"神々が棲む島"とも称されているインドネシア・バリ島。しかし、そんなバリ島に悪霊や暗黒の神が闊歩する1日があることをご存知だろうか。そしてその翌日は一転して静寂に包まれる。そんな神秘なるバリ・ヒンドゥー教最大のお祭り「ニュピ」とその前夜祭「オゴオゴ祭り」を体験してみた。
年に一度の大掃除に楽隊も
ニュピはバリ・ヒンズー教の暦「サカ暦」にて新年に当たる日で、今年で1937年目となる。ニュピを迎えるために、各村は年に一度の大掃除ならぬ大切な儀式が催される。
各寺院の御神体を海岸や川に送り浄化したり、大自然の恩恵に感謝するお供えを捧げてお祈りをしたり。また、陰陽を模した白黒の布を巻くほか正装した村人が、バリ島の伝統音楽ガムランの楽隊を率いて練り歩く。その華やかさは、まさに盆と正月が一緒に来ているようなにぎわいだ。
3m級の神々の中にはちょっと陽気なものも
そして、この大掃除は冥界でも行われる。ニュピの前日は「ムルプ」という月が隠れる暗月の日。その日に冥界の神々も大掃除をし、悪霊と暗黒の神「カロ」が人間界の地上に這(は)い出してくると言われているのだ。そのため、地上では悪霊退治の祭り「オゴオゴ祭り」が始まる。
この悪霊退治のクライマックスは夜にやってくる。悪霊や鬼に似せたハリボテ人形「オゴオゴ」を乗せた山車を村人たちが引き回し、街中を練り歩く。ハリボテというのでゆるキャラ感を期待していたのだが、これがかなりの精巧さ。街の中心部では高さ3mくらいはありそうな本格的な人形もあり、まるでリアル「進撃の巨人」なのである。
オゴオゴには男女の性別もなく、人型もあれば怪獣、ヒンドゥーの神、最近ではサーフィンなど現代のものを取り入れたものなどまで何でもあり。強面ではあるもののどこか愛らしさや人間らしさを感じるのは、南の島ならではかもしれない。
各村単位で練り歩いているので、小さな村では子ども山車もあり微笑ましい。街に漂う悪霊がオゴオゴを仲間だと思って中に入リ込む。そのオゴオゴは最期に燃やされ、本来の姿である神へと転化するのだという。一方、オゴオゴの中には御供えされず魂が入っていないゆえに、"ただの人形"と認識されてニュピが終えても燃やされず、そのまま展示されているものもある。
並行するガムラン隊の音楽と相まって、厳かな雰囲気と子供たちの楽しそうなお祭りの高揚感で新年を迎える準備は万端だ。
そして翌日、夜明け前からニュピが始まる。この1日は電気も火も使わず、そして外出禁止に仕事も禁止。殺生も禁止。店も主婦も休業。空港も閉鎖。テレビ放映も休止。そう、全ての活動が休止なのだ。
これは外国人旅行者にも適用され、非常事態を除き、滞在中のホテルからの外出を制限されることとなる。「せっかくバリ島に来たのに遊べないのか……」と思ってしまうかもしれないが、ニュピだからこその楽しみ・味わいはいろいろある。そんなニュピを120%楽しむ5つの方法を紹介しよう。