新米警官ウサギのジュディをはじめ、かわいらしい姿の動物たちがポスターの中で所狭しとひしめきあっているディズニー映画『ズートピア』(4月23日公開)。その癒やし全開のビジュアルの印象を受け、『マダガスカル』みたいな人畜無害なアニマル映画を想像して観に行くと、立ち上がれないほどの衝撃を食らうはず! スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、「動物たちが主人公なので子ども向けかと思ったら大間違い。この作品は、資本主義の果てに、どういう社会が生まれるのかを暗示している」と言っているように『ズートピア』はズバリ! 動物ではなく、人間社会を描いている感動作! そして、「ディズニー映画の中でもずば抜けた傑作です!」と言い切っているように、傑作すぎるディズニー映画が誕生した。

ウサギのジュディ・ホップス(左)とキツネの詐欺師・ニック

物語の舞台は、動物がまるで人間のように暮らす大都会のズートピア。人類顔負けの超ハイテク文明社会ズートピアは誰もが夢を叶えられる場所で、立派な警察官なることを夢見て、ウサギのジュディが上京する。ところが、"ウサギはニンジンを作る役割でしょ?"という常識もまた妥当している世界で、ジュディは厳しい現実に直面。程なくキツネのサギ師ニックと出会ったジュディは、ズートピア史上最大の危機に立ち向かっていく――。

それこそ映画の前半は、我々が思っているようなディズニー映画と、ほぼ変わらないような様相、かもしれない。ジュディが悪戦苦闘していると言っても、数々の挫折をなんとか乗り越えて、程なくあからさまな悪党が登場して、やっつけてめでたし、みたいな。また、しょせん動物が主人公なんで人間みたいな心情表現をウサギの表情に出すことは無理だし、実際の人間が演じるほど感情移入するキャラクター性も薄いんじゃ? みたいな。

ところが、本作のメガホンをブン回している監督たちは、日本でも根強い人気を誇る『塔の上のラプンツェル』のバイロン・ハワードと、大ヒット作『シュガー・ラッシュ』のリッチ・ムーアという賢人たち。ディズニー・アニメーション"第3黄金期"の勢いを加速させたとも評される実力派の制作陣は、そんな淡い予定調和をブチ破る刺激的な展開と設定を用意。表面的には楽園めいたズートピアを人間世界の縮図に仕立て上げ、性別・年齢・学歴・出身地などの違いから生じる偏見や差別について、超どストーレートに描いていく。

このジュディやニックが経験・直面する問題は、今の時代を生きる我々自身の問題であって、そのひずみが過度に進行してしまった後の悲劇的な事態まで想定して描くガチな内容。新卒して社会に出たての若者たちはジュディの奮闘に背中を押され、キツネとして生きることに甘んじているニックの姿に思わずむせび泣くお父さん方も続出するに違いない。

先日来日したプロデューサーのクラーク・スペンサー氏は、「『ズートピア』のスケールは、これまでのディズニー映画の中でもっともスケールの大きなものになっています」と断言していたが、おそらく同発言の真意は、アクションや動物たちの毛並みとか見た目でわかる派手な規模感のことだけでなく、人間世界が内包する社会問題をズバズバと斬っているというメッセージ性のスケールのことだと理解した。

およそ差別や偏見はなくなることはないにしても、少しでも個の差を認め合うことが叶うならば、我々の人生や暮らしは格段に豊かなものになるだろう、という愛いっぱいの語りかけ。すでに世界中で大旋風を巻き起こしている背景には、世界のあちこちにズートピアがあることの裏返しでもある。そして日本でも来たるゴールデンウィーク、いよいよ公開だ。見逃し厳禁の超絶感動作、ディズニー映画『ズートピア』を観て、連休明けの人生をポジティブに生きようじゃないか!

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.