――自分自身よりも女優としての自分を褒められる方がうれしいと。
めちゃくちゃうれしいです。もともと、女優というお仕事が自分には向いてないと思っていたので、お世話になった方に少しずつでもお返ししたり、「成長したね」と言ってもらえるようになりたい。初めての監督から褒められるのはうれしいですけど、福田監督のようにもう一度使ってもらえたのが本当にうれしかったです。
――演技に興味を持ったきっかけが、ヒロインを務めた『仮面ライダー フォーゼ』と聞きました。今でも「女優は向いてない」と思っているんですか?
思っています。ほかの方々とくらべて集中力に差があるというか、「普通の人」だなと実感します。女優のイメージって、やっぱり「普通の人」ではなくて、ちょっと変わってる部分がありそうな感じしませんか? 肝が据わっていたり、演技に対して割り切って考えることができたり。でも、私は好みではないフリフリの服とかが衣装だと、内心ではテンションが落ちてしまう(笑)。そういう「役ではない自分」を持ち込んでしまうことを自覚しています。だからバラエティに向いているとかよく言われるんです(笑)。でも、「ここでやる」と決めたのは自分。これからもがんばります。
――今年4月3日に放送された『おしゃれイズム』(日本テレビ系)で、司会の上田晋也さんは清水さんを「女優っぽい」と。私も見ていて、やっぱり変わってる方だなと感じました(笑)。
いたって普通です(笑)。一つ一つの行動だけをピックアップすると変わっているように見えますが、本当に普通なんです。
――最初はバラエティの方に興味があったんですよね?
モデル、グラビア、バラエティを経験して、最後に行き着いたところが女優さんですね(笑)。
――最近は再びバラエティ番組の出演も増えていますが、それについてはどのように受けとめていますか。
おいしいものを食べて感想を伝えたり、知らないことを聞いて驚いたり、そういう初めて体験することに対しての素直な自分を出していい場所なので、私としてはとても自由でいられる時間というか。楽しんでやっていたら、またお声をいただけるようになりました。それでもバラエティ番組では緊張するので普段と違って声を張ってしまいますし……素の自分とはまた違います。不思議ですね(笑)。
――今年4月2日からは『にじいろジーン』(関西テレビ・フジテレビ系)にレギュラー出演中ですが、初回エンディングの「がんばっていけそうです」という言葉が印象的でした。不安があったんですか。
そんなに深い意味はありませんでした(笑)。最後に振られることを忘れていて、しかも、目の前のケーキがおいしすぎて。質問は理解していましたが、頭の中の7割はケーキだったので、残りの3割で出たのがその一言でした(笑)。「これからもよろしくお願いします」のような思いが込められています。
――そうだったんですね(笑)。映画やドラマ、バラエティにも引っ張りだこなので、十分に「売れた人」という認識なんですが、昨年末のブログには「まだ全然売れてない」「なんで売れたいんだろう。笑」と書かれていました。
取材をしていただく時に「ブレイクしましたね」と言われることがあるんですけど……。朝ドラに出てから気づいてもらえることが増えました。でもきっと、自分の中での「売れる」というイメージが変わってきたような気がします。以前は、「たくさんの人に自分のことを知ってほしい」「あの番組に出たい」という願望ばかり。朝ドラは多くの人に自分の名前を知ってもらえる機会になりましたが、「そこまで自分の実力はあるんだろうか」という疑問があって。そう思っちゃうと、私の中では「まだ売れてない」です。仕事はすぐになくなるものだと、今でもそういう危機感があります。
――いつもそのように立ち止まって、自分を見つめ直しているんですか?
わりと現実的だと思います。物事をあまりプラスに考えられないんです。
――『まれ』のヒロインは落選してしまいましたが、その同級生役に起用されました。お父さんは「お前はヒロインの器じゃない。こんな素晴らしい機会はないんだから、修行するつもりで、そういう器になるために頑張って来い」と叱咤激励されたそうですね。これだけ活躍すれば、最近褒められることが多くなったのでは?
周りから言われてうんざり……みたいな感じですけど、どこかうれしそうで(笑)。「そんなにテレビに出てるんだね」と他人事のような言い方でも、気持ちは何となく感じることができます。そういえば、今年1月、金沢にお父さんと2人で旅行に行ったんですよ。
――どういう目的の旅行?
うーん……親孝行?
――すてきですね。すべて清水さん持ちで?
はい。初めてです(笑)。反抗期にとても迷惑をかけてお世話になりましたし、朝ドラのオーディションに落ちて悩んでいる時に「ヒロインの器じゃない」と言ってくれたように、節目節目で格言をくれるんです。お父さんのおかげで成長できたと思いますし、何よりも「成長したい」と思わせてくれた。だから、両親を旅行に連れていけるぐらいお金をいただけるようになったら連れていくと決めていました。
今でも思い出します(笑)。移動の新幹線は思い切ってグリーン車にしました。あっ、「行き」だけです(笑)。お父さんがそこに座って、シートをさすりながら「大きくなったな……」って。その言葉は本当にうれしかった。帰りの新幹線ではハイボールで乾杯。「すごく楽しかった。また一年がんばろうと思えた」と言ってもらえて、安心しました。来年は帰りの新幹線もグリーン車にできるように、これからもがんばります(笑)!
■プロフィール
清水富美加(しみず・ふみか)
1994年12月2日生まれ。東京都出身。身長162センチ。2008年の「レプロガールズオーディション」でグッドキャラクター賞を受賞し、芸能界デビュー。モデルを経て、初の連ドラとなる2011年の『仮面ライダー フォーゼ』(テレビ朝日系)でヒロインに抜てきされ、2013年には映画『HK / 変態仮面』のヒロインに。2015年のNHK連続テレビ小説『まれ』では、ヒロインの同級生・一子役を好演した。現在、2016年4月クールのドラマ『世界一難しい恋』(日本テレビ系)にレギュラー出演中。
(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会