大分・別府はかつて、新婚旅行や社員旅行、修学旅行等の団体客でにぎわう全国有数の人気温泉地で、1970年代には宿泊客数が600万人(※)を超えていたが、そこをピークに減少へ転じ、2000年代には400万人を切って衰退した。そして今また、国内外の観光客が押し寄せる温泉街へと復活を果たしている。その復活の原動力も含め、別府の温泉の魅力をまとめて紹介しよう。

豊かな温泉文化を象徴する別府ならではの風景 画像提供:別府市

芸術フェスのほか外国人の口コミも

そもそも別府には、別府駅を中心とする繁華街に位置する「別府温泉」、至るところから湯けむりが上る「鉄輪(かんなわ)温泉」、海浜砂湯が有名な「亀川温泉」など、8つの温泉郷があることから「別府八湯(はっとう)」と呼ばれている。この別府八湯では2011年より、観光客が参加し体験するイベント「別府八湯温泉泊覧会(通称: オンパク)」が毎年開催されている(2014年は10月11日~11月30日に実施)。

さらに、2009年からは「別府現代芸術フェスティバル」のまちおこしイベントも実施している。2013年開催には若年層を取り込もうとタツノコプロとコラボした「タツノコ風呂」が登場し、ヤッターマンなどタツノコプロのアニメキャラクターと別府温泉のコラボで話題となった。そして2015年は7月18日~9月27日に、「混浴温泉世界」と題してさまざまなプログラムを予定している。

湯けむりがいたる所から立ち昇る「鉄輪温泉」で「地獄蒸し料理」を 画像提供:別府市

こうした取り組みに伴って、8つの地獄をめぐる「べっぷ地獄めぐり」やレトロな公共の湯「竹瓦温泉」、別府八湯88湯をめぐるスタンプラリー「別府八湯温泉道」、地獄蒸料理を提供する「鉄輪温泉」など、ユニークな温泉の楽しみが次第に注目を集めるようになった。中でもここ数年は関東からの客比率が増加するほか、立命館アジア太平洋大学(APU、2000年設置)の外国人留学生の口コミ等によって、外国人観光客数も年間25万人を突破している。

多種多様な"地獄"が待っている!?

そして、別府八湯の中でも別府に行ったら是非チャレンジしたいのが、鉄輪・亀川にある8つの温泉噴出口を訪ねる「べっぷ地獄めぐり」だ。

「べっぷ地獄めぐり」は路線バスで海地獄前下車し、「海地獄」からスタート

国の名勝にも指定された神秘的なコバルトブルーの池「海地獄」に始まり、灰色の熱泥の球が噴き出す「鬼石坊主地獄」、山の至るところから噴気が上る「山地獄」など、それぞれ異なる姿を見せる地獄めぐりは実に愉快。中には温泉熱を利用し動物を飼育する地獄もあり、「鬼山地獄」では70頭近いワニ、前出の山地獄ではカピバラやウサギなどかわいい動物たちに会える。

「鬼石坊主地獄」の坊主噴出温度は98度にもなる

「山地獄」にはカピバラなど動物が多数

「鬼山地獄」は別名ワニ地獄。園内にはたくさんのワニがいる

また「かまど地獄」には、1丁目から6丁目まで6つの地獄や飲む温泉、肌にいい温泉等を体験コーナーもある。ほかにも、「血の池地獄」では産出した粘土で作った血の池軟こうが売られており、無色透明の湯が池に落ちると青白く変色する「白池地獄」や一定間隔で間欠泉が噴き出す「龍巻地獄」も見逃せない。

「かまど地獄」には1丁目から6丁目まで6色の湯がある

「白池地獄」では、噴出する無色透明の湯が池に落ちると青白く変化する

「血の池地獄」では赤い熱泥で作った血の池軟こうも販売

「龍巻地獄」一定間隔で噴き出す間欠泉

「地獄めぐりをするだけの十分な時間がない……」という人には約2時間半で効率的に8つの地獄をめぐる便利な観光バスツアーもあるが、健脚でゆっくり歩いて楽しみたい人には安くて自分のペースで回れる路線バス利用のプランがオススメだ。路線バスの各種乗り放題券は地獄めぐりや入浴施設等のチケット代の割引になる等、各種特典が付いているのもうれしいところ。

路線バス1日乗車券。特典付きガイドブックと地獄パンフレットは各地獄や観光協会でもらえる

※統計は2010年より観光庁の全国共通基準を導入。2009年度以前は旧調査方法による数値となる。記事中の情報は2015年6月取材時のもの