――――出演者の方々にお手紙を書かれたそうですね。いつもやられていることですか。
いえ、小学生のころに、一度書いた記憶がありますが、それ以来だと思います。
――――なぜ、書こうと?
伝えたいことがたくさんあって。でも、言葉にするときっとうまく伝えられないだろうなと思って。きちんと文字にしてまとめてお伝えしようと思ったんですけど、なかなかまとまらずに何度も何度も書き直しました(笑)。
――――鈴木さんと坂口さんにはどんな思いを伝えたんですか? 話せる範囲で結構です。
お二人に対して……。「ありがとうございます」という言葉だけでは足りないぐらい、たくさんの感謝の気持ちがありました。亮平さんには役作りについてや、諦めずにがんばることの大切さを教えてくださったこと、坂口さんには演技のことやいろいろな相談に乗ってもらったこと……。「ありがとうございました」と「頼ってばかりですみませんでした」を何度も書いたと思います(笑)。
――――坂口さんには手渡しで、鈴木さんはかばんの中に入れたとか。その違いは(笑)。
恥ずかしいので本当は2人ともかばんの中に入れておきたかったんです(笑)。3人で帰り支度をしている時に、亮平さんはモミアゲとマユ毛をとりながらメイクさんたちとお話をされていたので、こっそりかばんに入れられたんですが、坂口さんは私の隣に座って待っていたので、このままだとかばんに入れられないし渡せなくなってしまうと思い。こっそり入れるのは諦めて「絶対、家に帰ってから読んでください!」とお願いし直接渡しました。「分かった」と言いながらその場で読み始めようとされて(笑)。必死で止めました。
亮平さんはなかなか気付いて下さらなくて(笑)。亮平さんのかばんに手紙を入れたことをブログに書いたら、どなたかがそのことを亮平さんに伝えてくださったみたいで。そこでようやく「手紙気づいたよ!」と連絡をいただきました。
――――さすが猛男。気づくの遅いですね(笑)。
たぶん、台本の間とかに入れたんだと思います(笑)。
――――それは気づきませんよ(笑)!
ですよね(笑)。坂口さんは手紙を読んで泣いてくださったそうで「こちらこそありがとう」と。それで私もまた泣きそうになって……。亮平さんは「芽郁がいるから俺も猛男でいることができた」という言葉を送ってくださって……。もうヤメテー! という感じでした(笑)。
――――良好な関係だったことが伝わります。今回の作品を通して「殻を破ることができた」と聞きました。具体的にどのような「殻」があったのでしょうか。
今までは、本番の最初から自分が思ったようにうまく表現することができなくて、どうしたらいいんだろうと。きっと、恥ずかしさとかがあったんだと思います。でも、『俺物語!!』は亮平さんと坂口さんの近くにいることで、「恥ずかしがれない」という思いもあって、監督も自然と私を引っ張ってくださって。そのおかげで、本番1発目から気負わずに、自分の思いを乗せたお芝居をができて。「殻を破ることができた」と実感できたんです。
――――これまでたくさんの作品に出演されていますが、それは数を重ねても見えてこなかったことだったんですか。
そうですね。自分が未熟でちゃんと役と向き合えていなかった部分もありますが、どうすれば自分の思うように表現できるのかが本当に分からなくて、ずっと悩んでいろいろな方に相談していました。この作品と出会って、たくさんの方に支えていただきようやく、自分が思うスタートラインに立つことができたと思います。
――――デビューのきっかけはスカウトと聞きました。芸能界に興味があったんですか。
すごくテレビっ子で、バラエティ番組に出てみたかったんです。お笑い芸人さんを生で見てみたいという気持ちから、一緒に出てみたくなって(笑)。スカウトされた人はみんなテレビに出られると勘違いしていて、そこから演技レッスンに行ったりしているうちに、みんなが出られるわけじゃないんだということに気づいて(笑)。でも、そのレッスンでお芝居の楽しさに気づくこともできて、そこから女優さんやモデルさんのお仕事をやりたいと思うようになりました。
――――女優やモデルもとても厳しい世界だと思います。心が折れそうになったことはないんですか。
ありますよ(笑)。自分の中で一番心が折れそうになったのは、あるドラマの泣くシーンの撮影でした。気持ちの整理ができなくて、ブレーキがかかってしまい、思うように泣くことができなくて。監督からは何度もダメ出しがあって、10テイクぐらいかかってしまいました。「もう、できない」とそこで諦めそうにもなったんですが、本当に悔しくて悔しくて……。でもその時「こんなに悩んでいるってことはお芝居が本当に好きなことなんだ」と自分の気持ちに気づいて。
好きなことじゃなかったら、きっと悩まないしすぐ諦めたと思うんです。お芝居との向き合い方が切り替わった瞬間でした。それからいろいろな作品を観て、1つのセリフでも言い方を変えれば伝わり方も変わるんだと気づくことができまし、1つの作品から、いろいろなことを学びたい! と思う気持ちが強くなりました。
――――ブログにアップしていた今年の書き初めには「七転び八起き」とありました。不屈の精神というか、昔から負けず嫌いだったんですか。
すっごく負けず嫌いです(笑)。「七転び八起き」の、「七回転んでも八回目で立ち上がればいい」「何回間違えてもそれよりももっと努力すればいい」という意味が好きで。
――――その後に出演した作品で今回の経験は生かされましたか?
はい! とても! 少しずつですが自分の思う表現をできるようになっているのかなと思います。今までは監督に相談することもできませんでしたが、疑問に思うことは監督に聞くようにしています。人ってこんなに変わることができるんだと自分でもビックリです(笑)。
――――今年はすごいことが起きましたね。大きな転換期だったと思います。
本当にすごいんですよ! どう言えばこのすごさが伝わるか分からないんですけど……私のすべてが変わりました。本当にたくさんの方への感謝の気持ちでいっぱいです。今まではきちんとした目標は考えていなかったのに、この作品に出会ってからは挑戦してみたい役もたくさん思い浮かぶようになりました。そして、亮平さん、坂口さんという本当にすばらしい方と出会うこともできました。またいつか共演してもらえるように、これからも頑張っていきたいです。
■プロフィール
永野芽郁(ながの・めい)
1999年9月24日生まれ。東京都出身。小学生の頃にスカウトされ、芸能界入り。ファッション誌『ニコ☆プチ』(新潮社)で専属モデルを経て、2013年からは『nicola』(新潮社)の専属に移行した。これまで『ゼブラーマン -ブラシティの逆襲-』(10年)、『るろうに剣心』(12年)、『繕い裁つ人』(15年)などの映画に出演。今年10月に放送されたフジテレビ系ドラマ『テディ・ゴー!』にも出演した。また、人気女優の登竜門の一つとも言われている『高校サッカー 応援マネージャー』にも抜てきされるなど活躍の場を広げている。
(C)アルコ・河原和音/集英社 (C)2015映画「俺物語!!」製作委員会