――(笑)。だからこそ『Gのレコンギスタ』を子供向けに作ったということになるのでしょうか

そうです。徹底的に子供に向けてつくるということを覚悟しました。そうすると、今言ったようなウソは絶対に書けない、というところにぶち当たる。そのご都合主義の部分を物語の構造としてつくるための『G-レコ』です。当然、アニメだから「物語に描かれている画は全部ウソなんですか?」って言われれば「うん、ウソなんだよ」と言う。だってアニメだし、漫画だからねって。そこで「だったらそれは子供を舐めているんじゃないの?」とくれば、それは違う。今言ったでしょ。アニメとか漫画だからなのよ。『ハリー・ポッター』が、杖にまたがって飛ぶのは、本気だと思ってないでしょ? だけど観て楽しめるでしょ? 物語をつくる、アニメをつくる、映画をつくる、漫画をつくるということはこれができるんです。

だけど、その直下でリアルに持ってくるのはアホのすることです(笑)。ただ『G-レコ』なら、「問題意識を並べているからこういう話、構造になっているんだな」ということをおそらく勘の良い10代、自分でものを考えるようになってきた子は、絶対に考えるはずです。100人に1人って言いたいけど、100人に2、3人ひっかかる子がいると思う。そういう子供が成長して社会の中堅を担って指導者になってくれれば、原発をどう収束させていくかという手法だって編み出せるかもしれない。

少なくとも今の40代、50代はダメ。政治家の動きをみてはっきりわかるでしょう? 我々の前で醜態をさらけ出した某議員を見て……え? これ、議員? って思った人は多いはずです。ああいう人にお金を出している、出していることを許してしまっている我々納税者だってアホの一員でしょう。そろそろそういうことをきちんと認めましょうよ、という話にしています。現にこうやって『G-レコ』の話をすると、こんな変な話までパパッとできちゃうから、うまくいったなと思っている部分はあります(笑)。

――そうした物語の構造の中で、シンボルとなるのが宇宙エレベーター「キャピタル・タワー」です。

キャピタル・タワーみたいな大規模な宇宙エレベーターを成立させるためには、そう簡単なことではないという話から画をつくっています。世界観をリアルにするためではない。ただ、『G-レコ』の宇宙エレベーターでは「クラウン」という車列、つまり一台のゴンドラのようなものを上げ下げしていることで、もっともらしく説得力があるように見せています。

でも、ちょっと待てよと。3万キロ~10万キロの例えばケーブルを伸ばしておいて、そこを行き来する――ということを、本当に考えたことがあるのかという問題提起にしているんです。静止衛星軌道の3万7,000キロのさらに上、現実の宇宙エレベーターのプランでいうと、カウンターウェイトを置かなくちゃいけない距離が10万キロにあります。その距離を実感するために、直径30cmの地球儀を持ってきて、地球儀の直径から換算して……10万キロまでの糸をひいてみるわけ。どのくらいの距離になるかわかります? やってみてくださいね?

――正直、頭が痛くなります……。

(笑)。普通の糸で換算した長さを伸ばしただけでも、ピンと張ることはかなり難しい。それなら! それをできると言い切る宇宙エレベーターの研究者には、やってもらおうじゃないって(笑)。できたら御の字。できないなら問題点も指摘できる。何より、たった1本のケーブルをその高さまで伸ばすということは、その質量とか建設費を考えたら膨大なものだろうというのは、見たらわかるはずだよね。本能的にできないとわかる。だけど『G-レコ』では、それがあるということにしている。それには理由があります。交通機関であれば存在しうる。交通機関なら投資額を回収することもできる。

――なるほど。

では、その回収するものが行き先にあるのか? というのが第2の問題提起です。今の宇宙には持って帰ってこられるものはないでしょ。今回の物語の前には、ガンダムの「宇宙世紀」があった。だから不幸にして、宇宙で暮らしてしまった人たちがいたわけ。その人たちの生き残りが5万人、10万人では済まないかもしれない。そこから考えていけば、その人たちがほとんど死にかけている地球を繋ぐために、たった1本残っていたかもしれないケーブルを使ってもう一度、宇宙エレベーターを再生する。この交通機関からなんとかお互いを自覚していこう、ということを始めたんじゃないのかなと想像したんです。

――つまりバイパスとしての宇宙エレベーターになる。

そういうことです。バイパスとしての宇宙エレベーター論となれば、交通機関の問題が見えるようになります。交通機関でない限りそんな大規模な投資ができるわけない。そうして運行方式やメンテナンスなどを考えた時に、地上にある鉄道網であってもJR北海道みたいな問題が起こっているわけ。1ミリや2ミリの誤差程度でさえコントロールできない。宇宙エレベーターはそういうレベルじゃないでしょう。だけど交通でいう安全、つまり一般市民が安心して乗れるっていうことを考えると、技術保全ができるシステムがない限り絶対に運行なんかできないはず。こういう話を、今の宇宙エレベーター開発者が考えているわけがないんです。