日本の伝統的なお酒である「日本酒」。海外で日本食がブームになる中、それに合うお酒として「Japanese Sake」は注目度上昇中だ。最近ではフルーティーな味わいのものや、スパークリングの日本酒の登場などで楽しみ方も増えてきた。そんな日本酒をより身近に感じられる、東京近郊の酒蔵を紹介しよう。
東京23区唯一の酒蔵
東京23区内に残る唯一の酒蔵。それが「小山酒造」(東京都北区)だ。初代が酒造りに適した湧き水を発見して以来100年以上続く老舗で、こだわりを持った丁寧な酒造りをしている。主な銘柄は辛口が特徴の「丸眞正宗」。都心で育まれた、まさに"江戸の地酒"だ。
蔵を訪れる際には5人以上で1週間前までの予約が必要となる。料金は5~10人までひとり500円、10人以上はひとり300円となっている。蔵の中の見学はできないが、ビデオで酒造り解説を見て試飲も楽しめる。アクセスは東京メトロ南北線「赤羽岩淵駅」より徒歩5分と行きやすい。友達とワイワイ訪れる酒蔵も楽しそうだ。
奥多摩の豊かな自然と料理も満喫
東京の酒蔵というと必ず名前があがるのは、「澤乃井」で有名な「小澤酒造」(東京都青梅市)だろう。都心からは少し離れているものの、東京とは思えないような美しい自然に囲まれたこの酒蔵は、休日を過ごすのに最適な場所だ。
解説付きの蔵見学は無料で、社長が案内役をすることもあるという。試飲は付いていないため、見学後は有料の「きき酒処」へ立ち寄ろう。常時10種類程度が用意されていて、銘柄によって200円~500円で試してみることができる。使用したおちょこはお土産として持って帰れるのもうれしいところ。
敷地内には酒蔵だけでなく、豆腐会席の食事処や美術館、多摩川を見下ろす清流ガーデンなどがある。奥多摩のハイキングの締めくくりにしてもよさそうだ。アクセスはJR青梅線「沢井駅」より徒歩4分。JR「新宿駅」から沢井駅までは1時間20分ほどとなる。
10人限定「夜の酒蔵見学」
ちょっとディープな蔵酒見学をしてみたければ、「豊島屋酒造」(東京都東村山市)を訪れよう。約400年前に酒屋兼飲み屋を始めたのがきっかけで、その後、日本酒を手がけるようになったという歴史ある酒蔵だ。現在は主に「金婚」という銘柄を造っている。
ここで訪れたいのは、時折行われる10人限定の「夜の酒蔵見学」。19時からの開始の蔵酒見学で、その後は全員で円卓を囲んでの利き酒となる。日本酒について学ぶというより、日本酒談義を楽しむ会のようだ。持ち帰りのできる利きおちょこ代500円が必要で、おつまみの持ち込みは自由というシステムなのもユニーク。
夜の酒蔵見学は不定期で行っているため、行ってみたい場合はウェブサイトをチェックしよう。応募が10人を超える場合は抽選となる。毎回かなりな倍率だそうだ。アクセスは西武新宿線/西武国分寺線「東村山駅」より徒歩15分となる。
見どころ満載な築190年の建築
今度は東京以外の地から。創業宝暦3年(1753)の「武甲酒造」(埼玉県秩父市)は、日本酒の歴史を肌に感じる酒蔵だ。外観からして風格のある店舗にはその昔使われていた釜や木札などがいたるところに置かれ、江戸時代の雰囲気が健在。メインの銘柄は名峰武甲山の名前にちなんだ「武甲正宗」で、清酒をベースとした梅のお酒「うめざけ」は女性に人気なのだとか。
原則10人以上で酒蔵のツアーが可能。少人数の場合は電話にて確認してみよう。見学最後には利き酒もできる。中庭には平成の名水百選に選ばれた武甲山の伏流水が湧き出ている。自由にくんで帰ることができるため、水筒を持参したい。
アクセスは西武秩父線「西武秩父駅」より徒歩15分。西武池袋線「池袋駅」から西武秩父駅までは特急で約1時間20分となる。なお、秩父では山の上のプールや森のコテージでの宿泊も楽しめる(「新型スライダーに夜はビアガーデンも! 東京都周辺の超おすすめプール5選」を参照)。また、秩父周辺では7~8月に花火大会が行われる。それに合わせて訪れてもいいだろう。
老舗ながらモダンな酒蔵
今度は千葉から。豊かな自然に囲まれた老舗ながら、モダンさも兼ね備えているのが「飯沼本家」(千葉県印旛郡)だ。主な銘柄は300年以上の歴史を持つ「甲子正宗」。伝統を守るだけでなく、未来を見据えた"時代の先をいく"酒造りをしている。それは店内のスタイリッシュなアートギャラリーや、酒袋を使ったグッズ「ヨアソビ」などを見ても納得できるだろう。
酒蔵見学は要予約。昔の蔵とシステム化された蔵を見ることができる。そのほか、不定期に店頭に出ないお酒などを楽しむ大試飲会や、日本酒の楽しみ方を学びながら料理をいただくイベントなども不定期で開催している。詳しくはウェブサイトをチェックしよう。
酒蔵に隣接した食事処「まがり家」は、新潟県の「旧清野邸」を移築したという味わい深い日本家屋。ここでは甲子の利き酒セットや酒粕うどん、日本酒・梅酒のカステラなどを楽しみたい。まがり家からは隣の山まで続く遊歩道があるという。酔い覚ましに歩いてみてもいいだろう。アクセスはJR総武本線「南酒々井駅」より徒歩10分。JR「東京駅」から南酒々井駅までは約1時間10分となる。
長い歴史と伝統のある日本酒の酒蔵には、それぞれにこだわりがありお酒の味も様々だ。蔵巡りをしてお気に入りを見つけてみてはいかがだろうか。
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筆者プロフィール: 木口 マリ
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。