ゼンショー及びゼンショーホールディングスは7月31日、「すき家の労働環境改善に関する第三者委員会」(久保利英明委員長)より、調査報告書を受領した。同日第三者委員会の記者会見、及びゼンショーホールディングス幹部らが出席した記者会見が行われた。
同グループが運営する「すき家」は、2014年2月から4月にかけて、人手不足による従業員の負担増が深刻化。123店舗で一時休業や時間帯休業の措置を取らざるを得なくなった。こうした事態を重く受け止め、4月28日付で労働環境改善のための第三者委員会を設置。7月31日には、同委員会による調査報告書が提出された。
同日開かれた会見には、委員長で弁護士の久保利英明氏、委員で弁護士の國廣正氏、経営倫理実践研究センター 主任研究員の村松邦子氏が出席し、調査報告及び提言を発表した。
厳しい労働状況が明らかに
委員会が指摘する、すき家の労働環境に関する実態及び法令違反の状況は8項目。
第1の実態は「過重労働」。委員会の調べでは、店舗勤務経験のある社員のほとんどが「店舗での24時間連続勤務」を経験していることが明らかになっている。また、アルバイトやパートスタッフ(以後、クルーと表記)も同様で、中には月間労働時間が400~500に上るものもいたという。
第2に指摘されたのは「サービス残業」。アンケートの結果、社員の約7割、クルーの約8割がサービス残業をすると回答。また、サービス残業の理由について、クルーの約5割が「実際の労働時間通りの申告をしづらい雰囲気がある」と回答している。
第3は「社員のプライベートの喪失」。すき家は24時間365日営業をしているため、現場に近い社員は勤務時間外であろうと休日であろうとクルーからの電話連絡に対応しなくてはならない。社員からは「電話が一日中かかってきてプライベートがない」「24時間営業で深夜にも電話があることが精神的につらい」という声が寄せられている。
第4は「1人勤務体制(ワンオペ)」。すき家では、売り上げが小さいと見込まれる時間帯や人手不足の場合は必然的に1人勤務体制となる。その結果、顧客サービスの低下や従業員の負担増、強盗事件などの防犯上の問題が発生している。ゼンショーホールディングスは2011年10月に深夜の時間帯の1人勤務体制を順次解消する」と発表したものの、いまだに解消されていない。
第5は「休憩時間の非付与/恣意的運用」。クルーの約7割、社員の約6割が「勤務時間が6時間以上でも、45分以上の休憩は取れない」と回答している。また、「特定の時間帯の売り上げが低いときに、実際には休憩できていなくても、休憩したということにされる」という声もあげられた。
第6は「限度を超えた休日労働」。社員の約5割、クルーの約4割が「休日が少なすぎる者がいる」と回答。また、社員の退職理由には「休みがない、3カ月に1回あれば良い方」「人手不足で労働時間が長く休みがない」等の声がある。
第7は「年少者の深夜労働」。労働基準法には「満18歳未満のものは午後10時以降から午前5時までの時間に於いて使用してはならない」という規定がある。しかしながら、高校生クルーの保護者から午後10時以降勤務させていることについて苦情が寄せられている。
第8は「外国人留学生の就業時間を超える労働」。外国人留学生については、労働時間を週28時間以内に収めなくてはならないという原則がある。上記ルールを遵守させていると述べる者がいる一方で、ルールを認識していない者もいたことから、原則に違反した外国人クルーが存在する可能性は否定できない。
委員会は、このような実態を明らかにした上で、2014年3月の多数店舗一時閉鎖は、これまでの過重労働の体積による矛盾を一気に噴出させるトリガーとなったにすぎないと述べる。その上で、このような過重労働が、社員やクルーを過労やうつ病に追い込み、生命・身体・精神的健康に深刻な影響を及ぼしていると批判した。