各作品のひと言コメントと採点(3点満点)
『SAKURA ~事件を聞く女』月曜20時~ TBS系
出演者:仲間由紀恵、佐藤隆太、高島礼子ほか
寸評:骨太な良作を連発しながら低視聴率が続いていた同枠に、仲間を起用して方向転換。おかっぱ頭の苦情処理係、DJ、コスプレ潜入捜査官と仲間をフル活用する“80年代風アイドルドラマ”に変わっていた。「声が聞こえる」という設定も、毎度の決めゼリフも、アクションシーンも含め全てを軽いトーンでまとめたのは疑問。刑事ドラマを作りすぎて感覚がマヒしたのか?
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】
『信長協奏曲』 月曜21時~ フジテレビ系
出演者:小栗旬、柴咲コウ、山田孝之ほか
寸評:「歴史を大胆にアレンジし、茶化しながら、結局は史実通り進んでいく
物語は、エンタメ性十分。現代人がベースの新・信長像も、新鮮味が感じられた。ただ、柳楽優弥や西田敏行らを各1話で使い切ったせいか、後半はややペースダウン。文句なしの良作だけに、最終回が浅井討伐で終了という映画ありきの結末は残念。山田の秀吉はもっと魅力を引き出せたはず。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆☆】
『すべてがFになる』 火曜21時~ フジテレビ系
出演者:武井咲、綾野剛、吉田鋼太郎ほか
寸評:1話完結の刑事ドラマばかりの中で、果敢に2話完結にトライ。その分、事件の背景や伏線がしっかり描かれると思いきや、サスペンスのシリアスさは薄く、時間を追うごとに高まるドキドキ感も微妙……。トリックも犯行動機もあいまいで、あえて“2話またぎ”にした効果は感じられなかった。真賀田四季を含む三役を演じた早見あかりは、スター路線に乗ったか。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】
『素敵な選TAXI』 火曜22時~ フジテレビ系
出演者:竹野内豊、バカリズム、南沢奈央ほか
寸評:かつてなら深夜ドラマでしか考えられなかったようなユルめのコンセプトとストーリー。シンプルな設定とテンポのいい展開で見やすいことこの上ないが、その分カタルシスも少なめ。もっと冒険してもいい気もするが、脚本のバカリズムに合わせたのか、牧歌的な世界観に徹していた。竹野内が新境地を見せた上に、脚本の拡張性も問題なく、続編の可能性は十分。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】
『女はそれを許さない』 火曜22時~ TBS系
出演者:深田恭子、寺島しのぶ、上川隆也ほか
寸評:同枠らしさを打ち出すために、タイトル通り女性目線に完全特化。キュートで無垢な深田と、クールで強い寺島のコンビは期待通りのいいコンビに。法廷シーンからファッションまできっちり楽しませてくれた。婚活詐欺や痴漢、ストーカー、ママカーストなどの事件はタイムリーで、視聴者満足度も上々。解決への流れにも、「ひとひねり入れよう」という意欲が見えた。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
『さよなら私』 火曜22時~ NHK
出演者:永作博美、石田ゆり子、藤木直人ほか
寸評:「今さら入れ替わりモノ?」という設定こそ厳しいものの、それ以外はシビアにリアリティを追求。結婚、育児、仕事、友情などアラフォーが抱える等身大の心境を丁寧に描いていた。ラスト前にあっさり入れ替わりが終了し、穏やかなフィナーレにつなげたのは岡田惠和脚本らしい。変則的な1人2役を演じた永作と石田の熱演が光ったほか、脇役の存在感もバッチリ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
『きょうは会社休みます。』 水曜22時~ 日本テレビ系
出演者:綾瀬はるか、福士蒼汰、玉木宏ほか
寸評:「少女マンガ的」「女の妄想ドラマ」と揶揄する声もあるが、それもドラマの貴重な1ジャンル。絶滅気味のラブストーリーを真っ向から扱い、最後まで人気を保ったことは快挙に近い。綾瀬は干物女との差別化ができていたし、ホストのような福士と玉木の振る舞いもハマっていた。田口淳之介や仲里依紗らの若手脇役もきっちり役割をこなし、ラストは見事な着地。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】
『ファーストクラス』 水曜22時~ フジテレビ系
出演者:沢尻エリカ、木村佳乃、夏木マリほか
寸評:舞台をファッションブランドに変えて、ビジュアルの華やかさ、キャストの質量ともにスケールアップを目指したが、視聴者は整理ができず混乱。心の声は作り込みすぎて響かず、マウンティングランキングは誰が何位なのか全く分からなかった。初回から足の引っ張り合いばかりの展開もマイナス材料か。「悪女の沢尻を見たいのではない」という視聴者心理が明白に。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆】
『科捜研の女』 木曜20時~ テレビ朝日系
出演者:沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美ほか
寸評:15年目も安心して見られる丁寧な作り。仕事ぶりも見た目も沢口演じるマリコの魅力が全く色あせないのはスゴイ。コンビを組む土門と、対立する藤倉もそんなヒロインを確実に引き立てている。最終回でマリコが襲われてヒヤッとさせたのもご愛きょう。命の恩人である野村宏伸の交際をあっさり断ったのも遊び心の表れで、年末スペシャルも含め、貫録の仕上がり。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】
『ぼんくら』 木曜20時~ NHK
出演者:岸谷五朗、奥貫薫、松坂慶子ほか
寸評:「あれ、これで終わり?」と思わせる肩すかしの結末も多かったが、タイトルが物語るように、それが今作のイメージ。大事件や衝撃的な過去などがないため、悪く言えばメリハリがなく、良く言えば安心して見られる。そんな長屋モノ独特の世界観と、岸谷&子役たちが大活躍する展開は、時代劇ファンのニーズにバッチリ応えたもので、NHKの存在意義と言えそう。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
