――アレンジで歌詞が変わるというのも面白いですね
LiSA「『Empty MERMAiD』は曲自体がすごく高いんですけど、『リスキー』は全然高くない。私の持ち歌の中でも高くないほうなので、これは歌で遊べる曲だなって思いました。どんな風にでもニュアンスがつけられるので、どんな歌詞であっても、歌い回しひとつでいろいろな表現ができる。だから、あえて普遍的なこと、みんなが思っているような感情を歌っても、曲もアレンジもぶっ飛んでいるので、どんな風にでもなるなって思いました。とにかく『リスキー』は、小南さんと江口さんが最初からグチャグチャにしてくれたので……」
――小南さんはグチャグチャにしたつもりはないと思いますが……
LiSA「そうですね(笑)。ただ、好き勝手に作ってくださいとお願いしたこともあって、本当に好き勝手な曲だったんですよ。ただAメロがずっと続いて……とかじゃなく、いろんなメロが入ってきたりしますし。『リスキー』は今までの曲と比べると、突然声のローを出したり、逆に潰して可愛い声を出したり、声の表現を一番たくさん使って歌った曲なので、自分で聴いていてもすごく楽しいです」
――そういう意味では、「Empty MERMAiD」とは違ったベクトルで、聴いていて楽しい曲になっているわけですね
LiSA「あと、"満たされない"気持ちを歌っているという点では『Empty MERMAiD』と同じですが、『Empty MERMAiD』の場合は、愛されていないから満たされていない。でも、『リスキー』は、愛されているかもしれないけれど、自分のほうが愛している気がしてムカつくみたいな(笑)。そんな感じになっています」
――そして3曲目の「虚無」は、これまでにもLiSAさんに曲を提供しているカヨコさんが作曲です
LiSA「この曲は、カヨコさんが得意な、女の人っぽいものを作ってくださいってお願いしたのですが、これも(堀江)晶太君のアレンジによって、いい意味ですごくグチャグチャになっています(笑)。とにかくギターがすごい。もうウルサイぐらいギターが入っていて、それがグルグルした感じを表してくれています。なぜかわからないのですが、カヨコさんの曲は、すごく擦れている感があるんですよ。この報われない感はなんだろうって。もうカヨコさんの曲がこういう詞を書けって私に言ってくるんですよ」
――満たされないどころか、「虚無」ですからね
LiSA「もう何にもない(笑)。私の中のイメージでは、ちょっと古い、昭和のスナックみたいな感じです。スナックの端にちょっとしたステージがあって、キラキラしたドレスを着た女の人が歌っている感じ」
――もう場末感満点ですね。先ほど、「Empty MERMAiD」と「リスキー」の"満たされない感"の違いをおっしゃっていましたが、「虚無」の場合は?
LiSA「もうそんなのはどうでもいいっていうレベルです。この曲の中の人も、もちろん愛されたいんですよ。実は3曲の中では一番愛が強い人かもしれません。だけど、愛されたいが強すぎて、それを満たしてくれるような人はこの世の中にはいない……そんな感じです」
――「Empty MERMAiD」と「リスキー」には愛の対象があるわけですが、「虚無」はそれすらないわけですね
LiSA「もう誰でもいいんだけど、誰もいない(笑)」
――演歌ですね
LiSA「だって『カクテルにして飲み干す』ですよ。"フォークダンス"を踊って、母ゆずりの名前さえも忘れちゃうんですよ(笑)。この曲も、アレンジが違っていたら、本当にすごい歌になっていたかもしれません。今回の3曲は、歌舞伎町で流してほしいなって思っていて、特に『虚無』なんてめっちゃ似合うと思いません?」
――ゴールデン街とかが似合うかもしれません。「虚無」と比べたら「リスキー」なんて恵まれすぎですね
LiSA「わがまますぎるくらいです(笑)」