――続いてカップリングの「Greedy;(cry)」についてお伺いしますが、こちらはどういったテーマの曲になっていますか?

喜多村「『シドニアの騎士』からインスパイアされたことも盛り込みつつ、声優・喜多村英梨であるギミックをふんだんに使って、さらに濃厚なものをやりたい、という漠然とした気持ちがスタートですね。決してストレートではないですけど、歌詞はシンプルで短くて、同じようなことしか言っていない、本当に情景とキーワードを訥々と語っていくようなものなので、そこにいろいろなパターンの声質を重ねて、厚みを出しつつも、サウンドはプログレッシブメタルに寄らせる。背景が変われば、同じ歌詞でも聴こえ方が違ってくるという手法をやってみたいと思っていたのに加えて、『シドニアの騎士』はすごく展開が速くて、戦闘だけじゃなくて、かなり落とし込んだダークな会話劇のシーンがあったり、セリフがなくて得体の知れない映像美だけで見せるようなシーンもある。その緩急の差をさらに超えたような展開が印象的だったので、この曲の展開もただ一番、二番と並ぶのではなく、すごく変則的な感じにさせていただきました」

――「掌 -show-」とセットになる曲というイメージがあります

喜多村「そうですね。一枚のシングルとしての世界観にちゃんと合った上で、飛ばしてほしくないですし、捨て曲も作りたくない。『シドニアの騎士』で『掌 -show-』を聴いて、入ってきてくれた人もちゃんと聴けるトラックにしたいという思いで大事に作ってますね」

――「掌 -show-」はやはりタイアップ曲なのでメジャー指向になると思いますが、その分、カップリングは、よりディープな方向に突き詰めている感じですね

喜多村「決して『掌 -show-』が浅瀬にいるわけではないですが、『Greedy;(cry)』はより深海に向かっているかもしれません。これまで7枚のシングルを出させてもらったわけですが、その中でいうと『Birth』のカップリングになる『Lifetime Trader』は、ずっと聴いてくれていた人から、どうしちゃったの? って思われることもあるんだろうなというつもりでやっていたんですけど、今回も同じような気持ちですね。表題曲は、TVアニメを観ていれば、自然と耳にする機会があるじゃないですか。でもカップリングは、ライブだったりでしか、なかなか聴く機会がない。そんな中でもシングルを聴いてくれた人が一人でも好きですと言ってくれればいいかな、一人ぐらいはいるだろう(笑)という気持ちで作っています」

――「掌 -show-」のミュージックビデオについてお伺いしたいのですが、今回は戦ってますね

喜多村「ファイターがガチムチで(笑)」

――喜多村さん自身が何もしないのは珍しい気もします

喜多村「今回の楽曲は尖っているので、クールに落とし込みたいという意識があり、あいまいなお芝居シーンを自分でやりたくなかったというのもあります。『シドニアの騎士』で"仄シリーズ"を演じているというところで、自分が複数人出てくるシーンがカットインするところなどもありますが、あくまでも断片的なイメージのものしか自分ではやらないと決めていて、ちゃんとアーティスティックなところを見せたいという思いで今回は作っています。その中で、TVアニメ、原作、曲、そしてこの映像、すべてを踏襲したら何か繋がった……そういう風に感じてもらいたいなと思っています。そういう意味を込めて、決着がないカタチで抗っている人たちの戦う姿を収めたかった。『シドニアの騎士』のセットを組んでもらえるかといえば、そんなことは叶わないんですけど(笑)、でもやはり、『シドニアの騎士』の世界、(原作者の)弐瓶先生が描いている戦う姿だったり、アニメでの戦っている表情、そういう中で、自分ではなく、いろいろな人が戦っているんだよというところでの第三者を置きたかったのがあの映像で、決してガチムチビデオを作りたかったわけではないです(笑)。ただ、逆にそのくらいハネてくれればいいなとは思っていました」

――そして、9月28日にはライブの開催も決定しています

喜多村「だいぶ先の話になりますけどね(笑)。だからあらかじめ、大々的に言っておこうと思っているんですけど、9月のライブは、2ndアルバムを引っさげてのライブではありません。ツアーというわけでもないですし、アルバムが出てから『掌 -show-』が出たりして、だいぶ間が空いてしまうこともあるので、このライブでは、喜多村英梨が夢見ていたメタルの土俵、重たいサウンド、どっしりと作りこんだ世界観を見せたいと思っています。自分がやりたかったことが、7枚目にしてだいぶ実現してきて、チーム自体も具現化した未来のようなものが見えてきた感じがするんですよ。もちろん、今まで喜多村がやってきた楽曲からも引っ張り出しますし、アルバムを出してから初のライブなので、アルバムの収録曲も多めになると思いますが、アルバムメインではなく、喜多村のサウンド、喜多村のライブパフォーマンスの集大成というよりは、2014年9月における喜多村のすべてをお見せするライブになると思います」

――それでは最後にファンへのメッセージをお願いします

喜多村「TVアニメ『シドニアの騎士』のエンディング主題歌ということもあり、すでに皆様にはその一部を垣間見ていただけているかと思いますが、それはタイアップシンガーとして誇りに思いますし、ラッキーなことだと思っています。7枚目のシングルということで、新たな試みもしてみたいと思い、TVサイズでの『掌 -show-』と、シングルエディットのフル尺で聴いてもらう『掌 -show-』の世界は、それぞれで楽しめる、だいぶスルメな楽曲になっていると思います。なので、テレビで聴いた方もぜひぜひCDシングルを手に取っていただき、喜多村の世界観、そして歌詞カードにも余すところなく浸っていただけたらうれしいです。なお、『掌 -show-』のシングルには「喜多村英梨 Live 2014 先行抽選シリアルナンバー」が封入されていたりもしますので、9月28日もヒマだったらぜひ遊びに来てね(笑)。よろしくお願いします」

――ありがとうございました

こちらは通常盤のジャケットイメージ

TVアニメ『シドニアの騎士』のエンディング主題歌で喜多村英梨の7thシングルとなる「掌 -show-」は2014年5月14日の発売で、初回限定盤と通常盤の2ラインナップ。価格は、「掌 -show-」のMusic Clipを収録したDVD同梱の初回限定盤が1,800円(税別)で、通常盤は1,143円(税別)。いずれも「喜多村英梨 Live 2014 先行抽選シリアルナンバー」(受付期間:5月14日(水)12時00分~6月9日(月)23時59分)が封入されているのであわせてチェックしておきたい。