原因は危機意識の欠落

委員会は、こうした労働環境の常態化をもたらした根本的な原因は以下の3点にあると分析する。

ゼンショーホールディングス 代表取締役会長兼社長 小川賢太郎氏、ゼンショー 代表取締役社長 興津龍太郎氏

第1に指摘されたのは「人手不足による過重労働の発生と危機意識を持つ経営幹部の不在」。経営幹部は、「人手不足による現場の対応不能状態」は認識していたものの、過重労働を「全社的問題」と認識してそれに応じた具体的な取り組みは実施されていなかった。

第2は「現場の過重労働を是正できなかった組織上の問題」。ゼンショーでは取締役会も監査役もガバナンス機能を果たせていなかったという。また、「自己責任」論のもと、上から下への責任の押し付けや抱え込みが広く見られた。

第3は「経営幹部の思考・行動パターンの問題」。経営幹部は顧客満足を再優先にしていたが、従業員が会社経営にとって不可欠であるという意識がなかった。また、幹部は使命感と超人的労働時間ですき家を日本一にしたという成功体験を共有している。彼らを基準としたビジネスモデルを部下に求めた結果、過重労働などの問題が発生した。

「長時間労働禁止のルール作り」を提言

労働環境改善のため委員会が提言した施策は以下の通り。

・「一定時間以上の長時間労働の絶対的禁止のルール化とその実現のための体制準備」

具体的には、「1日あたり、1週間あたりそれぞれについて、一定時間以上の長時間労働を絶対的に禁止するルール作り」「一定時間以上の休日の矯正付与」などがあげられる。委員会は、これらのルールを絶対的なものとして、遵守の結果店舗閉鎖になっても守るべきものとすべきとしている。

・「サービス残業を防止するための施策づくり」

具体的には、「労働時間を客観的に管理するためのシステムづくり」「15分単位による労働時間管理を改善」の2点。これまでは手描きの自主申告による労働時間管理であったため、タイムカードなどで労働時間を客観的に管理し、サービス残業を改める必要があるとした。

他には「従業員を企業の重要なステークホルダーと位置づけ、その人権と生活を尊重する企業風土を築くための施策づくり」「バランスに配慮した投入労働時間の設定、運用」「労働環境の重要性に関する全社的教育の実施」などが提言された。

小川CEOは「問題解決に真摯に取り組む」と表明

「真摯に取り組む」と述べた創業者の小川CEO

委員会は、すき家の経営について、「外食世界一を目指す(ゼンショーホールディングス)小川CEOのもとに、その志の実現に参加したいという強い意志を持った部下が集結し、昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き、生き残ったものが経営幹部になるというビジネスモデルが限界を迎えた」と分析する。

今回の調査結果について、小川CEOは会見で「顧客至上主義で、従業員に過重に負担をかけたことを反省している。今回の提言はすべて誠実に受け止め、可及的速やかに是正すべき点は是正し、そこで働く人たちも満足できるよう目指す」と述べた。

他の経営幹部も問題解決に真剣に取り組む意向であることを繰り返し表明。委員会は、経営幹部が今後強い決意と危機意識をもって、貴重な「人財」を最大限に生かす経営を実現していくことを期待していると会見を締めくくった。