"ガースー"とヤンキーの師弟関係

インタビューの締めくくりとして、「これからどんな仕事をやりたいか?」と尋ねてみたら、またも"ガースー"らしい爆笑エピソードが飛び出した。最初こそ、「今までの経験則に全く照らし合わせることができないものをやりたいですね。それはテレビ番組かもしれないし、映像ではないかもしれないし、アウトプットするものは何でもいいんです。自分がやったことがないものをやるのは楽しいじゃないですか」とマジメに話したものの、一気にギアチェンジ。

「僕は40歳過ぎてからバイクの中型と大型免許を取りに行ったんですけど、そのころはもうチーフプロデューサーとかをやってたから、人様に教えることはあっても、教えてもらうことがなかったんですよ。だから元白バイ隊員の教官から「菅さん、コツはこうなんだよ」と言われたとき、ものすごく新鮮で楽しかったんです。ただその一方で、バイクの免許を取りに来るヤツって、16~17でこんな(とんがった)頭の子たちがいっぱいいるでしょ。その子たちから『菅ちゃんじゃない?』って言われて、僕がリーダーになりました。『何か買ってきましょうか?』と聞かれて『じゃあコーヒー買ってこい』と言ったりして。あと、『体操はケガしないようにやってくれてるんだからちゃんとやれよ』と言ったときは、ウチのクラスだけこんな(とんがった)頭をしたヤツらが物凄くキビキビ体操したので、教官がテストを甘くしてくれました」と話し、取材スタッフを爆笑させた。

すかさず、「そういうヤンキーを更生させる番組を作ってみたら?」と尋ねてみたら、「う~ん……(あいつらは)面倒くさいですからね」と苦笑い。こちらとしては、2012年大みそかの『ガースー法人 聖(セント)黒光り学園』のイメージで、"ガースー"の先生役を見て見たい気もする。

還暦のダウンタウンにケツバット!?

菅賢治氏の著書『笑う仕事術』(ワニブックス 発売中 896円)

"ガースー"は、インタビューの残り1分前まで、退社後に伊勢神宮や出雲大社に行ったときの話をしながら、「退社してから、いろいろなところへ実際に行ってみてから、また本読んだりしています。読書が好きというわけではないけど、知識に飢えているんですよ。だから、話したり読んだりしているときに知らないワードが出てくると、その日はほとんど寝られません。自分自身納得できて翌日に最初から最後まで説明できるようになるまで寝ないんですよ」と熱っぽく話してくれた。

"ガースー"の頭は、テレビ業界への憧れを抱くきっかけとなった、「『シャボン玉ホリデー』を見ていた中学生のころから変わっていない」という。還暦間近になっても原点を失っていない"ガースー"は、これからも"くだらない"バラエティ番組を作り続けてくれるだろう。たとえば、今年51歳のダウンタウンが還暦を迎えたら……赤いちゃんちゃんこを着た2人が『笑いけ』でケツをぶん殴られているかもしれない。"ガースー"自身、「そういうダウンタウンの姿を楽しみにしている」ようだ。

ちなみに、「自分はもう出たくない」とのことだが、われわれ視聴者としてはタレントとして使われる側の"ガースー"も見たい気がする。なぜなら、「面白い」と感じたことなら、嫌でも絶対にやってくれる人だから。

■菅賢治(すが けんじ)
1954年11月27日生まれ。長崎県佐世保市出身。日本大学藝術学部卒業後、日本テレビエンタープライズ(現・日テレアックスオン)のアシスタントディレクターとなる。1988年に日本テレビに入社。プロデューサー・ディレクターとして、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』『恋のから騒ぎ』『おしゃれカンケイ』『躍る! さんま御殿!!』『笑ってはいけない』シリーズなど数々の大ヒット番組を手がける。2007年以降は制作局次長、制作局総務兼バラエティーセンター長、制作局長代理兼チーフプロデューサーなどを歴任。2014年3月に日本テレビを退職。現在は「BRAIN BROTHERS GAASU ENTERTAINMENT」のプロデューサーとして活躍中。
聞き手・文=木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。