年金支給額は今年度よりマクロ経済スライドが適用され、実際の物価上昇よりも年金額は低い上昇率となり、実質目減りとなりました。今後も物価の上昇が続けば年金額は減り続ける一方で介護保険料や医療費負担などは少子高齢化の影響で増加することは確実です。

年金だけで老後生活は成り立たない状況の中、老後資金の準備はどのように考えればいいのでしょう? 心配だからといって必要以上に守りに入ってしまうことなく、今の生活も大事にしながら少しずつ準備を始めることが大事。無理せず自分たちなりの資金プランを立てましょう。

年金だけでは老後生活費は足りないの?

厚生労働省が発表しているモデル世帯における夫婦二人の年金額は1カ月あたり22万1507円(平成26年度)。これはあくまでもモデルケースであり、受け取れる年金額は個々により大きく異なります。また自営業者などの場合、そもそも受け取れるのが基礎年金だけなので満額もらったとしても夫婦二人合わせて月額約13万円(平成27年度)。

一方で必要な生活費は国で行っている家計調査によると月額約27万円(二人以上世帯、平成27年9月分)。モデルケースの年金額でも月に5万円は不足する計算です。

ゆとりのある老後生活を送るには、10万円ぐらいのプラス資金を作っておきたいもの。そう考えると65歳から20年間毎月10万円取り崩せる資金を自分たちで準備するとなると、単純計算で65歳時に2400万円の蓄えが必要です。

予想できる受取年金額がモデルケースよりも少ない場合には、さらに自前で準備するべき老後資金の額は増えます。

どう考える? 老後資金作り

老後の資金不足が心配といっても、今の生活もゆとりがあるわけではない中で、遠い将来のためにどのように準備したらいいのかわからないという人も多いでしょう。ただ闇雲に老後が心配だからといって、若いうちから貯蓄を殖やすことだけ考えるのは長い眼で見ても得策ではありません。また、結婚をしたばかりだったり、子育て真っ最中という世代では、老後の準備よりも先に、マイホームの購入や子どもの教育費などたくさんのお金が必要になるライフイベントが待ち構えています。それらのためにお金を貯めつつ、老後のための準備もするのは現実的ではありません。ですから、先に訪れるライフイベントのためのお金を効率的に貯め、なるべく借金を増やさずに切り抜けることが老後に向けたラストスパートで貯蓄パワーを全開にするための最大の得策といえます。

40歳代後半~50歳代前半あたりになると、子どもの教育費がピークを迎える時期。事前に教育資金作りがしっかり準備できていれば、このあたりから老後資金作りを本格的にスタートできます。教育費を負担しながら老後資金も準備するのは思った以上に負担が大きいので、教育費の準備が間に合わなかった場合には、奨学金制度などの利用も検討し、子どもにも一部負担してもらうなど話し合うことも必要です。

40歳代後半~50歳代前半あたりは、子どもの教育費がピークを迎える時期

ライフステージ別老後資金プラン

現在20歳代~30歳代の人はまだ将来の年金額がどの程度になるのかなかなか予想しづらいので、目標設定が難しいのも事実。実際、何十年後の目標額を掲げてもその間の状況によって貨幣価値も変わるし、年金制度自体も大きく変わる可能性もあるので、最終目標額はきちんと決める必要はありません。それよりも家計を見直して貯蓄にまわせる額を把握し、その中のほんの数千円でもいいので老後のための積立を始め、継続し続けることが大事です。

40歳半ば頃になると、少しは老後についての想像も付きはじめ、また今後の収入の伸びがどうなるのかもある程度把握できるので、具体的なプランを立てるのに良い時期です。年金額や退職金として期待できる額も大まかに予想できるのであれば、なるべく厳し目な数字を出して、目標額を設定するといいでしょう。これまで少しずつ貯めていたお金と併せて65歳までの20年程度の積立計画を立てましょう。

50歳代後半になるといよいよラストスパート。ここで貯蓄のメインを老後資金にシフトできるようにプランを立てましょう。住宅ローンなどを抱えている人は、セカンドライフに突入する前に完済のめどを立てると同時に、貯めたお金の運用方法もしっかり考えることが大事です。預貯金だけですべてのお金を持っておく必要はないので、10年程度の時間をかけながら、ゆっくり資産を分散することが大事です。

必要なら専門家のアドバイスも受けながら、株や外貨、債券などのリスク商品も取り入れていくといいでしょう。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 堀内玲子

証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。