
2026年9月12日(土)、ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(以下PEC東京)にて、スポーツカー文化とそれを中心に発展してきたコミュニティを世界規模で祝うイベント「Sportscar Together Day」が開催された。
【画像】1000人を超える参加者で賑わった、ポルシェ「Sportscar Together Day」(写真20点)
世界10カ所のポルシェ・エクスペリエンスセンターで同時開催
このイベントはポルシェコミュニティがグローバルで一体となるよう、9月12日~13日にかけて世界各地にある10か所のポルシェ・エクスペリエンスセンターで同時に開催。ソーシャルメディアでハッシュタグ #SCTD を付けてコンテンツを共有することで、世界中のスポーツカーファンが集まるコミュニティに参加することもできた。
日本においてはPEC東京5周年という節目に行われ、抽選で選ばれた1102名のスポーツカーオーナーやそのファミリーが集った。
会場に足を踏み入れると「910カレラ10」「356 A 1600」「918スパイダー」「959」、また1973年の「カレラRS2.7」にはじまる歴代のRSモデルなど歴史的な名車が出迎えてくれた。
午前10時、ポルシェジャパン代表取締役社長 イモー・ブッシュマン氏による開会の挨拶によって、イベントがスタート。911GT3のオーナーでもあるタレントのユージさん、モータースポーツレポーターの英美里さんがMCを務め、さまざまなステージプログラムが進行されていく。
ステージではショーン・ウォザースプーン氏がデザインしたポルシェ912アートカーのお披露目に続き、2008年に初代カイエンでトランスシベリア・ラリーに参戦し総合10位入賞を果たした写真家の小川義文氏が、エピソードとともにカイエンの歴史を振り返り、そして最新のカイエン・エレクトリックの特徴や魅力を紹介。
午後には日本限定モデル「911 GT3 アルティザンエディション」をテーマに、元ポルシェAGのカーデザイナーである山下周一氏によるデザイントークおよびスケッチセッションを実施。ステージイベントの最後には、このイベントのために来日した911および718の商品開発責任者を務めるフランク・モーザー氏と、GT3オーナーでもある音楽プロデューサーの松任谷正隆氏によるスペシャルトークショーが行われ会場は大いに盛り上がった。
さらに911やカイエンなどによるドライビング体験や同乗試乗をはじめ、Workshopエリアでは、911の歴史と進化を知るブランドセッションや、子供向けにポルシェの技術とエンジニアリングについてわかりやすく学べる体験型プログラムなども実施。レストラン906では、世界のPECを巡る食体験が提供されるなど、老若男女が1日をかけて楽しめるコンテンツ満載の充実した内容だった。
次期GT3はターボ化?911商品開発責任者にインタビュー
このイベントを機に来日した911および718の商品開発責任者(Vice President, Porsche AG)を務めるフランク・モーザー氏に貴重なインタビューをすることができたので、ここで紹介する。
モーザー氏は1996年にポルシェAGへ入社。開発部門で16年間勤務した後、2013年にツッフェンハウゼンにあるポルシェ工場で品質責任者として生産部門に異動。2014年からは、コーポレート・クオリティ(品質管理)部門の責任者を務めていた。そして2022年末より911および718シリーズの開発・モデルラインを統括する。
―――まず世界各国でイベントが行われている中で、なぜ日本に来ることを選んだのか。そして911と718の開発を統括するという要職についていることについて尋ねてみた。
フランク・モーザー氏(以下モーザー 敬称略): このイベントは今日、世界各国で同時に開催されていますが私は、自分自身で日本に来るという決断をしました。もちろん、それだけ大事な市場だからという理由ですが、特に日本はGT3をはじめとする、熱心なスポーツカー愛好会がたくさんいる重要なマーケットだからです。
そして911と718というスポーツカーの開発責任者を務めていることを本当に光栄に思っています。新しい911の開発はこれまでずっとポルシェが培ってきた911ならではのDNAと未来とをつなぐ非常に重要な仕事であり、私にとっても大きなチャレンジであることは間違いありません。
