ピンホール検査をクリアしたものはクルクルと巻き上げられ、使用前に見かけるおなじみの形状になる。そして潤滑剤が塗布された後、機械で個包装される。この工程で重量チェッカーにかけられ、異物が入っていたり、中身が抜け落ちていたりする物は自動的に排除される仕組みになっている。

特殊なブリスターパックの秘密

また、同商品はスタンダードな四角形のパッケージで個々のコンドームを包装していない。まるでポーションミルクのような特殊な「ブリスターパック」を用いているが、ここにも安全上の秘密が隠されていた。「従来のタイプですと、袋を破る際に爪で皮膜を傷つけてしまう可能性がありました。ブリスターパックはそのリスクを防ぐことができますし、裏表がわかりやすいというメリットもあります」。

安全性を考慮したブリスターパック

この他にも、コンドームに一定量の水を流し入れて水漏れがないか調べたり、どの程度までの膨張に耐えられるかを確認したりといった検査も実施している。また、全工程で定期的に抜き取りチェックを行うことで、常に安全性の担保に努める。こうして厳しい検査を経た「サガミオリジナル001」は、同工場で一日に6,000箱(1箱5個入り)生産されている。

外箱にシールが貼られていく。この後、ダンボールに梱包されて出荷となる

さらなる薄さ実現と評価向上を目標に

日本におけるコンドームのトレンドは、時代によって変わってきた。「コンドームが日用品となってきた1990年前後になると、ニーズが細分化してきまして、『潤滑剤がたっぷり使われたもの』など、個々のニーズに合った物が売れるようになってきました。その後、薄いものが選ばれるようになってきました」と樋沢さんは話す。

同社は1998年、コンドームブランド「サガミオリジナル」から0.03ミリの薄さのタイプを発売。2005年に0.02ミリの販売を開始し、そして今回、薄さ0.01ミリ(18ミクロン)の実現に至った。

今回、「サガミオリジナル001」を製造するにあたり、機械を増設するなど新たに10億円を投資。まずは国内での販売に専念し、販売目標は年間18万個を掲げる。半年ほど国内での売り上げを見た後、来年以降に他の国への出荷を予定しているという。

既に同社は世界50か国以上でコンドームを販売しているが、特に今後主要なターゲットとなりそうなのが、日本同様に薄さを求める東南アジアだ。

「さらなる海外展開に向けては、東南アジア全体でのブランディングが大事になってくると思います。今は各国の顧客と話し合いをし、その国のニーズに合ったやり方をしていますが、今後は薄さが持ち味の『サガミオリジナル』のブランドを今以上に浸透させたいです。高価格品としての日本製のコンドームで、いかに他の国の物と勝負していくかということにもなりますが、中国やインドの富裕層が購入してくれるという傾向ができつつあるので、そこを強化していきたいですね」。