『ママとパパが生きる理由。』 木曜21時~ TBS系
出演者:吹石一恵、青木崇高、田中哲司ほか
寸評:「がんで余命宣告を受けた夫婦」という重いテーマを吹石と青木がいつも以上の熱演。闘病のつらさよりも家族愛をしっかり描くなど、実話だけにスタッフの誠実な姿勢も垣間見えた。裏番組の「失敗しない女医」のエンタメ性とは正反対のスタンスでリアリティ重視。ただ闘病中の視聴者を考えると、このレベルの描写がギリギリか。全5話こその内容とも言える。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆☆ 総合☆☆】
『ドクターX~外科医・大門未知子』 木曜21時~ テレビ朝日系
出演者:米倉涼子、遠藤憲一、北大路欣也ほか
寸評:登場人物の構図もストーリーもシンプルで分かりやすく、「権力に屈しない」スタンスで爽快感を重視。今回も米倉の脇を固めるレギュラーやゲストに大物俳優をそろえ、エンタメ性に焦点を絞っていた。医療ロボットとの比較、岩下志麻の看護師連合会長、菜々緒との美脚対決、師匠の手術などトピックの入れ方も上手。ここまでヒットすると、続編がない方が不思議。
採点:【脚本☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆☆☆ 総合☆☆】
『ディア・シスター』 木曜22時~ フジテレビ系
出演者:石原さとみ、松下奈緒、岩田剛典ほか
寸評:姉妹の性格と行動につじつまの合わないところが多く、病気、妊娠、水商売の扱いにも軽さが見える。何よりそれぞれが「なぜこの人を好きなのか?」を描いていないため、視聴者が感情移入しにくい脚本だった。そもそもテーマであるはずの姉妹愛も感じられず。多くの人が感じたように、「石原を愛でるドラマ」演出が目立ち、松下をはじめ他のキャストは損な役回りに。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆☆ 総合☆】
『新・刑事 吉永誠一』 金曜20時~ テレビ東京系
出演者:船越英一郎、中山忍、小泉孝太郎ほか
寸評:ドラマのどこをどう切り取っても船越の人情キャラ。これを名演と感じるか、過剰と感じるかで見方が変わる。ただ、笑い、怒り、泣き、詫びる“ひと昔前の刑事”を楽しむドラマとして確立。事件のバリエーションには飽きられないための工夫が見えるが、新たなファンを開拓できるほどの目新しさはない。アクセントになっていた新人キャリア警視九条の殉職は残念。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 視聴率☆ 総合☆】
『Nのために』 金曜22時~ TBS系
出演者:榮倉奈々、窪田正孝、賀来賢人ほか
寸評:前作に続いて意欲的なミステリーであり、クライマックスは連ドラらしい盛り上がりがあった。榮倉を囲む窪田、賀来、小出恵介に3様の魅力を与え、間延びさせなかったのも好印象。それぞれの切なさを繊細に演じ分けさせる演出や、島と都会のコントラストを見せる映像も光っていた。同枠は『家族狩り』に続いて攻めの姿勢を見せているだけに数字が欲しい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】
『黒服物語』 金曜23時15時~ テレビ朝日系
出演者:中島健人、佐々木希、柏木由紀ほか
寸評:ナイトドラマらしいセクシーな描写は少なく、キャバクラ業界のリアリティも抑えめで、目玉は若手キャストの体当たり演技のみ。特に中島と柏木はアイドルの殻を破ろうという必死さが伝わってきた。劇画チックな演出も、最後にキャバ嬢の全国デモを持ち出した脚本も、金曜夜にツッコミながら見るドラマとしてはいい塩梅。「笑いを入れない」姿勢も一貫していた。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 視聴率☆☆ 総合☆】
『玉川区役所 OF THE DEAD』 金曜24時12時~ テレビ東京系
出演者:林遣都、広瀬アリス、金子ノブアキほか
寸評:「怖くないゾンビ」という振り切ったテーマで不安視されたが、そこはハズレなしの『ドラマ24』。視聴者が「意味なんてなくてもいい」と思えるシュールな世界観でジワジワやみつきに。ヒロインの凛がゾンビになってしまう結末も含め、ホラー色をやわらげる工夫が随所に見られた。特別福祉課はゾンビが似合いそうな顔ばかりで、キャスティングにもこだわりが。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆】
『地獄先生ぬ~べ~』 土曜21時~ 日本テレビ系
出演者:丸山隆平、桐谷美玲、速水もこみちほか
寸評:やはり高校生と妖怪はミスマッチであり、流行を意識した演出は子ども向けだが、裏を返せばレア感たっぷり。明石家さんまをゲストに迎えるなど「何でもアリ」の姿勢も、むしろ「潔い」という印象に変わった。何よりムチャぶりとしか言えない設定を演じ切った丸山の器用さは特筆モノ。もっと早い時間帯に、幼い子どもと一緒に見られるドラマがあってもいい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 視聴率☆☆ 総合☆】
『ごめんね青春!』 日曜21時~ TBS系
出演者:錦戸亮、満島ひかり、風間杜夫ほか
寸評:宮藤官九郎脚本らしい小ネタにとらわれがちだが、背景にある物語は爽やかな学園ドラマそのもの。「生徒の暗い問題を一切描かない」という挑戦も称賛すべきであり、フィクションとノンフィクションの間をうまく突いていた。現代の若者には、そんな甘酸っぱさやほろ苦さが伝わりにくく視聴率は低迷したが、同世代の生徒役はブレイク必至の逸材ぞろいだった。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 視聴率☆ 総合☆☆☆】
■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。