―――最新の911にはハイブリッドとGT3のような自然吸気エンジンを搭載したモデルがあります。それぞれの魅力とはどのようなものでしょうか。
モーザー:ハイブリッドモデルには、カレラシリーズのトップエンドモデルであるGTS、そしてその技術をさらに高めたターボSの2モデルがあります。T-ハイブリッドと呼んでいますが、動力性能はもとより環境性能に対しても万能で非常にユニークなテクノロジーです。
一方で992.2のGT3の狙いとしては、さまざまな法規制により存続が難しくなってきている自然吸気エンジンを守りたかったという意図があります。排出ガスを例えばヨーロッパでは30%、北米では40%、中国でも40%削減する必要があったため、それは容易なことではありませんでした。そのため、4つの触媒コンバーターを装着する必要がありました。しかし、これら触媒によってパワーはダウンしてしまいます。以前のモデルと同じ最高出力510PSを得ることを開発目標として、MTとPDKの両方でギア比を8%下げてそれを成し遂げ、俊敏で、より即応性の高いものにすることができました。
―――今年の11月には欧州でEuro7という排ガス規制が始まります。その規制が施行されると、今のGT3の自然吸気エンジンはその規制をクリアできないと聞いています。自然吸気のGT3はいつまでつくることができるのでしょうか?
モーザー:そのとおり、Euro7は自然吸気エンジンにとって非常に厳しいものです。これまでは、さきほど述べたように触媒やギア比の変更などによってクリアしてきましたが、おそらく現在の自然吸気エンジンは2027年末までかなと想定しています。その後、GT3をどうやって継続していくのか。何か新しくいいアイデアを出さなければいけないと思っています。今後は排ガスだけでなく、騒音の規制も厳しくなっており、この2つをクリアするのはやはり非常に困難なものです。
―――広報には将来的な質問はしないようにと言われましたが(笑)、新しいアイデアとして将来的にGT3がターボやT-ハイブリッドになる可能性があるということでしょうか。
モーザー:そうですね。正直なところ、これからはターボチャージャーなのかなという気がしています。ただ、自然吸気エンジン自体が禁止されているわけではありません。しかし、その排ガスを減らすとなるとパワーが出せない。今後は自然吸気だとパワフルなエンジンが作れないということになってしまうため、1つの選択肢としてはやはりT-ハイブリッドよりはターボなのかなという気はします。
―――現在、911のラインアップにおいて、GT3よりもGTSのほうが最高出力も加速性能も優れているという下剋上が起きています。個人的には自然吸気エンジンはスペックとして最強でなくても気持ちがよければいいのではないかと思っていますが、GT3はそもそもの成り立ちとしてサーキットでは最速であることが運命づけられたモデルであると思います。そのあたりのバランスやヒエラルキーについてはどのようにお考えでしょうか。
モーザー:個人的にはそのモデルの価値は必ずしも加速や最高速度だけではないと思っていて、GT3とGTSの違いは別のところでも出せると思うんですね。例えばGT3はダブルウィッシュボーンのフロントアクスルを採用していますので、非常にステアリングが正確で、コーナーを曲がる時の感覚にも独特のものがあると思います。このようにGT3には、常にモータースポーツ部門のテクノロジーを市販車に移植することを行っています。そういう意味でもGT3とGTSの個性の違いは出せると思っています。
―――最後に次はBEVになるといわれながら、正式発表が延期になっている次期型718の現状について尋ねた。
モーザー:718は電動化しても、718らしさは決して失われません。ポルシェの2ドアスポーツカーの本質を忠実に守り続けることをお約束します。可能な限り軽量化を図り、俊敏性を高め、とにかく特別なものにするためにいろいろなことをやっています。デザインもまさにポルシェのスポーツカーそのものになったと自負しています。開発は今まさに完成にむけて大詰めの段階にありますので、最終的にどうなるのかもう少しお待ちいただければと思います。
文:藤野太一 写真:ポルシェジャパン
Words: Taichi FUJINO Photography: Porsche Japan