過労死が起きている日本を外国人はどのように考えているのだろうか

過労死に関するニュースを見聞きしたことがある人も少なくないだろう。今年1月、神戸西労働基準監督署が2015年に自ら命を絶った兵庫県在住の男性の死は、労災にあたると認定したとのニュースが流れたことは記憶に新しい。一部報道によると、男性の時間外労働時間は最大で1カ月に約180時間にもおよんだという。尋常ではない数字だ。

日本企業の長時間労働の是非は以前から議論を呼んでいたが、視点を国内ではなく国外へと向けたとき、日本企業はどのように見られているのだろうか。日本在住の外国人20名に「日本企業の仕事スタイル」について聞いてみたので、気になった意見を紹介しよう。

Q. 母国の仕事スタイルと比較して、過労死が起きるほど働く日本をどう思いますか?

■働き方や制度を変えるべき

・「嫌です。人を機械のように使いすぎているので、そういう問題が起きています。もっと人間的な扱いをすべきだと思います」(ロシア/20代後半/男性)
・「会社にとって人材が一番大事ですので、福利厚生を徹底的に見直すべきです」(オーストラリア/30代後半/男性)
・「おかしいと思います。こんなにも過労死が起きているので、政府は会社をもっと厳しく監視するべきだと思います」(カナダ/30代前半/女性)
・「働き過ぎ。会社にいる時間が長すぎです」(マレーシア/30代中盤/女性)

■日本はおかしいのでは

・「母国には過労死なんてありえないことです。日本は発展している国に見えるけれども、実際に国内の社会的な問題が多すぎだと思います」(ウクライナ/20代中盤/女性)
・「過労死は日本の特徴かもしれません。長い仕事時間や残業は、プレッシャーがかかります」(ポーランド/30代前半/女性)
・「イタリアでは仕事をしたことがないのですが、過労死が起きているとは聞かないです。そういう意味で、日本はおかしいと思います」(イタリア/30代前半/男性)
・「ばかばかしいです」(シンガポール/20代後半/男性)
・「母国では過労死はほとんど聞いたことがありませんので、日本は労働環境が厳しいと思います」(トルコ/40代前半/男性)
・「おかしい」(中国/20代前半/男性)

■母国との違い

・「母国では無理をさせないようにされています」(バングラデシュ/20代中盤/男性)
・「日本人はファミリーをあまり大事にしていません。バランスを取らないと、精神的に大きな悪影響が出ると思います。エジプトでは一番大事なのは家族です。ですから、過労死は全然ないと思います」(エジプト/20代中盤/男性)
・「日本は厳しすぎると思います。スペインでそういうケースは滅多にありません」(スペイン/30代前半/男性)
・「韓国も過労死が起きています。韓国も日本も企業が効率のいいシステム作りをするより、社員に120%任せっきりな感じがします。特に日本人は真面目な人が多いので、周りに気を使って頑張りすぎたり、働きすぎたりするので問題かなと思います。短期的には効率が上がるかもしれないが、長期的にみると個人にも会社にも損だと思います」(韓国/30代前半/女性)

■その他
・「過労死は身体を休めず、ちゃんと食事もとらないという理由で起きると思いますが、本人の意思でしか変えられない事態だと思います」(ブラジル/40代前半/女性)
・「人生は仕事だけではないので、もうちょっと自分の時間を作って他のものに時間をかけた方がいいと思います」(香港/20代後半/女性)

■総評

結果は、過重労働が往々にしてみられる日本の仕事スタイルに疑問を呈する外国人が大半というものになった。「過労死は信じられないです。死んだらおしまいなのに仕事を優先しすぎておかしいと思う」(フィリピン/30代中盤/女性)との意見にあるように、仕事よりも自らの命が大切なのは人種や国に関係なく誰しもが一緒のはず。

だが、非正規雇用率が4割(「就業形態の多様化に関する総合実態調査」より)となる日本では、一度正社員の道を外れると再び正社員として雇用されるのは決して簡単ではない。そのため、正社員でい続けるために、過度の労働を否応なく受け入れるしかない人たちもいるはずだ。

政府は過労死が社会的な問題となっている現状を鑑み、「過労死等防止対策推進法」を制定し、2014年11月1日より施行している。同法では、「過労死等に関する調査研究を行うことにより過労死等に関する実態を明らかにし、その成果を過労死等の効果的な防止のための取組に生かすことができるようにする」などを基本理念として標榜(ひょうぼう)。過労死などの防止対策として「相談体制の整備」「民間団体の活動に対する支援を規定」などを設けているが、すべての労働者がその恩恵にあずかることができる日は、まだまだ遠いといえよう。

※写真と本文は関係ありません

調査時期: 2016年2月15日~2016年3月15日
調査対象: 日本在住の外国人
調査数: 20名
調査方法: インターネット応募式アンケート