1999年に放送されたTVアニメ『十兵衛ちゃん -ラブリー眼帯の秘密-』が、「十兵衛ちゃん-ラブリー眼帯の秘密-Blu-ray BOX 特装限定版」として限定発売されるのを記念して11日、新宿シネマートにて上映&トークイベントが開催された。

写真左より桜井弘明氏、吉松孝博氏、大地丙太郎氏、藤津亮太氏

『十兵衛ちゃん -ラブリー眼帯の秘密-』は、突然"2代目柳生十兵衛"に指名され女子中学生・菜ノ花自由と、柳生に恨みを持つ「竜乗寺家」との戦いを描いたアニメ作品。かわいらしく個性的なキャラクターとギャグ要素、「ラブリー眼帯」によって"十兵衛ちゃん"に変身した自由が繰り広げる迫力の戦闘シーンが話題を呼び、2004年からは続編となる『十兵衛ちゃん2 -シベリア柳生の逆襲-』がTV放送された。

トークショーには総監督と脚本を務めた大地丙太郎氏、桜井弘明監督、アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督を担当した吉松孝博氏が登場。全13話からファン投票によってセレクトされた3話(第1話『二代目柳生十兵衛誕生!』、第12話『知らない娘に出会ってた』、第13話『夜が明けたら朝が来た』)の先行上映終了後に対談が行われた。

本作のヒロイン・自由について大地総監督は「当時流行っていたアニメのようには、絶対にしない」という構想があり、明るくハッキリした定型的な「普通のヒロイン」ではなく、もっと曖昧とした「本当に普通な女の子」にしたかったという。当時はチャンバラを扱ったアニメ作品は少なかったが、大地総監督には「学園モノやホームドラマの要素、それに巨乳を付ければ何とかごまかせるだろう」という計算があった。

自由のデザインについては、吉松氏がキャラクター原案・むっちりむうにい氏のキャラクター案を基にしてアニメ用のラフ画を描いたものの、当初描いたものは桜井監督に全てダメ出しされてしまったという。当の桜井監督としては頬骨が出っ張り、ほっぺたが鋭角にえぐれて顎まで尖る90年代に流行した輪郭は「パターンみたいで嫌だから」避けたかっただけという思いからであったことが明かされたが、「ダメ出ししたこと自体、全く覚えてない。本当に申し訳ない」と済まなそうに語り、会場の笑いを誘った

また作品の特徴であるギャグ要素について大地総監督が「『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』をやった直後だったからギャグも強烈だったし、個人的に『1つのギャグを引きずらずに、次々と出す』ことは意識していた」と語り、「ギャグに関しては責任を取らない、ドンドン次に行く。テレビドラマを見ていても『まだそのギャグ引っ張るんだ?』みたいなのがいまだにある」と昨今のドラマについて指摘すると、桜井監督も「ウケなくても気付かない内に流れてしまえば、作り手としては傷付かないで済むのに(笑)」と気の毒がっていた。

本作のギャグシーンに欠かせないキャラクターである三本松番太郎・大猿・子猿のバンカラトリオに話が及ぶと、大地総監督と桜井監督は「あの3人組については特に打ち合わせのようなものはなく、前に一緒にやっていた『赤ずきんチャチャ』のノリそのままですね」と振り返る。感情に応じて字が変化する番太郎のTシャツに関しては、「あれは考えるの苦しかった。思い付きで始めたらエラいことになってしまった」と当時の苦労を明かした。

最後には作品について大地総監督から「自分で言うのは何だけど、今見てもすごくよくできている。こんな作品が作れて幸せでしたし、呼んでくださったマッドハウスさんには感謝しかないですね」とコメントし、実は『十兵衛ちゃん3』の構想もあったことが披露された。この企画は西部柳生が出て来る西部劇にするつもりで、2代目十兵衛後継者の条件である「ぽちゃぽちゃのぷりんぷりんのぼんぼーん」に「……のパツキン」を加えて、新たな物語を構築するつもりだったという。そのために初代十兵衛役・小倉久寛の「パツキン」というせりふも収録していたという秘話も語られた。

「十兵衛ちゃん-ラブリー眼帯の秘密-Blu-ray BOX 特装限定版」はバンダイビジュアルより2016円1月29日に発売。価格は15,000円(税別)で、Amazonとバンダイビジュアルクラブの限定販売となる。

(C)1999大地丙太郎・マッドハウス/バンダイビジュアル