2015年のFX市場は、売買高が過去最高を記録するなど活況だった。なお、店頭FX取引(取引所FXは含まず)の売買高は5584兆5000億円に上り、前年比で44.8%増加した。売買の内訳を見ると、ドル/円が3434兆5000億円と60%以上を占めたほか、ユーロ/ドルが781兆2000億円、ユーロ/円が493兆7000億円、豪ドル/円が359兆6000億円、ポンド/円が303兆4000億円の順に続いた。なお、この5通貨ペアで総売買高の96%をカバーした事になる。

店頭FX売買高

2015年売買高内訳

店頭FX取引では1カ月あたり約465兆円、1日あたり約22兆円が売買された計算になるが、世界の銀行間市場で行われる為替取引(スポット取引)は、国際決済銀行(BIS)の2013年調査によると1日あたり2兆ドル(230兆円)だ。規模の点において、日本のFX投資家は、いまや世界の為替マーケットにおいて無視できない存在となっている。実際に、「ミセス・ワタナベ」の名付け親とされる欧米報道機関や欧米ファンドが数年前から当社をたびたび訪れており、筆者も何度かヒアリングに応じた事があるが、一様に「ミセス・ワタナベ」の売買高の多さに驚きを表す。

欧米勢も注目する「ミセス・ワタナベ」のFX取引に関して、外為どっとコムでは、毎月1回の顧客向けアンケート調査を行っている。また、その結果を外為どっとコム総合研究所が「外為短観」として取りまとめて公表している。昨年12月に行った調査で「2015年の投資成績」について尋ねたところ、「利益が出た」と答えた投資家は42.1%、「損失が出た」としたのは46.9%であった。前年の調査では、2014年の投資成績について「利益が出た」と答えた割合が55.1%と半数を越えており、2015年は投資成績がダウンした事になる。

2015年投資成績

そうして迎えた2016年は、ドル/円相場が一時115円台に差し込むなど年始から荒れ模様の展開となっている。そんな中、FX投資家の相場観にはっきりと変化が現れた。2016年1月12日から19日にかけて行った最新の調査で、米ドル/円予想DI(1カ月後のドル/円相場が上昇すると答えた割合から下落すると答えた割合を引いた数値)が▼24.2%ポイントとなり、31カ月ぶりにマイナスに落ち込んだ。

今後1カ月間の米ドル/円相場の見通しについてお答えください

これは、過去2年半以上に渡り米ドル/円相場に強気な見通しを維持してきたFX投資家が、弱気見通しに転換した事を示している。昨年、米ドル買い・円売りで上手く利益が得られなかった投資家らが、今年は米ドル売り・円買いに賭けているようにも思える調査結果となった。2016年の米ドル/円相場は、「ミセス・ワタナベ」が下値を支えるという昨年までの構図を期待しにくくなったと言えそうだ。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya