以上が実際に使って感じたメリット・デメリットだ。それぞれのポイントについて、気になったところをデビットカードのプロに聞いてみた。お話を伺ったのはビザ・ワールドワイド・ジャパン デビット事業統括部 商品企画チーム ヘッド 前田裕弘さん。

デビットカード=お金の計画が立てやすい?

――デビットカードのしくみやクレジットカードとの違いについて教えて下さい

デビットカードは「口座直結」が特徴のカードです。クレジットカードのような「与信枠(限度額)」がなく、残高に1万円があれば1万円、100万円あれば100万円分の買い物ができます。また、代金は買い物をするとその場で引き落とされます。

クレジットカードの場合、支払いのタイミングと請求のタイミングが異なります。支払った段階で家計簿をつけ、金額を把握できていればいいですが、なかなかうまく使えない人もいらっしゃるのではないでしょうか。その点デビットカードは使った時点で引き落とされるので、口座残高が幾らで今月はあとどれくらい使えるかというのが見えます。予算や残高管理など、お金の計画も立てやすくなると思います。

――引き落としの後にメールが届きますね

利用通知メールはセキュリティ対策の1つです。デビットカードは引き落としの時点でメールが来るので、クレジットカードよりも不正利用に早く気づくことが多いようです。不正利用が発覚した段階では、お金が使われてしまっているかもしれません。ですが、発行金融機関が定める条件を満たせば、「不正利用に対する保護」に基づき、不正利用請求分についてはカード所有者は支払責任を負いません。

お話を伺ったビザ・ワールドワイド・ジャパン デビット事業統括部 商品企画チーム ヘッド 前田裕弘さん

――高速道路などで使えないのはなぜでしょうか?

理由は「支払いのタイミング」です。デビットカードは、買い物をした時点で金額が口座から引き落とされます。そのためには、引き落としの前に「この金額でこの人にサービス、或いはモノを提供していいですか?」という確認が加盟店から発行金融機関のシステムに入るようになっています。一部の高速道路は、そのシステムを導入していないので確認が取れません。そのため、発行金融機関側で使えないように設定しているのです。

――ガソリンスタンドで使えないのも同じ理由ですか?

ガソリンスタンドでは、給油の前にカードの有効性をシステムでチェックします。発行金融機関から「有効なカードである」と返事が来た場合、自動給油機が動いて給油が始まります。しかしながら、入れ終わるまで支払額がわからないので、口座残高が足りない可能性もあります。事前の確認はあくまでも「使えるかどうか」であって「残高が幾らあるか」までは確認されていないので、仮に3万円分給油したとして、口座残高が3万円未満だった場合引き落としができないのです。

※前田さんによると、デビットカードの中にはガソリンスタンドでの支払いが可能な場合もあるとのこと。支払いが可能なデビットカードで残高が不足していた場合、後日発行金融機関より後日発行金融機関より、口座への入金の依頼等の連絡があるのだそう。使えるカードでも、事前に残高確認をしておいた方が良さそうだ。

デビットカードとクレジットカード、どう使う?

――還元率をみると、クレジットカードの方がお得な気がしますが……

還元率のみに注目すると、クレジットカードの方がお得ということもあります。ただし、デビットカードはクレジットカードと競合するものではなく、今まで現金で払っていたものに対する新たな選択肢の1つと考えてみてください。現金とデビットカードの違いは、お金の出所が「財布」か「口座」かという点のみ。発行金融機関によってはキャッシュバックやポイントがつくので、今まで現金で払っていたところをもっとお得に使えると考えると良いのではないでしょうか。

――デビットカードは海外でも使えるのですか?

デビットカードは海外の加盟店で買い物ができますし、海外ATMから現地通貨の形で引き出しも可能です。クレジットカードは「キャッシング」になりますが、デビットカードはあくまでも自分の口座からの引き落としなので、利息はかかりません。手数料などを厳密に計算すると「どちらがお得」とは一概にはいえませんが、キャッシングに抵抗がある方はデビットカードでの引き出しがおすすめです。

――クレジットカードとデビットカードの使い分け方を教えて下さい

使い分けというよりは、予算管理が必要なふだん使いの部分をデビットカードにするのがいいと思います。先ほども述べたように、発行金融機関によってはキャッシュバックやポイントがつくので、現金に比べたらお得です。かつ、ATMを使って現金を引き落とす手間や手数料も省けます。クレジットカードはそれ以外の高いもの、口座残高を超えているけど欲しいものや分割でもいいから買いたいもの、「ハレの日」の出費用として使うのも手ですね。

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日本国内ではまだまだクレジットカードが主流だが、海外では広く普及しているというデビットカード。人によって感じるメリット・デメリットは異なるが、現金払いに変わる新たな選択肢として検討してみるのもいいかもしれない。