生理前に、女性ホルモンの影響で起こるPMS(生理前症候群)の症状のひとつに「乳房が張る」というものがあります。人によっては、胸が大きくなったように感じられるかもしれませんね。なぜ生理前には、子宮とは離れた場所にある胸が、張ったり痛んだりするのでしょうか?
生理前には、ホルモンの影響で乳腺が変化
乳房は、主に脂肪と、母乳をつくり出す「乳腺」からできています。排卵から生理が始まるまでの黄体期に黄体ホルモンが多く分泌されると、その影響で乳腺の組織が変化するため、乳房が張ったり痛みが生じたりします。張りがあると少し胸が大きく感じますが、服や下着が入らなくなるほど大きくなることはありません。生理が始まる頃には黄体ホルモンの分泌が減るため、乳房の張りや痛みもおさまることが多いようです。
痛みがひどい人は受診が必要ですが、「そこまで痛くはないけれど気になる」という場合は、リラックスする、軽い運動で血行をよくするなど、PMSを改善するセルフケアをしてみてください。張っているときに胸を締めつけると余計つらいので、なるべくラクな服装で過ごすのがおすすめ。ワイヤーのないカップ付きインナーなど、胸への負担の少ない下着を持っておくと便利ですよ。
セルフケアについては、記事「生理前のイライラ、どうやって乗り切る? - 糖分の取りすぎは症状悪化の一因」で解説しています。
妊娠や病気で胸が大きくなる場合も
胸が張る、大きくなるという症状は、生理前だけに起こるものではありません。妊娠している場合にも、生理前と同様に胸が張ることがよくあります。また授乳期には、乳腺が発達し、より乳房が大きくなります。
・乳腺症や乳がん
乳腺症や乳がんといった病気が、胸の張りや痛みを引き起こしていることもあります。乳腺症は、ホルモンバランスの乱れなどによって乳房に良性のしこりができる病気。乳腺症自体はあまり心配のない病気ですが、しこりは悪性の腫瘍である乳がんの可能性もあるので、生理でも妊娠でもないのに胸の張りや痛みが気になる場合は必ず乳腺外来などで専門医の診察を受けましょう。
・乳腺炎
また授乳期に乳房が張ったり痛んだりする場合は、乳腺炎の可能性が大。乳腺炎は、産後、母乳が乳腺にたまって炎症が起こる病気。授乳中の乳腺炎については、かかりつけの産婦人科や助産院で相談できます。
乳房は、女性を魅力的に見せるためだけでなく、産後には母乳を出すという役割を果たす部位です。それゆえ、子宮と同様に女性ホルモンの影響を受けやすい面もあるのです。普段より張っている、大きく感じるなど、小さな変化に敏感になることは、病気やトラブルを早く発見するためにも非常に大切です。日ごろから胸のチェックは欠かさずに!
※画像は本文と関係ありません
善方裕美 医師
日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。
主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など