薬事法ドットコムはこのほど、「機能性表示の第一人者が戦略的に解き明かす 消費者庁説明会」を開催した。同説明会では、同社の社主で、これまで600社以上のコンサルティング経験を持つ林田学氏が講師を務めた。

4月1日から「機能性表示制度」がスタート(写真と本文は関係ありません)

トクホや栄養機能食品に続く「機能性表示食品」とは?

4月1日に「食品表示法」が施行されたことに伴い、同日より機能性表示制度がスタートした。早ければ6月にも、機能性表示対応の商品がスーパーなどの店頭に並ぶ予定だ。……といっても、「最近よく聞く言葉だけど、どういう制度なの? 」と思う人も少なくないだろう。ただし一度知れば、同制度が消費者にとって食品を選ぶときの一助になるもので、かつ販売側にとっては自社食品の効果をより分かりやすく伝えられるものだということが分かるはずだ。

これまで、消費者が食品を手に取るときに判断基準となる表示は、「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」が主だった。そこに今回、新たに加わったのが「機能性表示食品」だ。まず、この3つの特徴について簡単に説明しよう(参照: 消費者庁ホームページ)。

■特定保健用食品(トクホ)
身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、「血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助ける」「おなかの調子を整えたりするのに役立つ」など特定の保健の用途に資する旨を表示するもの。販売するためには、製品ごとに食品の有効性や安全性について審査を受け、表示について消費者庁長官の許可を受ける必要がある。許可された食品には、許可マークが付いている。

■栄養機能食品
栄養成分(ビタミン・ミネラルなど)の補給のために利用される食品で、その機能を表示するもの。「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」などが具体例。販売するには、消費者庁長官の許可が必要。同食品の基準として、1日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が、定められた上・下限値の範囲内にある必要がある。また、栄養機能表示だけでなく、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」の表記を徹底するなど、注意喚起の表示もしなければならない。同食品に含まれる栄養素は2015年4月現在、ビタミン13種類、ミネラル6種類、脂肪酸1種類。

■機能性表示食品
食品関連事業者の責任において、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持および増進に役立つ)という食品の機能性を表示したもの。消費者庁長官の許可を受ける必要はなく、安全性や機能性に関する一定の科学的根拠(エビデンス)を消費者庁に届け出て受理されれば販売できる。また、同食品の科学的根拠は、消費者庁のウェブサイトなどで公開。サプリメントやそれ以外の加工食品のほか、生鮮食品にも表示できる。

「治療」「予防」「緩和」などはNG

薬事法ドットコム社主・林田学氏

上述のとおり、機能性表示制度では、トクホや栄養機能食品とは異なり、国の審査を経ずに食品関連事業者の責任で食品に効果・効能を表示できる。ただし、エビデンスを消費者庁へ提出することが必要だ。

同説明会では、林田氏が、主に食品関連事業者向けに同制度の審査基準や届出のフローなどを解説。ここでは、消費者庁による「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」を基に述べられた表現の基準について紹介する。

まず表現可能な大きな基準として、疾病に羅患していない者(未成年者、妊産婦、妊娠を計画している人、授乳婦を除く)の健康の維持や増進を指すもので、疾病リスクの低減にかかるものを除くとしている。具体的な基準は次のとおり。

OK基準

1.容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨

2.身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨

3.身体の状態を本人が自覚でき、一時的な体調の変化(継続的、慢性的ではないもの)の改善に役立つ旨

使用可能なワードは「維持」「改善」

一方、認められない表現には、今の状態が悪くないのにもかかわらず変えてしまう「改造」を示すものが該当するとのこと。主に以下の基準に準ずる。

NG基準

1.疾病の治療効果又は予防効果を暗示する表現

2.健康の維持及び増進の範囲を超えた、意図的な健康の増強を標榜するものと認められる表現

3.科学的根拠に基づき説明されていない機能性に関する表現

使用できないワードは、「治療」「予防」「緩和」「○○病 / ○○症」など

実務的な考え方としては、これらの基準に加え、「診療ガイドライン」や「OTCデータベース」で判断し、不可侵領域を知ることが大切とのこと。「それらをクリアしていても、"病気由来と読める状況"と判断されてしまうと、審査に通らない場合があります」と林田氏。そして「ひざ痛」を例にあげ、「病気以外にも、転ぶなどしてひざが痛いケースはありますが、その症状でサプリメントを飲む人はいませんよね。そこから病気由来と判断されます」。

ダイエットはどう表現できる?

では、実際に店頭で消費者は、どんな表現を目にすることになるのだろうか。林田氏は、基準を全てクリアすると思われる例として次をあげた。

■ダイエット

×「ダイエットをサポートします」
→「ダイエット」のワードが多義的でNG。

×「太った方の体重を減らします」
→体格指数(BMI)の基準(18.5以上25.0未満は「普通」、25.0以上30.0未満は「軽度肥満」、30.0以上は「肥満」)から考えると、「太った方」は肥満症ゾーンを侵食するためNG。

△「肥満傾向にある方の体重を減らします」
→「肥満傾向にある方」「体重」はOK。ただし、消費者庁より食事制限や運動なしにやせることはないと判断され、エビデンスが認められない可能性がある。

○「一定の食事管理と運動の下で肥満傾向にある方の体重を減らします」
→上記の懸念事項にも配慮しているためOK。

このように表現一つをとっても、同制度は決してハードルが低いものではないことがわかる。そして、これらの機能性表示を裏付けるために、食品関連事業者は関与成分や定量などのエビデンスを提出し、審査をクリアして初めて「機能性表示食品」とうたうことができるという。

実際に機能性表示食品が店頭に並び、効果・効能がより分かりやすく示された際、消費者は何を選ぶのか。そして、何が選ばれなくなるのか……。今後、機能性表示制度がスムーズに運用されていけば、日本の食品マーケットに、より高品質の食品が増える可能性もある。引き続き、動向に注目していきたい。