2012年2月、ある大学生によるWebサイトがネットを騒然とさせた。
サイト名は「世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ」

「世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ」

趣旨は、いち就活生が企業に逆アプローチをするという極シンプルなものなのだが、内容がぶっ飛んでいる。どう見ても「即戦力」には見えない経歴の持ち主である菊池良氏が、就活生とは思えない"上から目線"で人事担当者に語りかけているのだ。半ば捨て身とも思われる同サイトはSNSで拡散され、多数のメディアに掲載。ついにはドラマ化までされたのであった。

「全世界の人事担当者に朗報」(同サイトより)

画一化する就職活動に一石を投じた、と言っても過言ではない菊池氏。4月からはWeb制作会社 LIGで働いており、8月には初の著書『世界一即戦力な男 - 引きこもり・非モテ青年が音速で優良企業から内定をゲットした話』(フォレスト出版/2014年/税別1,400円)を出している。

就職活動や仕事を応援するキャリアチャンネルは、菊池氏へのインタビューを敢行。当時の思い出や現在の仕事についてお話を伺った。

振り切ったからこそ「世界一即戦力な男」は誕生した

--就活サイト「世界一即戦力な男」を作ったきっかけを教えてください

菊池氏「4年遅れで大学に入学したので、もともと普通の就活では内定を取れないだろうと思っていたんです。就職活動が本格化する前にどうしようかと考えていたら、『私と面接する会社を募集します』という近藤佑子さんのサイトを見つけました。それを見て、『こちらからアピールすればいいのか!』とインスピレーションを受けましたね。二郎インスパイアならぬ、佑子インスパイアです」

--なぜ「即戦力」をキーワードにしたのでしょうか?

菊池氏「『即戦力』って企業が人を採用するときに重視する要素の1つじゃないですか。それで前面に押し出しました」

--「新卒採用担当のキミへ」というキャッチコピーはどのようにして生まれたんでしょうか?

菊池氏「僕の経歴だと、真面目にやってもしょうがないと思って。『普通の就職活動』の型にはまれないのであれば、いっそのことどんどん壊してやろうと振り切った結果ですね」

菊池良
1987年9月、東京都生まれ。「即戦力」で検索すると、全世界で1番目にヒットする男。1998年左手骨折、2001年左手骨折(2回目)。2003年に八王子市内の私立高校調理科に入学するも、9月で中退する。その後大学入学資格検定を取得し、6年ほど引きこもり活動に従事する。2010年東洋大学文学部へ入学。2012年2月に就職活動サイト「世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ」を公開。最終的にウェブデザインなどを行うLIGに内定し、2014年4月に入社。「即戦力な新入社員」として、会社に貢献する毎日をおくっている。

--普段の菊池さんもサイト上のように"上から目線"の性格なんですか?

菊池氏「そうですね。普段は大体人を見下して生きています。9割方、1日のうち23時間ぐらいは人を見下しているんじゃないでしょうか。あなたのことも見下していますよ」

--なるほど

面接を受けた企業、最近の就活について語る

--サイトを通して連絡をしてきたのはどのような会社ですか?

菊池氏「今働いているLIGのような、Web制作やソーシャルゲームの会社が大半でした。ちなみにLIGは反応が早くて、2番目に連絡が来ました」

--ちなみに1番は?

菊池氏「マイクロソフトです。Googleやこの世を創った神様からも来たんですよ。ちなみにGoogleの面接オファーは、Yahooメールから送られてきました」

--それ明らかに全部偽物じゃないですか

菊池氏「どうでしょうね」

--最近の就職活動についてどのようにお考えですか?

菊池氏「戦える人はそのやり方で戦えばいいと思います。ただし、向いていない人は早々に切り替える方が良いのではないでしょうか」

--たくさん面接を受けたそうですが、面接で緊張してしまう人にアドバイスはありますか?

菊池氏「コミュニケーションを楽しむことです。あと『こいつはちゃんとした会話ができないんだ』っていう雰囲気をあえて出しておく。『真面目な対応もできそうだな』って思われちゃうと、向こうもその気で来るじゃないですか。だから、もう最初から相手の期待を崩しておくんです」

--すごい奥の手ですね

菊池氏「開口一番『今日は緊張してます~』って言っておけば、『それならほぐしてやろうか』っていう気持ちになるかもしれないじゃないですか。あとは当たる面接官の運ですね」

「即戦力」サイト最下段にある「菊池良と面接する」ボタン。思わず面接したくなる