世界中のスポーツカーファンが待ち望んだニューモデル「マツダ ロードスター」が21日、ついに発売された。すでに発表されているとおり、ベースグレードにおいて1トンをきる車両重量を実現した本物のライトウェイトスポーツカーだ。

新型「ロードスター」のベースグレード「S」。車重は1トンをきり、990kgに

「ないものねだり」を実現、奇跡のライトウェイトスポーツカーに

エクステリア、ハンドリング、エンジン、どこを取っても魅力の塊といえる新型「ロードスター」だが、その真骨頂はやはり1トンを切る車重だろう。先代の最終モデル(2.0リットル5MT)は1,110kgであり、それでも現代において間違いなくライトウェイトだった。そこからさらに120kgも軽くなった990kgの新型「ロードスター」は、奇跡と呼びたいほど軽い。

同程度の排気量の現行スポーツカーの車重を見てみると、1.6リットルの「スイフトスポーツ」が1,040kg(5MT)、1.5リットルの「フィット RS」が1,050kg(6MT)。少し大きいが、2.0リットルの「86」は1,210kg(G 6MT)もある。一方、「ロードスター」の初代モデルや「86」の原型である「AE86」は900kg台前半だった。そこまでは届かなくとも、新型「ロードスター」はそれに近い車重へと原点回帰を果たしたといえる。

このところ、クルマ談義に花を咲かせるマニアが決まって口にする台詞がある。「1980年代のコンパクトで軽いスポーツカーを復活させてほしい。そんな簡単なことをなぜメーカーはしないのか?」。かつての名車の復活というのは、控えめな要求に見えるが、実際には不可能なことだ。1980年代のモデルはエミッションの面でも衝突安全性の面でも、まったく現代の基準をクリアできない。

「だからそういうところだけ現代の技術で改良して……」というのもよく聞く意見だが、それをやれば必ず重くなる。衝突安全性を上げればボディは重くなり、それでも鈍重な走りにならないようにエンジンをパワーアップすればエンジンも重くなり、それに対応できるよう足回りを強化すれば、さらに輪をかけて重くなる。これは、この数十年、スポーツカーが歩んできた歴史でもある。

結局、どう転んでも、かつてのモデルを復活させるなど「ないものねだり」無理なことなのだ。しかし、新型「ロードスター」はその無理を実現させたといえる。一体どんな魔法を使ったのか? 普通に考えれば、衝突基準を満たした上で軽量化するには、アルミやCFRPといった軽量な素材を多用すればいい。しかし、それをやると車重は軽くなっても、価格が肥大化してしまうはずだ。

新型「ロードスター」のアルミ製エンジンヘッドカバー

ボディやシャシーの補強部材に重量軽減穴を開け、溶接に影響が出ない部分まで端末部をカットするなど、徹底して軽量化された

新型「ロードスター」は、アルミの使用量がかなり増えているにもかかわらず、車両価格は車重と同じくライトウェイトなまま。開発陣は単に性能を追求しただけでなく、コスト削減にも最大限の努力を重ねたはずだ。その努力が、この現代に唯一のライトウェイトオープンカーという奇跡を生み出したといえる。