陣痛の仕組みを知ろう

陣痛の仕組みをきちんと理解しよう

「鼻からスイカを出すくらい痛い」などと例えられる陣痛。とにかく「痛かった」、「大変だった」という体験談ばかり聞くと不安が募りますよね。しかし一方では「思ったほど痛くなかった」なんて言う人もいます。陣痛の痛みって、実際にはどんなものなのでしょうか。そもそも一体なぜ、お産には陣痛という痛みが付きものなのでしょうか。

陣痛は、赤ちゃんを押し出すための子宮の収縮

まずは陣痛が起こる仕組みから見てみましょう。お産が近づくと、赤ちゃんを外に押し出すために子宮は収縮を始めます。主にこの子宮の収縮が「陣痛」ですが、子宮の収縮による刺激に、子宮口が押し広げられる刺激も加わって神経から脳に伝わり、痛みになると考えられます。

「陣痛発来」とは10分間隔の子宮収縮が1時間以上続くことを言います。陣痛がいつ始まり、それがどのように進んでいくかは予想できず、子宮口の開き具合や赤ちゃんのサイズ、初産か経産かなどは陣痛発来の時期とまったく関係ありません。しかし、「陣痛が来てから生まれるまでの分娩所要時間」は、赤ちゃんが大きいほど、子宮口が固いほど、そして初産の方が時間がかかることが多いです。

陣痛のときにお母さんの身体に出ているホルモンには「プロスタグランディン」や「オキシトシン」というものがあります。このホルモンが子宮を収縮させ、子宮頚部(子宮の首の部分)を柔らかくします。子宮頸部が無理やり押し広げられるのではなく、ホルモンによってとても柔らかく変化するからこそ、赤ちゃんが生まれてこられるのです。

痛みの度合いや感じ方は人それぞれ

陣痛の痛みには個人差があると医師は指摘する

痛みは主観的な感覚なので感じ方は人それぞれ。子宮口が大きく開くにつれて痛みは強くなり、痛みを感じる範囲も広がってきますが、このときの痛みを「ものすごく強い生理痛」と表現する人もいれば「腰がくだけそうな痛み」と言う人もいます。たしかに、3kg前後もある赤ちゃんが体の中を突き進んでくるのですから、そんなふうに感じるのももっともかもしれませんね。

子宮口が完全に開いて、赤ちゃんが出てくる間際になると、外陰部から肛門にかけて焼けるような激しい痛みを感じる人が多いようです。ただこのころになると、痛みをまったく感じなくなる人もいます。これは、脳内から出るホルモンが麻酔作用を持つためと言われています。

母体には産むためのチカラ(ホルモンと身体の変化)が備わっています

陣痛ホルモンの「オキシトシン」がしっかり脳から出てくると、お産がスムーズに進行します。オキシトシンは子宮を収縮させるだけではなく愛情ホルモンとして赤ちゃんやパパへのいとおしさが増し、脳内の幸せホルモン「セロトニン」を高める作用もあります。

産道である膣を赤ちゃんの頭が広げる刺激が脳に伝わると麻酔作用があるリラキシンというホルモンが分泌され、産道は柔らかく変化し痛みのコントロールができるようになると言われます。このように、産むための陣痛ホルモンは母体を守るホルモンでもあるのです。オキシトシンはリラックスによって有効に分泌されます。深い呼吸をすることで全身の緊張をとり、よいホルモン環境を作ることこそ、安産への有効手段です。

※画像は本文と関係ありません

善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など