5月20~22日、東京ビックサイトで食材・食品に関する2つの展示会「国際食品素材/添加物展・会議(ifia JAPAN 2015)」「ヘルスフードエキスポ(HFE JAPAN 2015)」が開催された。
会場内では健康や美容に関連する食品が多数展示されたり、各分野に精通した講師によるセミナーも行われたりしたので、気になったものをいくつか紹介しよう。
今年のトピックは「機能性表示食品」
まずは「HFE JAPAN 2015」から回ってみた。こちらの展示会は、健康食品や美容・ダイエット食品、サプリメント、特定保健用食品、栄養機能食品、自然食品、医療・介護用食品など健康志向の食品を提供する事業者が多数出展していた。
そんな中、今年目立ったトピックは「機能性表示食品」だ。2015年4月から、食品の安全性と機能性に関する科学的根拠など、国が定める一定条件をクリアしていることを事業者が販売前に消費者庁長官に届け出て受理されれば、商品パッケージに機能性を表示し商品を販売ができるという新制度が施行された。
その新制度を受け、今年は機能性表示食品に特化した素材や原料を取り扱うメーカーの最新商品が多数展示されていた。
機能性食品のおやつもある!
中でも「日本を健康にする! 」研究会は「機能性おやつパビリオン」を設置し、機能性表示食品の中でもおやつに特化して商品を紹介したり、セミナーを開催したりするなど、積極的なPRが目を引いた。
そのうちの一つである「時間栄養学に基づいた機能性おやつ開発」と題して行われたシンポジウムでは、「日本を健康にする! 」研究会の会長で、ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 研究院教授の矢澤一良氏が講演。機能性食品研究の第一人者として知られる同教授は、用途が幅広い機能性食品をもっと有効活用すべきだと訴えた。
「骨・関節代謝疾患の成人病である『ロコモティブシンドローム』は、一般にはあまり知られていないがメタボリックシンドロームと同格に扱われるべき問題。ヘルスフードには、メタボリックシンドローム予防、抗酸化成分、骨・関節代謝疾患(ロコモティブシンドローム)、抗アレルギー・抗炎症、発がん予防など、病気別に15の分類がある。国がメタボリックシンドローム指導で医療費3割削減を目指して対策を講じたのと同様に、医療費対策として他の疾患にも予防医学の観点から機能性食品を有効に活用すべきだ」。
消費カロリーは朝と夜で4倍もの差がある
また、こうした機能性栄養素や成分には「時間栄養学」という考え方があり、食べる順序や時間帯により、効果に差異が生じると指摘したのは女子栄養大学副学長の香川靖雄氏だ。
例えば、同じカロリーの同じ献立を食べた場合でも食事誘発性の消費カロリーが変わり、朝と夜では約4倍の差異があるという。「朝は心身の活動に、夜は肥満に消費される。従って、同じものを食べていても夜食を続けている人はそれだけで肥満になってしまう」と香川氏。
さらに、「白人に比べてインスリン分泌能力が約半分の日本人は、肥満が軽くても糖尿病にかかりやすく、欧米人の食生活を続けていると病気を誘発しやすい。炭水化物を最後に摂取してインスリンの分泌を抑えるなど、食べる順序を工夫する必要がある」と解説した。
しかし香川氏は、現行の法制度では、こうした説明を機能性食品や健康食品に明記できない問題があると指摘する。
「例えば高血圧予防に有効なラクトトリペプチドIPPの血中濃度は、飲用後約45分でピークとなるので飲用時刻が不可欠。しかし、内服時刻の表示は薬事法違反になり、せっかくの効能が無駄になってしまう」と述べ、機能性おやつをはじめとする機能性食品の有効性を高めて摂取するため、時間栄養学を消費者側に認知していく必要性を語った。
プロテインバーを配布するブースも
一方、こうした機能性食材や原料、添加物など、具体的な商品を展示する各社のブースで注目したのは、三井製糖の「パラチノース」だ。
パラチノースは、ハチミツに微量に含まれる天然の糖質で、砂糖同様にブドウ糖と果糖がつながった二糖でありながら、吸収速度が砂糖の約5分の1で、血糖値の上昇が緩やかであるなどの特徴を持つ甘味料だ。
食後すぐに血糖値が高くなる「食後高血糖」は糖尿病を招きやすいが、パラチノースにはその心配がない。先ほどの香川氏の講演を含め、時間が栄養や健康と密接に関わっていることがよくわかる。
同社のブースでは、日本ボディービル連盟公認指導員1級を持ち、プロテインスィーツの提唱者であり、「フィットネスブレッド&プロテインスィーツ手作り教室Aries」を主催する山崎志保さんによる、パラチノースを活用したプロテインバーを解説するデモンストレーションと試食が行われていた。
人気商品の裏側をのぞけた「ifia JAPAN」
もう一方の「ifia JAPAN」は調味料や香料、着色料、保存料など食品製造用の添加物や健康志向食品向け素材、食品包装、ITソリューションなど、主に食品製造関係の事業者を対象とした展示会だった。会場内にはふだん私たちが食べる加工品の原料となる素材などが展示されており、人気商品の裏側をのぞくことができた。