101編成)が並ぶ

13000系の冷房装置は集中型ON/OFF制御方式で、より快適な車内空間とするため、冷房能力は03系の48.8kWを上回る58kW(50,000kcal/h)となった。車内放送にはANVC高音質ステレオ放送システム(自動放送・BGM放送・インターホン機能・車外スピーカー付き)を採用。車体前面の前照灯・尾灯にLEDを採用し、行先表示器はフルカラーLEDで駅ナンバリングなども表示する。優先席・フリースペースのマークを車体側面上部に配し、車体デザインとの一体化を図ったこともこの車両の特徴といえる。

東京メトロ13000系・東武鉄道70000系の主要装置は同一取引先への発注とされ、運転・保守の取扱いを統一して運転操作性や事故対応力の向上などに努める。車内の主要設備も統一され、どの列車に乗車してもわかりやすい・使いやすい車両として、利便性・快適性の向上を図るとのこと。日比谷線は片側4ドアの新型車両への更新により、ホームドアの早期導入に向けて課題とされていた片側3ドア・5ドアの混在が解消される。車両更新が完了した後、2020~2022年度にかけてホームドア設置工事を進める予定となっている。