夏本番を迎え、最高気温が30度を超す日が続く日本。こうした状況で気になるのが「熱中症」だ。搬送される患者の多くは高齢者や子供であるが、ビジネスパーソンにとっても人ごとではない。

日本気象協会 主任技師で気象予報士の谷口聡一さん。背景は、テレビの天気予報に使われるブルースクリーン

厚生労働省が公表した「職場での熱中症による死傷災害の発生状況」(5月14日)によると、2014年に職場で熱中症にかかった人は423名。うち死亡者は12名にのぼる。建設業や外回り営業など暑い日中に外へ出ざるを得ない場合、どのような対策をするべきだろうか。熱中症予防に向け様々な取り組みをしている日本気象協会 主任技師で気象予報士の谷口聡一さんにお話を伺った。

熱中症のメカニズム

――熱中症は何が原因で発症するのでしょうか?

原因は周辺環境が暑くなりすぎることにあります。人間はある程度までは自力で体温を調節できるのですが、気温や湿度が高くなりすぎるとコントロールできなくなってしまうのです。熱中症は車で言うオーバーヒート状態ですね。

――熱中症にかかると、どのような症状が現れるのでしょうか?

めまい、失神、筋肉痛などの症状があらわれます。重症化すると、体温が異常に上がり、意識障害になることもあります。少しでもめまいを感じたら、無理せず涼しいところへ行き、水分を補給しましょう。

――「暑くなりすぎる」ことが原因の熱中症ですが、具体的には何度くらいから注意するべきでしょうか?

目安として気をつけたいのは28度から。これを超えると、熱中症の危険性がぐんと上がります。ただし、天気予報の温度はあくまでも目安です。気象台の観測点は街中にあるとは限らず、ちょっと涼しいところにある場合もあります。一方、ビルが密集している場所では、建物から放出された熱やアスファルトからの照り返しなどで指標よりも暑くなりやすいのです。

――営業などで外にでると「思っていた以上に暑い!」と感じるのはそのためなのですね

また、最高気温を点で見るのではなく、「暑い時間がどれくらい続くのか」を考えることも重要です。32度以上の状態が4時間以上続くと、熱中症による救急搬送率が急増します。ですから、気温が高止まりしていないかどうかにも注目してみてください。

――32度以上の状態が4時間以上続く時は要注意ですね

もう一つ気にして欲しいのが「朝の最低気温」です。

――熱中症とどのような関係があるんですか?

朝から気温が高いということは、前日の夜は熱帯夜だったということ。そうなると、翌日日中の気温も高くなりますし、暑くて前日によく眠れていないという可能性もあります。寝不足で体調不良であると、熱中症にもかかりやすくなってしまうんです。朝の最低気温が25度以上のときは注意が必要です。

――前日夜の気温も鍵になるのですね

出勤前にニュースで天気予報を見る人も多いと思います。そのときには、その日の最高気温だけでなく、朝の最低気温もチェックしておくと良いでしょう。

日本気象協会が推進している「熱中症ゼロへ」プロジェクトのロゴマーク。よく見ると、帽子と髪の毛が「熱」という漢字になっている