アニメ作品の実写化は、ファンにとって期待よりも不安が勝ることが多い。あの『機動警察パトレイバー』が実写化されると知った時も、そう思ったオールドファンは少なくなかっただろう。特に今回の『THE NEXT GENERATION パトレイバー』では、アニメ版から代替わりをした次世代の人物たちを据えながら、名前や立ち位置がセルフパロディーともいえる設定になっているため、過去の作品を知るファンはどうしてもその印象を引きずらざるを得ない。
しかし、そんな思惑をよそにキャストたちはシリーズ中で独自のキャラクター像を作り上げ、実写版パトレイバーの世界を描き出していった。過去の記憶に引きずられるべきでないと気付かされたのは、見ている我々の方だったのかもしれない。だが、そうやって過去の作品から距離を作っておきながら、シリーズの締めくくりとなる長編劇場版『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』(以下、『首都決戦』)で我々はシリーズを象徴する劇場作品『機動警察パトレイバー 2 the Movie』(以下、『パト2』)の再来を見ることになる。
筧利夫演じる特車ニ課隊長・後藤田継次は、ここを繋ぐキーパーソンとなっている。今回の映画について、そして後藤田という人物について、筧にお話をうかがった。
部隊の中の"非常勤講師"
――『TNG パトレイバー』は、シリーズ13本+長編劇場版という形で制作されました。撮影期間も長かったと思いますが。
特殊な作品でした。(撮影期間は)7カ月くらいですかね。長い間やるのは楽しかったです。
――以前、主演の真野恵里菜さんはニ課棟に毎日通って、本当に勤めてるようだと話していらっしゃいましたが、隊長の筧さんはいかがでしたか?
僕は撮影がそう毎日じゃなかったので、まあ非常勤講師のような感じだったかな。最初のうちは10日に1度、1シーン撮影するだけで、そのために他の9日間はずっとまんじりともせず過ごし、また1シーンやって……という感じだったので。その1カ月感は思い出深いかな。出勤日が多い月もありましたけど。
――そうした毎日の関係性の中でキャラクターがつくられていったことが、劇場版の"インフラ"になったと押井監督がおっしゃっていましたが、隊員たちの距離感はどんな感じでしたか?
やっぱり隊員と隊長ですからね。何考えているかわからない隊長ですし、歳も違いますし、距離感はありましたよ。近いようでいながら、最低机一台分くらいの距離感はありましたね。
――それは意識してそうしていらっしゃったのでしょうか。
そうですね……そうだと思います。もし本当に学校の先生みたいな感じなのであれば、もうちょっと一緒に居たと思いますね。
後藤田は「言っていることと考えていることが違う人」
――撮影にあたって過去のパトレイバー作品はご覧になりましたか?
『パト2』はだいぶ前にビデオで見たことがあったのですが、当時は全然わからなかったですね。パトレイバーの世界も知らないまま見たので、何もわからずに終わってしまいました。まさかその実写版で自分が隊長の役をやることになるとは思いませんでしたけど。
撮影前には原作のコミックも読んだし、パトレイバーの1・2も含めて、押井監督の作品は軒並み見ました。(『パト2』は)改めて見返しても、やっぱり分からなかったかな(笑)。今回の実写版を自分で見て、やっと何かわかったような気がしています。