――フィギュア化して欲しいシーンもたくさんありますよね。
ありますね! ラムがパスポートを書き替えるために、あたるになにも言わずに、マイクを縫い込んだ手作りのラムちゃん人形を残して宇宙船に一時帰還しちゃうお話(※第67話「君去りし後」)。登校中のやつれてげっそりしたあたるに、戻ってきたラムが「ダーリン」て声をかけるのだけど、あたるが振り向くと、ラムが板塀の上で足を組んで「コップのフチ子さん」みたいにちょこんと坐ってるの。そのポーズがなんともかわいいのよ。
――どちらも印象的な回ですね。ちなみに今回のラムちゃんのフィギュアに平野さんが声をあてられるなら、どんな台詞になるでしょう?
やっぱり、目線の先にダーリンがいると思うから「いまから、いくっちゃ」じゃない?(笑) ラムがあたるちゃんを少し誘っているような感じもするし。留美子先生はどんな風に感じていらっしゃるのかしら?(笑)
――『うる星やつら』には、個性的なキャラクターが多数登場しますが、ラムちゃん以外に平野さんがフィギュア化して欲しいというキャラクターはいらっしゃいますか?
こたつ猫かな? あと、フグの美々子さんなんて知らないかな? 人間以外のダッピャ星人とか「宇宙は大ヘンだ!」みたいに人以外のいろんなキャラクターが出たら面白そう。人気投票とかしたら面白いかもしれないですね。
――平野さんは、ラムちゃんで声優としてデビューされましたが、あたる役の古川登志夫さん、面堂終太郎役の神谷明さんなど、錚々たる役者に囲まれての収録はいかがでしたか?
とにかく濃密でした。毎回テストでも本番でも、常に心地よい緊張感を持続しながら臨むことができていたのは、皆さんのおかげです。とりわけ、毎回制作スタッフさんと声優陣が、競い合っていたことが印象に残っています。当時のアフレコ現場は、台本は事前にもらっていますけど、いまみたいにDVDやビデオで予習なんてできませんから。本番当日にフィルムを初めて見て「こんな絵になっているのか」って発見があり、それを演技に落としこんでいくんですね。
なにしろベテランの声優さん揃いですので、みなさんその絵をさらに上回るような表現を、台詞に吹き込んでいくわけです。しかもベテランさんたちは、そんな台詞のすき間に、予想外のアドリブまでも巧みに入れ込んでいく。すると制作スタッフさんたちも、こうきたか! じゃあ次はこうしようってどんどん高いところを目指して切磋琢磨しあっていく――声の職人のひとりとしても、やりがいにあふれる楽しくて素晴らしい現場だったと思います。
――声優さんとスタッフの相乗効果があったんですね。逆に苦労されたことは?
苦労というのはそこまで感じたことはなかったかも。すごく恵まれていたと思います。私は子役をやっていたので、その時にご一緒した永井一郎さんや納谷六朗さんに「おい、文、なんでここにいるんだ」ってかわいがっていただいて(笑)。おかげでのびのび演らせていただけたのだと、いまでも心から感謝しています。