モラハラって何!?

「モラル・ハラスメント」とは

モラハラという言葉、一度は耳にしたことがあるでしょうか。モラハラとはモラル・ハラスメントの略で、フランスの精神科医マリー=フランス イルゴイエンヌによって、よく知られるようになりました。一般的には、その言葉の通り精神的な暴力を意味しています。外傷をともなう肉体的な暴力とは違って、言葉や態度によって危害が加えられるため、周囲からも、そして当事者自身からも、それが暴力だとは気づかれないことがあります。

モラル・ハラスメントは、夫婦や恋人だけではなく、学校や職場などの人間関係でもおこります。仕事のミスやテストの成績などの結果に対して、「ダメなヤツだ」「のろまだ」と人格や能力を否定する言葉を投げかけたり、嫌みを言ったり。本人のコンプレックスや家族に対して非難したり。

ですので、必ずしもモラル・ハラスメントは、夫婦や恋人だけの問題というわけではありませんが、学校や職場の人間関係が"他人"ということで抑制がきく反面、夫婦や恋人の場合、"身内"という意識も相まって、エスカレートしやすくなるということも考えられます。

夫婦や恋人の場合

たとえば、でかける準備に時間がかかるパートナーに対して、「のろまだ。なんで早く準備しないんだ」という言葉を投げかけても、ありきたりな会話としてとらえられてしまいますよね。ですが、これだってモラル・ハラスメントなんです。

エスカレートしやすくなるといいましたが、加えていうならばマインドコントロールされてしまうのかもしれません。「のろまだ。なんで早く準備しないんだ」といわれ続けることによって、被害者は「私が彼に迷惑をかけている」と、被害者なのにもかかわらず、被害者としての意識を感じさせないんです。

そして、「彼が厳しいことを言うのは、私のためをおもって」とか、「そんなダメな私を彼は受け入れてくれている」などと被害者が感じてしまうことで、モラル・ハラスメントの加害者から抜け出られなくなるんです。これはいってみれば、ドメスティック・バイオレンスと同じ構造なんです。

"自己愛的な変質者"にモラハラの傾向

では、夫婦や恋人など愛しているはずのパートナーに対して、どうしてモラル・ハラスメントをしてしまうひとがいるのでしょうか。マリー=フランス・イルゴイエンヌによれば、"自己愛的な変質者"にモラル・ハラスメントの傾向があるといいます。つまり、自分は優れていて素晴らしく特別で偉大な存在だと強く思う人に、その傾向があるというんです。

つまり、自分が絶対的に正しいという意識が、パートナーの行動のささいな失敗を許せず、批判や非難につながり相手を傷つけるんです。当然、自分に相手を傷つけている意識がないため罪悪感はありません。むしろ、パートナーに迷惑をかけられているという被害者意識があるんです。

この被害者意識は、非常に大きな問題です。というのもモラル・ハラスメントの加害者に、加害者としての意識がないため、改善ができないからなんです。自分がモラル・ハラスメントの加害者もしくは被害者としての意識があれば、その関係から抜け出すことは可能でしょう。ですが、一般的にいえば、加害者にも被害者にもその意識がありません。

周囲の友人や家族が、変だなとおもって気づいてあげたり、その関係から抜け出すよう支援してあげるということが必要になってきます。

※写真と本文は関係ありません

著者プロフィール

平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。京都大学研究員、国際日本文化研究センター講師、チュラロンコーン大学講師などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。魅力や男女の恋ゴコロに関する心理にも詳しい。現在は、生活の拠点をバンコクに移し、日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事を行う。主著は『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』『邪推するよそおい』など。