――Netflixで流れるコンテンツにはいろいろなジャンルがありますが、その中でも日本の「アニメ」を最重要視しているという話を伺いました。クリエイターにとっては、世界に打って出るチャンスになりますよね。

私は2つのチャンスがあると考えています。1つはアニメのクリエイターにとってのチャンス。それと同時に、世界中にいる日本アニメのファンは、すでに作品を知っているので、彼らが作品へ容易にアクセスすることが、Netflixによって可能になります。

「レコメンド機能」画面イメージ

熱心なファンは、どうにかして自分の好きなアニメを見つけることができると思いますが、そうではないライトなアニメファンだったり、あまりアニメを見たことがないという人には難しいでしょう。しかし、Netflixの持っているレコメンド機能(※4)によって、ユーザー個人にカスタマイズされたメニュー画面が表示されますので、それを通して作品を届け、広めることができます。こうして新しいファンを開拓するきっかけにもなるのではないかと思っています。

(※4)レコメンド機能
Netflixのユーザー一人ひとりに向けて、視聴したコンテンツの履歴や、Amazonのビッグデータを元に、その人に合ったおすすめコンテンツを画面に表示する機能。利用者の75%が、この機能から視聴している。

――そのレコメンド機能は、比較的受動的であると言われる日本人と、親和性が高いのではないかと思うのですが、いかがですか?

そもそも、レコメンド機能は、ユーザーがコンテンツを選択する自由を取り上げるということではありません。むしろ逆で、自分の視聴体験のコントロールが、よりできるようになると考えています。つまり、われわれが「きっとこの作品を気に入ってもらえるのではないか」と考えるタイトルを見せることによって、ユーザーはそれを選ぶというコントロールをすることができるという考え方です。それが、先ほども申し上げた、新しいコンテンツを発見するチャンスになると思っています。

テレビリモコンの専用ボタンイメージ

――秋のサービススタートの何カ月も前から、東芝、パナソニック、シャープ、ソニーという日本の大手テレビメーカーが、リモコンにNetflixの専用ボタンを実装させました。これは相当な期待を感じますね。

日本のテレビメーカーさんたちは、海外で販売しているテレビに、すでに対応していただいている実績があります。テレビにインターネットをつないだときの機能を紹介する際に、Netflixは、すごく分かりやすいんですよね。例えば「さまざまな映像が楽しめる機能を持っています」と話せたり、ボタン1つでその世界に入ることができるということが、デモンストレーションでお客さんに見せられます。そうした自然の流れの中で、日本でも専用ボタンを実装していただけたのではないかと思っています。

――昨今、インターネット動画でもライブ配信が盛んになってきています。現状、Netflixはビデオサービスですが、ライブコンテンツについてのお考えはいかがですか?

われわれは、自分のスペースで自分の楽しい見方ができる環境を提供するというのがミッションであると考えています。スポーツだったりニュースだったり、タイムリーな見方を求められるコンテンツは、ライブがぴったりだと思いますが、放送という今まで効率よく見られてきた形がありますし、ユーザーもその見方に慣れているのが現状です。ただ、インターネットに慣れている方は、ネット経由の方が慣れているとは思うので、将来的に需要があれば考えていくことになるのではないでしょうか。

――いよいよ秋にサービスがスタートしますが、日本でのユーザーは、どのように広がっていくと考えていますか?

まずは、やっぱりそもそもNetflixに関心を持ってくださるユーザーの方たちから、楽しんでいただけると思います。それから、コンテンツが大好きな方々。さらに、「マイナビニュース」さんの読者のようなテクノロジーに慣れている方々。そして、テレビ以外のスマートフォン、タブレットといったNetflixに対応するデバイスをすでに持っている方々に、魅力を知っていただくのがスタートになります。そこから、だんだん広げていきたいと思っています。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。ところで、アニメを重要視していると伺いましたが、ピーターズ社長の好きな日本のアニメを伺っていませんでしたね。ぜひ、教えてください。

やはり誰もが口にするので、ちょっと言いにくいのですが……『進撃の巨人』は大好きです。先ほど挙げた『シドニアの騎士』にも相当ハマっています。それに、新作が公開された『攻殻機動隊』も外せないですね(笑)

■プロフィール
グレッグ・ピーターズ / Netflix株式会社 代表取締役社長
「ストリーミングおよび社外連携担当最高責任役員」として、ネットフリックスがあらゆる機器やプラットホームにおいて映画やテレビ番組を配信することを可能にする、家電メーカー、ネットサービスプロバイダー、多チャンネル映像プログラム配信業者との全世界規模での連携を統括する。
2008年にネットフリックスに入社する以前には、マクロヴィジョンソリューションズ社(のちにロヴィコーポレーションと会社名を改める)において家電担当上級副社長を務め、それ以前には、デジタルエンタメソフトのメディアボリック社、リナックスやオープンソース技術のレッドハットネットワーク、オンライン酒類ベンダーのWine.comなどで役職を歴任。イェール大学で学び、物理学と天文学で学位を取得している。