「第44回東京モーターショー2015」の一般公開を前に、10月28・29日の2日間にわたり、報道関係者を対象としたプレスデーが開催された。ホンダのプレスブリーフィングでは、新型燃料電池車「クラリティ フューエル セル」が世界初公開されたほか、新型「NSX」や「スーパーカブ」の次世代コンセプトなども紹介された。

ホンダの新型「NSX」。プレスブリーフィングには本田技研工業代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏が登壇した

新型「NSX」と「シビック タイプ R」が日本初公開

ホンダブースでひときわ目立っていたのは、日本初公開となった2台のスポーツカー、新型「NSX」と新型「シビック タイプ R」だ。新型「NSX」は、新開発の縦置きV6ツインターボエンジンに3モーターハイブリッドシステムを組み合わせたスーパースポーツモデル。来春から生産がスタートし、まずは北米で販売されるそうだ。

プレスブリーフィングにて、本田技研工業代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏は、「私も運転しましたが、3モーターで4輪の駆動力を制御するオン・ザ・レール感覚の走りは、クルマとの一体感にあふれ、まるで自分の手足のようにクルマを操る楽しさを感じることができました」と、実際に試乗しての印象を語っていた。

新型「シビック タイプ R」は新開発2.0リットルVTECターボエンジンを搭載

続いて、すでにヨーロッパで販売中の新型「シビック タイプ R」の国内発売が正式発表された。新開発の2.0リットルVTECターボエンジンを搭載し、ニュルブルクリンク北コースで行われた走行テスト(開発車両を使用)において、FF量産車最速の7分50秒63を記録した。同車は12月7日、国内750台限定で発売されるという。価格は428万円とのことで、ヨーロッパでの販売価格と比べて割安に感じられた。

FCVに自動運転…、新テクノロジーをワールドプレミア

今回、世界初公開となったのは、新型FCV(燃料電池車)の「クラリティ フューエル セル」だ。燃料電池パワートレインを小型化してボンネット内に収め、ガソリン車セダンと同等の5人乗りキャビンを実現していることが特徴。2016年3月に日本で発売し、その後、世界へ展開していくという。同車と接続することで、一般家庭が使う約7日分の電力を供給可能な外部給電機「パワー エクスポーター 9000」も同時発売予定とのこと。

「クラリティ フューエル セル」市販予定車(写真左)と「パワー エクスポーター 9000」(同右)

「Honda WANDER STAND CONCEPT」も世界初公開された

自動運転技術を用いたコンセプトカー「Honda WANDER STAND CONCEPT」もワールドプレミアとなった。ちょこんと腰かけて走るようなイメージの不思議な乗り物だ。自動運転技術について、「『ホンダ センシング』という安全運転支援技術の進化の先に、自動運転の実現があると考え、現在、機能向上と適用の拡大に挑んでいます」と八郷氏は説明し、「2020年をめどに、高速道路における自動運転の実用化をめざします」と表明した。

公道を走れるMotoGP車にモーター搭載の「カブ」も

ホンダといえば、二輪のイメージも強い。この8月には、二輪ロードレース世界選手権の最高峰であるMotoGPクラスでのマルク・マルケス選手の優勝により、グランプリ通算700勝を達成した。そのマルケス選手がMotoGPで駆る競技専用車「RC213V」をベースに、一般公道での走行を可能とした特別なモデル「RC213V-S」が今回紹介された。市販車だが2,190万円という価格もあり、会場の外ではめったにお目にかかれないはずの1台だ。

「RC213V-S」

「EV-Cub Concept」(写真左)と「Super Cub Concept」(同右)

身近なところでは、ホンダの原点といえる「スーパーカブ」の次世代モデル「Super Cub Concept」が世界初公開されたのも興味深い。ガソリンエンジンのまま、環境性能に磨きをかける方向性で、発売を前提に開発しているという。同時に、モーターを搭載した「EV-Cub Concept」も出展された。

最新鋭のスーパースポーツに、自動運転技術やFCVといった次世代テクノロジー。そして原点の「スーパーカブ」。プレスブリーフィングもブースの展示内容も、たいへんバラエティに富んだ印象のホンダであった。