――今回、サウンドがさらにメタルチューンになってきましたね

喜多村「喜多村英梨個人のアーティスト人生計画表の中ではメタルアーティストになるというのがもともとあって、なるというより、なりたいという願望なんですけど、それはその時々の役者としての立ち位置も関係して、実際にはなれるかどうかわからない、むしろ無理なんじゃないかと思いながらこれまでやってきたのですが、『RE;STORY』のときに、ちょっと行けるかな? って思えるようになってきたんですよ。そうなってくるとサウンドチームも、ちゃんと喜多村英梨個人の曲として、歌いこなせていると評価してくれるようになってきて、そのハマり方を良いところで出していきたいよねって思ってもらえるようになってきたんだと思います。萌え系よりもどっしりとした世界観のほうが合うんじゃないかって思ってもらえたのかもしれませんし」

――萌え系は萌え系でハマりますよね?

喜多村「どちらも好きなので、ちゃんとやり切ります。やはり自分の名前がクレジットされるということは、一生背負っていかなければいけないということですからね。自分の歴史ですから。まぎれもなく何かの形で残るんですよ。たとえ誰かにディスられたとしても、自分が何か間違ったことをやったという意識ではやらないほうがいいと思っています。心配性なんですよ。だから、どんな世界観であろうと、どっぷりとつかりますし、どっぷりとやりきります。多少背伸びが必要でも、中途半端にしないで、振り切っていきたいと思っています」

――今回はついに「荒ぶるデスボイス」とまで煽られていますが

喜多村「私自身は、"ヒステリックボイス"とか"バーサクモード"と言ってるんですけどね(笑)。デスボの本場のプロの人に怒られちゃいますよ。ただ、声優・喜多村英梨として、これまでに戦闘シーンありきの作品だったり、格闘ゲームなどで荒々しい声を出したりしてきた中で、こういうギミックも自分にはあるんだという提示はしておきたかった。アーティストとしてデスボで歌ったというのではなく、声優の喜多村英梨が発声法として持っている技術をボーカルに落とし込んだだけで、デスボに聴こえました? ありがとうございます、くらいの意識で作ったものなので、こんなのデスボじゃないといわれたら仕方ないですし、スクリーモだと言われたら、スクリーモだよなって思うし……音楽の分け方って難しいですよね(笑)」

――喜多村英梨的にはデスボイスでもOKなのでしょうか?

喜多村「"ヒステリックボイス"でお願いします(笑)。新しい造語を作っていきたいと思っているんですよ。声優アーティストというカテゴリでコンテンツを作っているうえで、自分発信のものが生まれてくるといいなと思っているので、デスボやりました! とは自分からは絶対に言いません……と思いながら結局はデスボをやってます(笑)」

――「掌 -show-」がエンディングになっている『シドニアの騎士』では、けっこう大変そうな役どころを演じてますよね

喜多村「そう思うでしょ? 皆さん、そうおっしゃってくださるんですけど、やりこなしていて頑張っているという評価を得られるのであれば、逆にこの役をもらえてラッキーだったと思います。『シドニアの騎士』はプレスコでの収録だったので、ざっくりとした映像はあったものの、ブレスの位置とかテンポ感は絵にとらわれずにできたんですよ。なので、自分と自分の掛け合いのシーンでも、ちゃんと自分が思い描く会話劇のテンポでできたので、意外と自分で思ったとおりの芝居ができて、すごく清々しく、役者として没頭できる役だったと思います」

――役者冥利につきるという感じでしょうか?

喜多村「そうですね。兼役も楽しいですが、同じキャラデザで違う芝居のニュアンスを微妙に出すことって滅多にないことなので、非常に楽しかったです。気持ち悪いとか、すごいとか、怖いとか、観ている人にいろいろな感情を持ってもらえる要の人物だと思うので、すごい大役をいただけて嬉しいなと思っています」