目指すは名人! 88湯をめぐる温泉道
別府のもうひとつの楽しみ方として、"おんせん県"を掲げる大分の看板温泉「別府八湯めぐり」がある。日本の温泉の10の泉質のうち別府には多くの泉質が存在するほか、源泉総数2,294孔と1分当たりの湧出量8万7,067Lの2分野で日本一を誇る。そして、別府市内には温泉旅館のほか100カ所を超える共同浴場があり、多くの共同浴場は100円で入浴ができるのだ。
「ただ温泉を楽しむだけじゃもの足りない」という人は、スタンプラリー「別府八湯温泉道」なんていかがだろう。入った温泉の数に応じて段位が授与され、88湯を全てめぐると名人に認定される。段位認定者には認定証と認定タオルが授与されるが、まずは2種のスタンプをそろえて初級をゲットするところから始めたい。
スタンプラリーでは押印パスポート「スパポート」のほか、「別府八湯温泉本」が役に立つ。温泉本は別府市内の書店やコンビニで、スパポートは別府駅案内所や別府市内のホテルや喫茶店で手に入る。温泉本には88湯リストの他、お役立ち情報が満載だ。例えば、観光スポットとして別府駅に近いレトロな外観の「竹瓦温泉」を、グルメスポットとして地獄蒸料理で知られる「鉄輪温泉」も紹介されている。
どの温泉に入るか悩む人には温泉の効果を上げる特定の2つの泉質の湯を組み合わせてめぐる「機能温泉浴」もオススメ。最強美肌を目指すなら、明礬温泉と鉄輪温泉を組み合わせてみるといいだろう。女子はもちろん、美肌を目指す男子も是非試してみてほしい。
風景も湯もサービスも文句なしの快適さ
さて、温泉に行くなら外せない宿選びだが、別府八湯は別府湾を臨む別府や亀川等の"海の温泉"、そして、湯けむり立つ山の上にある鉄輪や観海寺、明礬等の"山の温泉"の両方が楽しめる。別府の中心街に近くて街歩きや夜時間も楽しめる別府、あるいは、6つの地獄に近くて湯けむり立ち上る温泉地の情緒漂う鉄輪か、宿選びは実に悩ましい。なのだが、今回は6月にリニューアルしたばかりの海の温泉「うみね」を紹介したい。
「うみね」はJR九州日豊本線「別府駅」から徒歩約15分のところにある。一言で「うみね」を表現すると"全館がリラクゼーション空間"であり、温泉や客室、食事、アメニティー、共有スペース、接客の全てでくつろげ、リラックスできる時間と空間を提供してくれる。
特徴のひとつは全室に源泉かけ流しの専用半露天風呂を用意していること。一番狭い部屋でも50平方メートルの広さがあり、客室にはゆったりした椅子やソファ、温泉水、ナイトウエアを含む2種の室内着、充実したアメニティーが用意されている。
1階のライブラリーラウンジにある自家製果実酒やコーヒー等の飲み物、おつまみはいつでも自由に利用できるし、DVD・CDや本は部屋に持ち帰って見たり聞いたりできる。このほか、屋上には展望露天風呂、1階のバーでは無料の夜食の提供もある。
だが、一番の贅沢はやはり部屋から見える景色や波の音を聞きながら24時間何時でも入れる源泉かけ流しの温泉だろう。しかも、リニューアルされた客室からは、香(かぐわ)しいヒノキのアロマが漂う。
また、食事は朝夕ともに部屋食のプランもあり、刻々と姿を変える別府湾の空や海の姿を見ながらゆっくりと食事を楽しむことができる。夕食ではブランド魚の関アジなど地元の鮮魚や旬の野菜、肉などを使った懐石料理や鉄板焼きなどでもてなしてくれる。
別府は東京からだと飛行機で1時間40分、大分空港からリムジンバスで40分ほど。航空券が安い時期などを狙うとコストも抑えられる。関東の温泉では絶対に味わえない温泉を是非別府で楽しんでほしい。
※記事中の情報は2015年6月取材時のもの
筆者プロフィール: 水津陽子
フォーティR&C代表、経営コンサルタント。地域資源を活かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。著書に『日本人がだけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)等がある。