12月14日に投開票が行われる衆院議員選挙を前に、公示日の前日である1日、与野党各党の8党首が日本記者クラブ主催の党首討論会に臨み、安倍晋三首相(自民党総裁)の経済政策、アベノミクスに対する評価を巡り、各々の立場から論戦を繰り広げました。

出席者(写真左から)生活の党 小沢一郎代表、次世代の党 平沼赳夫党首、維新の党 江田憲司共同代表、自民党 安倍晋三総裁、民主党 海江田万里代表、公明党 山口那津男代表、共産党 志位和夫委員長、社民党 吉田忠智党首

安倍首相は、

『アベノミクスの一番の目的は「デフレ脱却」にあるとずっと主張してきた。実際、政権運営の2年間で雇用が改善し、給与も上がり、15年続いたデフレの時期から脱却できるチャンスをつかんだ。デフレの下、行き過ぎた円高だった時代には、例えば東芝は4つの工場を閉鎖する状態にまで陥った。

しかし、円高を脱した今、その東芝が三重に工場を建設するようになった。また、国内企業の倒産件数も減っている。もちろん、中小企業などへの波及はまだ見えないという点では道半ばだ。しかし、この道しかないとの確信のもとに全力で前に進んでいく』

と主張しました。

一方、民主党の海江田代表は、

『円安による物価高で安倍政権が続けば格差が拡大する。安倍首相は7-9月期のGDP(経済成長率)は消費増税直後の4-9月期と比べてV字回復すると言ったのに、実際には2期連続のマイナス成長だった』

と反論、

共産党の志位委員長は、

『今は消費税8%を強行した増税不況だ』

と批判しました。

また、社民党の吉田党首は、

『企業を活動しやすくするアベノミクスによる生活破壊を許さない』、

生活の党の小沢代表も、

『自由競争、市場経済を優先するアベノミクスとは基本的に異なる』

と対峙する姿勢を示しました。

一方、維新の党の江田共同代表は、

『増税は景気回復してから行うべきものだ。せっかくアクセルを踏んでいるのに、同時にブレーキを踏むようなもの。アベノミクスの第2の矢である財政出動についても、まずは歳出削減から臨むべきだ。25兆円の公務員の人件費を2割削減すれば5兆円を捻出できる。また、大型補正予算を組んで、中身が従来型の公共事業では意味がない。まずは経済成長こそが財政再建への近道であり、増税をする前に経済を成長させることを優先すべきだ』

と主張しました。

これに対し、安倍首相は、

『雇用や賃金の改善が続けば2017年4月に、消費税率を10%へと引き上げられる環境が作れる。雇用改善の面でも、7-9月期は正規雇用者が10万人(前年同期比)増加している。2017年4月に実施する予定の消費増税は今回のような2期連続マイナス成長だから見送りするという判断はしない。ただ、リーマン・ショックのように世界経済が収縮した場合には、国家的に対応し、再増税の先送りもあり得る』

と述べ、公明党の山口代表は、

『10%に引き上げる際には低所得者対策として軽減税率の導入を目指す。消費者の負担感が和らぐことを実感してもらう』

と強調しました。

消費増税実施の判断材料となる雇用の改善と賃金上昇について、

『では、いつ実質賃金が上がるのか?』

という民主党の海江田代表からの問いに対し、安倍首相は、

『物価高よりも賃金上昇が遅れているのは実感している。ただ、国民の総雇用者所得は6月から上昇している。賃金上昇については、アベノミクスの効果が出始めてから賃上げのチャンスは1回しかなかった。これからも経団連の会長とも対話をし、来年、再来年も賃上げをする。

アベノミクスの第3の矢である成長戦略により、企業の生産性を高め、雇用の改善、賃金上昇につなげ好循環を生む。雇用を増やし給料を増やす。成長戦略を進めるためには様々な岩盤規制があるが、小泉元首相のようにその岩盤を突破するのではなく、説得しながら、了解を得ながら進めていきたい』

と、今後のアベノミクスの道筋を示しました。

執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)

経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。