グルメバーガーブームに呼応する上位ライン展開

それでは、モスは「グルメバーガー勢を相手にせず」と高をくくっているのだろうか。その問いに対する答えとなりそうなのが、2015年11月に東京の千駄ヶ谷でオープンした「モスクラシック」の存在だ。

「大人のためのハンバーガーレストラン」を標榜するモスクラシックは、1個1,000円を超えるハンバーガーやアルコールなどを取り揃えるモスの新業態。モスは以前、この手の店舗を神楽坂に出店したことがあるが、当時のテナントは面積が狭く、大きなグリドル(鉄板)を中心とするオープンキッチン型の店舗作りには不向きだったことから、テナント契約を更新せず、別物件への移転を検討していたという経緯がある。今回の再出店は、グルメバーガーブームを捉えた素早い対応だといえる。

日本発祥のバーガーショップであるモスに、高価格帯の上位ラインを求める声は株主からも上がっていたという。神楽坂のモスクラシックを知る顧客からも、もう一度食べてみたいという意見は出ていたそうだ。千原氏によると、千駄ヶ谷店の手応えは上々の様子。地元住民を含む幅広い客層を獲得できており、「(ランチタイムのみならず)夕方から再びピーク」がくるという、ファーストフード店とは違った盛り上がりもみせているそうだ。千駄ヶ谷店の反応を見つつ、6大都市への展開も考えるという方針にも変わりはないようだ。

総武線の千駄ヶ谷駅から徒歩3分のモスクラシック(外観は写真左)。店内はゆったりと座れるソファと落ち着いた照明が特徴だ(写真右)。席についてから注文し、帰りに会計を済ませるレストラン形式の店舗で、顧客に「くつろいでもらえる空間」(森野氏)を提供することを目指している

外食戦争に巻き込まれるハンバーガー業界

日常のモスバーガーと非日常のモスクラシックで2正面作戦を展開するモスフードサービスだが、主戦場となるのはやはり日常の部分だろう。そうなると、モスの競合相手として強力なのは、他のバーガーショップというよりもむしろ他の外食産業だ。

ラーメンやうどんはもちろんのこと、最近では低価格の回転寿司チェーンなども勢力を拡大している。コンビニエンスストアをはじめとする中食ビジネスの伸張も脅威だ。海外勢の上陸により、日本で勃発したハンバーガー戦争も、実際のところは“外食戦争”という大きな流れのなかで起きた局地戦に過ぎないのかもしれない。