アサヒグループホールディングス、アサヒ飲料と野村総合研究所(NRI)はこのほど、訪日外国人向けのおもてなし活動の一環として、最新の音声認識技術を活用した「対話型自動販売機」の実証実験を開始すると発表した。

2016年1月6日から2016年2月(予定)までの期間、訪日外国人が多く訪れる東京・浅草の雷門近くに「対話型自動販売機」を1台設置し、利用者の行動データを蓄積・分析することで、急増する訪日外国人のニーズを検証し、アサヒグループ商品の購買とファン化を促進するための施策を見出すことを目指す。

(左)「対話型自動販売機」、(右)「対話型自動販売機の活用シーン(イメージ)」

アサヒグループホールディングスによると、同社お客様生活文化研究所では、今年5月から「インバウンド消費実態調査プロジェクト」を立ち上げ、インバウンド市場や訪日外国人の消費実態等の調査を進めてきた。

調査結果の1つに、訪日する外国人は、気軽に飲料水が購入できる自動販売機への関心や利用意向は高いものの、日本語表示を理解できないため商品特性がわからず、購入を躊躇したり、自国で馴染みのある特定商品の購入に偏ってしまったりする傾向があることがわかったという。

そこで、最新の音声認識技術を活用し、訪日外国人に対して、英語による日常会話のような感覚で詳細な商品情報を提供することで、商品に対する理解を促進することにした。

具体的には、既存の自動販売機の横に設置したタブレット端末に向かって話した音声が、クラウド上で提供される音声認識サービスによってテキストに変換される。そのテキストの構文解釈により文章として意味づけられ、それに対する回答が再度音声に変換されて端末に返り、自動販売機の前にいる人とリアルタイムで会話を行う仕組みとなる。

自動販売機で商品の購入を検討している訪日外国人に対し、英語による音声コミュニケーションを通じて、お茶やコーヒーなどの商品カテゴリーを選択してもらい、糖分や炭酸の有無、カロリー量などを含む商品情報を提供し、さらには"日本で人気のある商品""寒いときにぴったりな商品"など、「お勧め商品の紹介を行い、販売促進につなげる」としている。

NRIでは、先端技術動向に関する調査や開発手法の研究を通じて見いだした有望技術を用いて、企業と共同で新たなビジネスやサービスの創出を目指す「NRI未来ガレージ」(※)を2012年から運営。今回の実証実験も、このプログラムを活用して行う。

※ 2012年6月に開設した、新たなビジネスやサービス共同創出のプログラム。参画企業と一体になり、利用者にとって真に価値ある"これから"のサービスを探求するプログラムを提供。具体的には、NRIのIT動向調査や検証、開発手法の研究等により見いだした有望技術を用いて、アイデアジェネレーションのためのワークショップや、新技術の適用に関する検討、試作検証や共同での実証実験を行う。参画企業の持つニーズやノウハウと、NRIのコンサルティング、調査研究成果、システム開発技術を掛け合わせることにより、単独企業では思いつかない発想を生み出すとともに、それをアイデアで終わらせず、実現へとつなげていくことを目指している。

今回の実証実験において、NRIは、音声認識や画像認識の分野で近年脚光を浴びている機械学習およびAI技術において、その技術を容易に活用可能とするクラウドサービスに注目し、Microsoft Project Oxfordの音声処理機能(Speech APIs)、自然言語処理機能(Language Understanding Intelligent Service:LUIS)を活用した実証機を開発。

今後は、中国語の対応に加えて、音声対話による効果の検証と、商品の購買、および購買者のファン化を促進するための施策の検討を、アサヒグループホールディングスと共同で行っていく。

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