ボルネオ島のサバ(マレーシア)は南洋真珠の名産地。テリ(輝き)がよく、上質な真珠として人気です。今回は、ファミリービジネスとして、真珠専門店「Borneo Pearls(ボルネオ パールズ)」とレストラン経営の2足のわらじを履いて奮闘するジャグジット・シンさん(39歳)が登場。多忙な毎日に密着しました。

ジャグジット・シンさん/マレーシア・クアラルンプール在住/39歳/TAKBIR SUKMA SDN. BHD.ジェネラルマネージャー

■これまでのキャリアの経緯は?

コンピューターサイエンスを専攻後、多国籍企業にソフトウェアエンジニアとして入社し半年間勤務しましたが、すぐにこれは自分の成し遂げる道ではないと感じ、「Borneo Pearls」のブランド名で真珠専門業を営む親族が経営する会社に転職しました。始めは在庫管理や配達など現場の業務から始め、その後人事、マーケティング、商品デザインなど幅広く経験を積み、現在はジェネラルマネージャーを任されています。弊社は2011年からレストラン事業も始めたので、「Borneo Pearls」だけでなく、こちらのディレクション業務にも携わっています。

■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?

今はジェネラルマネージャーですし、前職とは職種も、勤続年数も違いますので、単純には比べられませんね。会社の規定で給料を申し上げることはできませんが、毎年のボーナスに、販売が好調であれば決算賞与なども出ますし、給料についてはとても満足しています。

ボルネオ島サバ産のゴールドカラー真珠のピアス。この大粒のゴージャスさは南洋真珠ならでは

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

商品を購入したお客様が笑顔で喜んでくれるのを見た時、リピーターになってくれた時です。この仕事に誇りを感じます。私達は品質のよいパール商品を、適正価格で販売することにこだわっています。必要以上に高額で売ってはリピーターはつきません。個人のお客様に限らず、卸売販売でも取引先が好調な販売を見せ、喜んでくれた時にはとても嬉しくやりがいを感じます。

日本の皆さんはご存知ない方も多いかもしれませんが、マレーシア、ボルネオ島のサバ州は南洋真珠の名産地です。特にインドネシア、フィリピン、ボルネオの近海のみでとれるゴールドカラーの真珠に関しては、ボルネオ産は真珠層が厚いためテリ(輝き)がよく、No.1の品質とされています。私達の商品を通じて、ボルネオ産のパールについてもっと知ってもらえたら嬉しいですね。

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

時間が足りないことですね。私はパール事業とレストラン事業の両方に携わっているので、1日13~14時間働いています。各チームで話し合いたい課題やアイディアはたくさんありますが、なかなか同じ時間に集まって話し合うことが難しい点ですね。

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

オフィスのすぐ近くにある、弊社が経営する「Tasty Flavors」でバナナリーフのカレーランチセット(RM7.50)を食べました。弊社はクアラルンプールに2店レストランを出店していますが、ランチタイムは大抵、この店か、もう一店の北インド料理店「Tasty Chapathi」に出向き、味やサービスをチェックしたり、打ち合わせをしながら済ませます。

チキンカレーがかかったライスに、スパイシーチキン。ライスの上に並んだ付け合わせはオクラ、ミックス野菜、ゴーヤチップス、マンゴー、揚げた唐辛子。左上の2つの容器は火照った身体を冷やしてくれるヨーグルトドリンクに、インドの伝統的スープ「resan」です。

マレー料理、インド料理、西洋料理などが味わえるフュージョンレストラン「Tasty Flavors」にて。全10品のランチセットがなんとRM7.50(約250円)

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

日本人と一緒に仕事をしたことがありますが、とても礼儀正しく、時間に正確で、信頼でき、何より規律正しい人達で、高く評価しています。ある時、日本企業の方から会いたいとインドネシアのジャカルタから前日に電話があり、翌朝、本当にオフィスにいらしたのには驚きましたよ。

ここ最近、マレーシアには日本食が増えているので、日本食にはもちろん興味を持っています。TVでみた大阪の「ストリートフード」を食べてみたいですね。

■休みのとりかたは?

親族5人が経営に携わる会社なので、順番に休みをとり、お互いの業務をフォローし合っています。毎日必ず誰かが店舗に出向いてチェックすることは売り上げを維持する上で非常に重要ですから、休みは多くはとれませんね。まとまった休みは、12月にとることが多いです。

■将来の仕事や生活の展望は?

「Borneo Pearls」を世界的ブランドに成長させるのが目標です。現在、「Borneo Pearls」はクアラルンプールの主要ショッピングモールやホテル、空港を中心に出店していますが、近々、シンガポール、インドネシアの空港にも出店予定で準備を進めています。国境を越えて、ボルネオ島のサバ産を始めとする質のよい南洋真珠、またボルネオの魅力を商品を通じて伝えていきたいです。

また弊社は社会貢献プログラムにも力を入れています。サバ州にはプランテーションがたくさんありますが、暑くて過酷な仕事にも関わらず、給料はとても安いです。そこで、サバ州に弊社の製造工場を設立し、エアコンの効いた、快適な環境で、給料も相応の職場環境を提供しています。また6年前からは、クアラルンプール近郊で真珠の糸通しなど身体障害者でもできる仕事を提供し、積極的に雇用しています。こうしたCSR活動は直接売上に結び付くものではありませんが、私達がやりたいから続けているのです。

ランチ中も現場スタッフから次々に電話が入り、ディレクション業務に追われる日々