スペイン語と英語に加え、日本語も堪能な日系三世のマリア・デル・ピラール・ズケヤマ・ウガモトさん(30歳)。彼女が日本に暮らしたのは、小学1年生からたった4年間だけでしたが、帰国後も日本から送ってもらった本やTV番組のビデオを見たり、インターネットを活用することで、高い日本語能力を維持し続けています。現在はペルーの地方都市で旅行会社を、首都リマで日本の便利グッズ販売店を経営するビジネス・ウーマン。常に努力を惜しまず、どんなことにでもチャレンジしていくバイタリティ溢れる女性です。

ピラールさん/ペルー・リマ出身/30歳/旅行会社・雑貨店経営

■これまでのキャリアの経緯を教えてください

大学では、ホテル・観光学を学びました。でも勉強していくうちに、リマ発のツアーはクスコやプーノ、アレキパなど、いわゆる主要観光都市へのツアーばかりでつまらないなと思って。もっと新しいパッケージツアーを創りたいと、大学4年の時に友人と3人でリマに旅行会社を立ち上げました。でも、やはり難しく、もっと専門的な勉強をしなきゃと思い、卒業してから改めて国立大学を受験、エコツーリズムについて一年間学びました。

そこで、タラポト(ペルー北部アマゾンの都市)出身の友達ができたんです。タラポトはリマから飛行機も飛んでいるし、クエラップ遺跡やゴクタの滝があるチャチャポヤスへの拠点にもなる町。私もタラポトがとても好きになったので、彼女やリマの友達と一緒にタラポトに旅行会社を設立しました。それが2013年11月です。

それとは別に、2014年1月に参加した国際協力機構(JICA)主催の経営スキル向上セミナーで、ある日本人女性と知り合いました。彼女はペルーに来たこともあったし、いつかペルーで商売がしたいと考えていました。一方、私も小さい頃から日本の100均グッズが好きで、いつかそういう雑貨を扱うお店を持ちたいなと思っていました。それであっという間に意気投合。2014年10月に日本の便利グッズを販売するお店「JP design」をオープンしたというわけです。よいパートナーを持つことが、ビジネスを広げる秘訣です。

ピラールさんが自信を持ってオススメする商品ばかりを集めた「JP design」。「JapanとPeruを繋ぐお店」という願いが込められているそうです。「ペルー人は新しいものに興味を持つ人が多いので、ここにはない珍しいものを仕入れるようにしています」と笑顔で答えてくれました。

■現在のお給料について教えてください

まだお店も立ち上げたばかりだし、月々の収入はまちまちです。雑貨店の商品単価は、現在7~65ソレス(約273~2,535円)、お客様は1日20~30人くらいでしょうか。でもちょっと寒かったりすると、客足が極端に減るんですよね。それに輸入コストが思った以上にかかるので、楽ではありません。旅行会社のほうも、もっと頑張らなきゃって思っています。結局は自分の努力次第ですよね。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

日本の商品は高品質だし使い勝手もいいので、お客様も喜んでくれます。「あれは便利だったよ」って言ってもらえると、とても嬉しいですね。また去年はフェリア(週末に行われる青空マーケット)にも参加したんですが、その時のお客様がまたリピートしてくれたり。「次はこういうのを輸入してくれ」と注文されることもあり、やりがいを感じます。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

お店について言えば、日本で人気のある商品とペルー人に求められる商品が違うので、その選択が難しいです。日本のパートナーが送ってくれるカタログを見ながら検討するのですが、写真と実際手に取った時の感じが違うこともありますしね。輸入する量と在庫のバランスも難しいです。お店が小さいので、無駄な在庫は抱えられません。

旅行会社のほうは、まだまだこれからです。去年は4回出張したけど、今年はショップが忙しくて、まだ1回しか行けてないし。タラポトはとてもいいところですが、ペルー人にとってさえマイナーな場所なので、お客様が簡単に集まる訳ではありません。それにペルーの旅行業は、この国の政治情勢や経済事情の影響を受けやすいんです。だから、他のビジネスも同時並行でいかなきゃね。

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

普段は、お店から歩いて3分の自宅で食べています。日系二世のお母さんはペルー料理も日本料理も作ってくれますが、好きなのは大根の煮物かな。午後1時半から1時間くらい自宅で休憩して、またお店に戻ります。今は私一人しかいないので、私が自宅に戻っている間は、お母さんが店番をしてくれています。

今日はお客様と一緒だったので、お昼は日系人経営のラーメン屋さんに行きました。ここは何でも美味しいのですが、とんこつラーメンが私のお気に入りです。

チャーシューもとろとろで、とても美味しい。味も値段も日本のラーメンと同じくらいです。

■日本人のイメージは? あるいは理解しがたいところなどありますか?

日本で暮らす日本人は、みんなとても真面目ですよね。でもいつも忙しそうだし、日本は規制が多いから、やりたいことができなくてストレスを溜めているように思う。南米で会う日本人たちは、自由な人が多いです。色んなことにどんどんチャレンジしていく。同じ日本人なのに面白いなと思います。ここでは周りの目とか評価を気にしなくていいからかな。

■最近TVやラジオ、新聞などで見た・聞いた日本のニュースは何ですか?

日本のことはよく知っていますよ。よく見るのはNHKの「あさイチ」、ほかにバラエティ番組やドラマも見ます。アーティストでは上戸彩さんが好き。終わっちゃったけど、「五つ星ツーリスト」の渡辺直美さんも面白いですよね。彼女はぽっちゃり女子向けのブランドも立ち上げたりして、すごいです。あとはアメリカの番組かな。ペルーの番組はあまり見ません。

■休日の過ごし方を教えてください

時間のある時は、テレビを見て過ごすのが好きですね。でもお店も週6日営業だし、空いた時間は営業に回っているので、休みはほとんどありません。

でもペルーは自分がしたいことを自由にできるし、努力次第でどんどん結果が出るから楽しいです。先日も、知り合いに編んでもらったアルパカ毛のベビー服やキーホルダーなどを、日本のパートナーに送りました。これが売れそうなら、また次の商品を考えようと思っています。あとリマ市内のレストランに日本の食器が売れるかどうかも探ってみようかなって。だから休んでいるヒマはないですね。

■将来の仕事や生活の展望は?

タラポトかチャチャポヤスに暮らしたいですね。地方はいいですよ。のんびりしているし。でも医療とかは全然だめで、タラポトのパートナーも子供が病気になったら、わざわざリマまで来ています。そういうのを見ると、ちょっと考えちゃう。でもリマはごちゃごちゃしているから、やっぱりタラポトがいいなぁ。