これまで秋葉原、新橋、新宿といった都心部の注目エリアに展開し好評を博してきた「豪華カプセルホテル安心お宿」が、7月27日に初の郊外となる「豪華カプセルホテル安心お宿 プレミア荻窪店」をオープンする。業界破りの新サービスはここにもある。早速、紹介しよう。

「豪華カプセルホテル安心お宿 プレミア荻窪店」が7月27日、いよいよオープン

カプセルホテルが少ない東京西部に進出

もはや日本の文化とも言える存在のカプセルホテル。法律上は「簡易宿所」というカテゴリーにして、長らく緊急避難的な宿泊施設として認知されてきた。ところが昨今、ステイすることが目的となるような、デスティネーションの要素をも併せ持つ魅力的な施設が増加している。筆者はそれを"進化系カプセルホテル"と評してきたが、そのけん引役的なチェーンとして注目されているのが豪華カプセルホテル安心お宿だ。

筆者は、東京都内のカプセルホテル全軒を制覇したが(2014年末現在/女性専用施設は除く)、都心部を除けば総武線沿線を例とする東部に偏差している印象があった。東京西部、それも人気路線である中央線の主要駅至近に進化系カプセルホテルが進出したことは、東京カプセルホテルシーンとしてはある意味「満を持して」のトピックとも言えるだろう。

横型キャビンで大型テレビも設置可能

豪華カプセルホテル安心お宿の特色として挙げられるのは、その名の通り豪華であること。"カプセルホテル"からはなかなか"豪華"を連想できないかもしれないが、その逆を行く斬新な発想で、"プレミアムカプセルホテル"という概念を定着させつつある注目のチェーンである。

森の中のバルをイメージ。クラフトビールや日本酒が楽しめる

例を挙げると、シモンズ製高級寝具や高機能空気清浄機、スクエア型のユニットといった設(しつら)えや調度品の豪華さが特徴。それと共に、充実のアメニティグッズに加え、例えばみそ汁&フリードリンク、ウエルカムドリンクの健康茶、ネット&マンガコーナー、高級マッサージチェアなど、無料尽くしのオンパレードに驚く。

ハードを充実させる施設づくりがプレミアム感だとすれば、無料サービスはお得感。プレミアム感×お得感の相乗効果で利用者の納得性を追求している。これだけの施設にして男性専用なのが残念だ。

さらに荻窪店では、従来の店舗になかったサービスがめじろ押しだ。スタンダードな縦型のキャビンに加え、キャビンへのイン/アウトが容易な横型も設置。大型テレビを設置できるのも横型ならではだ。

横型キャビンの中には、カプセルホテル最大級の24インチTVも設置

カプセルホテルの利用で懸念されるのが音の問題であるが、プルートゥースの高性能ヘッドフォンを採用しプライベート感を高めている。また、飲食を提供するダイニングスペース、DJブース、無料で楽しめるダーツコーナー、朝食(森の朝カレー)の無料提供も従来のチェーン店にはなかったサービスである。

アクセルを踏み込んでタトゥー解禁

このように、荻窪店で注目すべきポイントは多数あるが、トピックとして一番に挙げられるのは「ファッションタトゥーの解禁」だ。カプセルホテルが法律上、簡易宿所というカテゴリーになることは前述したが、簡易宿所の要件のひとつとして、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有することが定められている。カプセルホテルの多くに大浴場が備えられているのはそのためであり、充実した浴場設備を設けることを施設の魅力にしているカプセルホテルは多い。

広々とした大浴場は、ミネラルを多く含んだトゴールを使用した人工温泉となっている

もちろん、荻窪店もミストサウナなどを備えたハイセンスな大浴場を設置している。大浴場ではタブーとしているところが多いが、それを解禁にした理由を同社の松田一宏氏は聞いたところ、「社内で慎重な協議を重ねた結果、アクセルを踏み込んだ」とのこと。

増加する訪日外国人観光客も視野に入れ、ファッションタトゥーを気にすることなくリラクセーションを体験してほしいという想いのよう。デザインタトゥーを解禁することが、経営としての合理性も併せ持つという判断なのだろう。なお、店舗の入り口には、「当ホテルはデザインタトゥーがある方もご利用いただけます」という掲示と並び、「暴力団および暴力団関係者 反社会的勢力 泥酔されている方……のご入館を固くお断りします」との掲示が設置されている。

デザインタトゥーOKで門戸を開く

先駆的な発想を次々と実現してきた豪華カプセルホテル安心お宿。荻窪への進出が新たな境地を開拓する改革となり得るのか見守りたい。

※記事中の情報は2016年7月のもの

筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」