ペプシ新商品では過去最速ペースで300万ケースを突破した「ペプシネックス ゼロ」(500ml: 税別140円)

健康志向の高まりからか、近年は飲料業界におけるゼロカロリー市場が活発だ。「コカ・コーラ ゼロ」を始め、「三ツ矢サイダー オールゼロ」「ウイダーinゼリー カロリーゼロ」など、飲料メーカーが数多くの商品を発売している。

そんな中、サントリー食品インターナショナルは4月22日、3月4日にリニューアル発売した「ペプシネックス ゼロ」(500ml: 税別140円などサイズは5種類)の販売数量が、約1カ月半で300万ケースを突破したと発表した。同社がペプシ商品を1998年に発売して以来、ペプシ新商品では過去最速ペースとのこと。その理由は何なのか、「マーケティングのプロ」に分析してもらった。

植物由来甘味料「ステビア」をプラス

ゼロカロリー飲料である「ペプシネックス ゼロ」の大きなリニューアルポイントは、米国ニューヨークに本社を置くペプシコ社の知見を生かし、植物由来の甘味料「ステビア」を新たに使用したことが挙げられる。従来の甘味料との「最もおいしい」配合バランスを追求した結果、厚みのある味わいと後味の自然なキレを実現させたという。この味わいとキレが人気につながっているようだ。

「覚悟」を感じた比較広告

リニューアル発売と時をほぼ同じくして展開した広告宣伝のプロモーションも話題を呼んだ。3月1日から放映を始めた同社のテレビコマーシャル「ペプシネックス ゼロ『美味しさ』篇」は、競合社のカロリーゼロのコーラ飲料と「ペプシネックス ゼロ」を500名が飲み比べたところ、61%が「ペプシネックス ゼロ」を支持したことを伝える内容だ。

新しくなった味わいもさることながら、競合社を登場させて文字通り「真っ向勝負」した形のプロモーションを、「マーケティングのプロ」は評価している。アップルコンピュータのコミュニケーションマネージャーや、ミクシィのエグゼクティブプロデューサーなどを歴任した東京片岡英彦事務所の片岡英彦代表取締役は、こう語る。

東京片岡英彦事務所の片岡英彦代表取締役

「私は(競合社の商品と比較して自社商品などの優位性をアピールする)『比較広告』を実施する際には、広告を仕掛ける側が相当の『覚悟』をしないと実施できないことを知っています。だから、この『ペプシネックス ゼロ』のCMを見て、別の意味で驚きました。実際に消費者が飲み比べたときに明らかに味が競合社に劣っていれば、全くの逆効果になるからです。よっぽどの『勝算』がないと、比較広告はリスクが高くて仕掛けようとは思わないです」。

片岡代表取締役はこの比較広告によるプロモーション見た当時、そのインパクトは認めつつも、ある一つの懸念が頭をよぎったという。「次にどんな手を打ってくるだろうか」。比較広告という手法はインパクト勝負になってしまいがちのため、「次なる一手」が非常に重要となってくるからだ。

100万回以上の動画再生回数を記録したCM

そこで同社が投入してきたのが、3月8日からオンエアされた俳優の小栗旬さんを起用したCM「桃太郎 Episode.ZERO」篇だ。小栗さん演じる桃太郎が犬、猿、キジに扮(ふん)した3人の仲間と共に、村人を苦しめる鬼が待つ鬼ヶ島へと向かう―。おとぎ話の「桃太郎」を、まるで映画のような壮大なスケール観で描いたコマーシャルだ。

片岡代表取締役は、CM終盤に流れる「自分より強いヤツを倒せ。」のキャッチコピーを目にしたとき、「ものすごい次の一手を用意してきたな」と驚いたと話す。「コンセプト、クリエイティブ、キャッチコピーのすべてに秀でている。このCMの好感度は間違いなく高いだろうと感じた」。

片岡代表取締役の予想通り、このCMは3月度の「CMデータバンク」でCM商品好感度1位、CM好感度総合2位に輝いている。動画サイト「You Tube」内に設けられたサントリー公式チャンネルの<ペプシネックス ゼロ『桃太郎「Episode. ZERO」』篇 90秒>は、既に100万回以上の再生回数を記録。消費者への商品訴求力はかなり高いといえそうだ。

「味覚」「視覚」「聴覚」への訴求が奏功

「ペプシネックス ゼロ」の販売数量が、ペプシ新商品では過去最速ペースで300万ケースを突破できた理由。それは味のリニューアルで消費者の「味覚」に、斬新なCMで「視覚」と「聴覚」にそれぞれ訴えかけ、それが奏功したからと言えそうだ。ただ、片岡代表取締役は、現在の好調な売り上げを維持すべく、今より一歩踏み込んだ「競合社にはないおいしさ」を手に入れるためのさらなるチャレンジが必要となると分析している。先に挙げたCMの最後には、どちらも「FOREVER CHALLENGE」の文字が浮かぶ。よりよい「ペプシ」をうみだすため、同社の挑戦は永遠に終わることがないのだろう。